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切ないものが好きなのと、くもはる先生目当てで購入。
どのお話も胸をぎゅっと掴まれるような切ない物語ばかりで私好みでした。
ラストは切ないながらも心があったまるようなお話が多いです。
萌えたのはやっぱり、くもはる先生。猫っ毛のスピンオフだと知らずに読んでました。一緒に住んでイチャイチャしてるの、可愛すぎます。
御景先生のお話が凄く好きでした。れいの健気さとか孤独の身とか、こういう設定弱いです。バットエンドかと思いきや、幸せになって嬉しい。
ほんと健気で愛おしいと思えるような作品ばかりでした。
河井英槻さんの「2丁目の小さな魚」。ひとつまえのアンソロ「泣けるBL]に載ってた「君だけに愛を。」の続編です。「泣ける」で泣けたのがこの作品だけだったので、2本併せてここでレビューします。
高校卒業後、6年ぶりに再会した地元の後輩は「女」になっていたー
化粧品会社に勤める春信は、ある日上司につれて行かれた2丁目のニューハーフパブで、音信不通だった後輩憲二と偶然出会う。昔からイケメンで女の子にももててたけど、ガタイがよくてやんちゃだった彼は、なんと「茜ちゃん」へと変貌を遂げていた。
春信にとても懐いていた彼が黙って姿を消したのは、春信と同棲中の彼女がいよいよゴールインしそうな気配を察したから。夜の街で、女の姿で働いていたのは、春信に愛されてみたかったから。でもそれはあくまで憲二のはかない夢にすぎなくて、現実に会いにゆくつもりなんてなかった。いくら女装しても自分は本物の女にはなれないから・・・
先日、某映画のプロモーションで、岡田将生クンの花嫁姿を見ました。顔立ちは甘く整っているし、背は高いけどさほどゴツくはない(180センチ、65キロだそう)。普段のスーツ姿とかだとむしろ華奢にみえるくらいなのに、その彼にしてやっぱりウエディングドレス姿はあくまで「男の女装」にしか見えませんでした。顎とか、肩のラインとか、やっぱ骨格から違うんですね。本作の憲二も、自分の女装に限界のあることは自分が一番よくわかっている。ほの暗いお店の明かりの下で座っているときはなんとかごまかせても、太陽の下では到底無理だ。
春信の歴代の彼女はみなちっちゃくて、かわいくて、それなりに胸もあって、いかにも女の子らしい女の子だった。それが先輩の好み。並ぶと頭ひとつデカくて、しかも男の自分にはどうやってもかなわない。
せっかく再会したのに、引け目ばかりで素直に喜べない憲二。でも春信先輩はその後もせっせと通ってくる。誕生日のお祝いだと言って、デートに誘ってもくれる。出勤前のメイクを春信の手で施される憲二。近過ぎる吐息とその繊細な指遣いにドキドキが止まらない。最後の仕上げに欲しがっていた花の髪飾りをそっと耳元に挿してくれる先輩。う~ん、私は根が貧乏性なせいか、セレブな攻めが金に糸目をつけず機銃掃射のごとく投下してくるゴージャスなプレゼントの数々よりも、こういうピンポイントで本当に受けの欲しいものを、しかも絶妙のタイミングでさりげなく贈ってくれる攻めに弱い。手先が器用でいろいろと受けのお世話をしてあげちゃうのもポイント高い。
その優しさについ、墓場まで持ってくつもりだった憲二の本心が口を衝いて出る。「もう先輩後輩でもいられなくなってしまう・・・」泣きじゃくる憲二をちゃんと受け止め、受け入れてくれる先輩。なんて懐深いオトコマエなんでしょう。
一応お付き合いらしきものを始めてからも、ちょっと油断するとすぐぐるぐる迷走しだす憲二に対し、春信先輩は全く揺るがない。元ノンケだったのが信じられないほど、きわめてナチュラルに男の身体のままの憲二を求め、愛してくれます。そう、ここまで書いてやっと気がつきました。憲二、ちっとも不憫じゃないじゃん!この果報者!
桜日梯子さま目当てで購入。
不憫っていうより、やりきれない。全体的に不憫さは少なくて、続きを読みたい!ってものが多かったです。
「雪色待ちぼうけ」
れいが可愛い。これは不憫じゃない、ハピエンだ。
「2丁目の小さな魚」
男の体のままであること、それをみてしまって失望されることが怖い賢二。春信先輩男前!
「校舎裏の夏」
お目当てです。先輩の正体が分かった時は衝撃でしたが、ちゃんと親友に気持ちが伝わっていたと信じたい。
「せなか。」
一番切なかった。切ないなー、ノンケへの恋心。尚、いい子や…。
「愛し逢えない恋ならば」
一番好き。兄弟だっだのかー。呼び方で幼馴染くらいと踏んでいたのだが、兄弟かー。大好きです。「拓海とおれが兄弟だから おれは竜二の恋人なんだもん」ってシーンで涙です。互いに思いあっているのに、兄弟だからダメ。切ない…。
「カワイソウだからこそ愛おしい」
全作品その趣旨は貫かれていました。
ともすると「不憫」っていうと報われないとかBADエンド系の片想いを想像しがちですが、各作家さんがそれぞれの視点で描く物語はどれ一つとして同じでなく、この「不憫」というテーマは前回の「泣ける」よりはより具体的テーマであったと思われます。
◆多分志村貴子さんがかなり注目されているこの本の中でも目玉なのだと思われます。
【起きて最初にすることは】
それぞれに中学3年、1年同士で兄弟になった二人。
ひきこもりになった兄の朝起きて最初にすることは弟の寝顔を見ること。
兄の弟への片想いが切なくもカラっと描かれている。
兄のホモシーンを見てした弟の仕打ちも、兄にとっては弟が悪いのではなく、周囲にあると考える。
あくまでも弟が好きな兄の想いは切ないというよりどんな形であれ弟がいればいいという、兄で居させてほしいと言う、彼の譲歩の形。
弟が兄でいてほしいと願う限り、彼はそうあらざるを得ないし、自分の中で折り合いをつけるよりほかはないのだ。
兄視点ではあるが、結構突き放した第三者目線の話しのような感じでもあり、BLがファンタジーであると真っ向から現実を突きつけてきたような作品でもあるな~とリアルを感じる。
同じ兄弟モノだがこちらの報われない系はBLらしい作り
◆きよみず光【愛し逢えない恋ならば】
高校1年の拓巳は3年の智くんに恋をしている。
下校も一緒に帰るほどの仲の良さ。DVDを見て寝てしまった智くんにこっそりキスをする拓巳。
この作品は、そうした展開をさせておいてどうしてダメなの?という疑問を抱かせトラップを仕掛けながら最後にネタばらしをして意表をつくという変化球で見せている。
友達で切ない片想いを描いたのは
◆津田ユキ【せなか。】
ずっと一緒だった親友に好きな子が出来たと聞かされた時に気がついた親友を好きという気持ち。
親友がはなれていってしまう、不安を感じる主人公がとった手段は親友が童貞であることから自分で練習をしないかと持ちかける事。
最初で最後の不本意な触れ合いだが親友は主人公の気持ちに気が付いただろうか?
思わず死ネタなのか!?と意表をついたハッピーエンドを用意したのは
◆御景椿【雪色待ちぼうけ】
たまたま往診を電車でした時駅でヤクザに捨てられたボロボロの少年を放っておけずに保護してしまった医者の主人公。
平穏に何事もなく過ごしたい主人公は、少年と関わりあいたくなくてお礼をしたいという少年を置いて出て行ってしまうのだが、少年は主人公と逢った駅で来る日も来る日も待っていて・・・
戸籍もない教育も受けてないという人から見れば不憫な境遇を少年が理解していないのがより憐れでした。
人でない人外モノもありました。
◆桜日梯子【校舎裏の夏】
生まれて初めての告白をして振られた日校舎裏で出会った上級生。
主人公は上級生は告白しただけ偉かったじゃんと褒められて、それから校舎裏に通うようになったのだが、ある日その上級生の正体を知る。
それは主人公が二度目の失恋をした日となった…
話題で注目の作家さんだが、とてもよかったデス!
◆懐十歩【村を出たからくり】
小さな村の山奥に住む人の身体をした二体のからくり。彼等は村人達に嫌われていました。
『泣いた赤鬼』をモチーフにしています。
◆雨季野【パセリとミニトマト】
これはまさに不憫!!
もう言うもがなですね~♪「おいしくなって一緒にたべてもらおう」二人の願いも虚しくいつもいつも取り残されるパセリ・・・身に覚え・・・ありますよね(汗)
◆鈴木ツタ【やさしいだけの】
血液の病気で入院している主人公。彼の隣のベッドに寝ている老女には学生服姿の息子だという男子が訪れる。
実は彼の正体は・・・
作者さんの『この世異聞』にとても似た感じの異形モノです。
過去のこだわりものもありました
◆河井英槻【2丁目の小さな魚】
先輩を慕う後輩が、先輩に結婚するつもりの彼女がいると知り突然失踪する。
数年後、後輩との再会は2丁目のニューハーフパブで、彼女と別れた先輩はこの女装している後輩と付き合う仲になる。
女性でない事にこだわり続ける、超ヘタレな後輩が不憫である。が、しかし!先輩は全然そんな事こだわってなかったというオチでよけいに後輩が不備に思えた。
◆糸井のぞ【STAKEOUT】
糸井作品にはノスタルジーがよく合う。昭和設定。
元相棒を殉職で亡くし心に傷を負う刑事と二人張り込みを続ける相棒刑事。
弱さと強さの対比があって、相棒が心の傷を和らげた形のエンドを迎えるのだが、実はこの二人ともに、それぞれ背負う辛さがある。刑事って大変だ(涙)
◆雲田はるこ【Love in motion】
自分でも向いてないと思うのに成り行きで教師になったヘタレな主人公が、学校でも問題視される目立つ生徒に懐かれ襲われ、彼に支配されることに快感を覚えるようになる。
奔放な彼に理想を見つける教師、そしてかれは生徒に黙って学校を退職して・・・
この生徒、ハルというのだが、恵ちゃんの友達?
不憫って、この場合は自分自身の生き方の事のような感じがした。
どの作品も粒揃いでかなりよかった。
きっとこの中から通常誌で続編掲載になる作品も出てくるかもしれないがその時はもう「不憫」じゃないねw
不憫BLって括り方、私としてはなかなか納得できて結構よかったです。
「カワイソウ だからこそ愛おしい。」
「一途さに心打たれる恋愛作品集。」
不憫はカワイソウで、でもカワイソウがそのまま不幸とは限らない。
一途に想っていてもままならない。
そんな、もののあわれをどう料理したのか。
泣けるBLって言われるよりは、方向性がわかりやすくて、これは、作者さん達としても、不憫の解釈の方向はそれぞれいろいろだけど、表現しやすかったんじゃないかな。