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ヤリチン義弟を愛しすぎる変態兄…志村貴子『起きて最初にすることは』

2015/06/22 11:18

ゲイ義兄→ノンケ義弟…これまでのBLと何が違う?

数多くのBLジャンルのなかでも、「義兄弟」という言葉に萌えを感じる皆さんは決して少なくないはず。
そんな義兄弟BL界に、大きな一石が投じられました! 今年5月に発売された志村貴子先生のコミックス『起きて最初にすることは』です。

2013年に発売されたリブレ出版のアンソロジー『不憫BL』に読切り作品として掲載され話題を呼び、その後も『よみきりCitron』、『MAGAZINE BE×BOY』などで続編を発表。この度1冊のコミックスにまとまり刊行されたところ、ちるちるでもランキング上位に食い込む高評価を獲得するに至りました。

志村先生の長いキャリアの中で、BL雑誌に掲載された作品が他のNL・GL作品とともに短編集に収録されたことはありましたが、BLコミックスとして単独で刊行されるのは、なんと今回が初めて

たしかに義兄弟BLは人気が高いジャンル……今までにも多くの血の繋がらない兄弟カップルが、私達に萌えをもたらしてきてくれました。
では、志村先生の初BLコミックスである今作が、その注目ジャンルのなかでも特に多くの支持を集める理由はどんなところにあるのでしょうか? その魅力を記者なりに探ってみたいと思います!

どうして“不憫”なのか?
今作は、中学3年生の公崇(きみたか)と中学1年生の夏央(なつお)が、親の再婚のために義兄弟になったことから始まる物語。仲の良さから同じ高校にも進学するなど、年頃の2人は兄弟としての蜜月を過ごしていましたが、それはある日、ゲイである公崇が、自宅で男のナニを咥えている現場を夏央に目撃されてしまったことであっけなく終幕を迎えます。

義兄がゲイであることを夏央が学校で言いふらしたことから、公崇はいじめを受け不登校に。ついには退学に追い込まれニートの道を進むことになってしまいました。

この作品が“不憫”なのは、公崇のそんな境遇――ではなく、彼が夏央を恨むどころか初めて会った日から深く愛し続けているということ。

たとえ本人に気持ち悪いと罵倒されても、夏央が自分の想いを知っていながら毎回違う女の子を家に連れ込むようなヤリチンでも、公崇にとっては可愛くて仕方のない愛おしい弟。人として嫌われることより、兄としてすら夏央の傍にいられなくなることの方が何よりの恐怖なのです。

義兄は変態、義弟は非情
作品の楽しみは何といっても、義弟が好きすぎて暴走する公崇の変態思考と、義兄の性癖を嫌悪し足蹴にする夏央の情け容赦ない仕打ち。最初から最後まで、こんなにも噛み合わないままボーイズがラブする作品はあまりお目にかかれません。

そう、BLのセオリーに沿えばこの夏央はいわゆるツンデレで、「内心はお兄ちゃん大好きなんでしょ!?」と期待したくなるのが素直な心情というもの!

しかし今作のすごいところは、夏央が兄を慕っていたのはゲイだと分かる以前、とうの昔の話であり、現在は強く軽蔑する対象であるという通常のBLではなかなか向かいづらい展開にあります。

かつては確かに公崇を敬愛していた夏央。自慢の兄でいてほしかったのに、蔑まざるを得なくなるようなことをした公崇自身に、夏央は苛立ちを隠すことができない――彼もまた、別の形で屈折した兄弟愛を抱いたままの不憫な少年なのです。

思春期漫画の名手がBLを描くと
この『起きて最初にすることは』は、思春期という多感な時代に、「尊敬する義兄がゲイだと知った少年」「義弟を愛しすぎたゲイの少年」それぞれの心の機微を描き出すことに重きが置かれています。
そんな登場人物の深みが、メインカップルの薄すぎるラブ度を補って余りある萌えストーリーを生んだのではないでしょうか。

志村貴子先生と言えば、アニメ化もされた百合漫画『青い花』、性別の悩みを抱える男女に焦点を当てた『放浪息子』など、“若者の性”を扱った作品を多数発表している、いわば思春期漫画の名手

まだるっこしい表現になってしまいますが、今作はストレートなボーイズラブというより、志村先生がBLという枠で描いた思春期劇の一つであると、記者には感じられました。

ハッピーエンド? 解釈は十人十色
独特の空気感で行間を読ませる志村作品は、キャラクターそれぞれの表情・言動を様々に解釈できることが魅力の一つです。ラストに向け多少の雪解けを予感させた2人を、未来に含みのあるハッピーエンドととるか、どこまでも兄弟として歩み寄るBL的バッドエンドととるか、それは読み手の解釈に委ねられています。

皆さんの目にはあのシーン、あのキャラの言動は、どんな風に映りましたか?
既読の方も、これから読むという方も、ぜひ皆さんなりの義兄弟の未来を見つけてあげてください。

記者:神谷浩未

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コメント1

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匿名1番さん(1/1)

記者の神谷浩未さん、丁寧な解説ありがとうございますっ!分りやすかったです。
私的にはレビューもいいけど、こっちの方が《腑に落ちた》かんじです。
「志村先生がBLという枠で描いた思春期劇の一つ」という文言でモヤモヤが晴れました。
BL作品だけど疑問が多いし、描写も物足りない。と思い、今まで敬遠してました。
でも、記事のおかげで苦手意識が薄れそうです。また、新しい視点を発見できそうな予感も。^^
読んですぐ、本をしまい込んでましたが、もう1度再読してみたいなぁ~と思いました。

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