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ここがヘンだよボーイズラブ


BL作中人物の苗字に関する調査~総論~
評者:ぎがさん
天使(えんじぇる)ちゃんや覇和明(ぱわあ)くん。
難読子供ネームが幅をきかせる世の中ですね。
しかしBLにも絶対にありえない苗字を良く見かけますね。もしかしたら20年後にはDQN苗字と呼ばれているなんてことも(笑)。
今回は2回にわたってBLに登場するキャラクターの苗字について徹底研究をしてみようと思います。

【はじめに】
大事なことはさておいて、どうでもいいことに全力で取り組むタチである。
少し前の話になるが、2009年6月25日に「答えて姐さん!!」でBL登場人物の苗字についてのスレッドが立った。
コメントは2つしかつかないまま6月30日以降進んでいないが、私自身コメントはしなかったものの、この質問内容「BLで一番多い苗字ってなんだろうか」に非常に興味を持ち、雰囲気だけでもどうにか調べられないものだろうかと考えた。

【調査対象】
私「ぎが」が2009年10月12日現在までに所有する、BLレーベルから単行本として発行された小説・コミックに収録された作品またはこれらを原作としたCD作品中で受けまたは攻めと認められる人物(メイン・サブは問わない)。
ただし作品の長・短編は問わず、雑誌・アンソロジー掲載作で単行本未収録のものは含まないこととした。
現在の日本の苗字分布との比較をするため、作品は明治時代以降の日本またはそのパラレルワールドを舞台とするものに限定した。

【調査方法】
同一カップルを長く描くシリーズものでは、受け・攻めとも1回のみカウントした。
また、血縁・親戚関係にある同一姓は1回のみカウントした(例えば「清澗寺」などという明らかに珍しい苗字が上位になるのを防ぐため)。
以上のルールで整理した後、WEBサイト『日本の苗字7000傑』を参考に、それぞれの苗字が何位に相当するかを調査のうえ、一般の苗字分布との比較を行った。
なお、2群間の有意検定には「χ2検定」を用いた。

【結果】
調査対象となったキャラクター数は、小説176作品・コミック780作品に登場する1700件、苗字は1233種であった。
以後、「」内に苗字を、()内にウェブサイト『日本の苗字7000傑』による日本国民における頻度順を記載する。ただし7001位以下の苗字については、詳細順位が不明のものもある。

1)最頻苗字は「佐藤」(1位)「高橋」(3位)の9件、次いで「小林」(9位)の8件、「渋谷(澁谷)」(218位)の7件であった。なお「渋谷」の読みは「しぶや」が5件「しぶたに」が2件であった。
2) 6件の苗字は「山田」(13位)「坂本」(38位)「青木」(40位)「神田」(254位)、5件の苗字は「鈴木」(2位)「村上」(36位)「柴田」(62位)「安藤」(71位)「北村」(115位)「古賀」(207位)「八木」(211位)「中沢(中澤)」(216位)「天野」(239位)「佐伯」(309位)「雨宮」(793位)「佐倉」(3673位)であった。
3)4件の苗字は23種、3件の苗字は60種、2件の苗字は179種、1件の苗字は951種であった。なお、上記参考ウェブサイトにおける7001位以下の稀な苗字のうち4件以上カウントされたものはなく、3件の苗字は「加持」(11216位)「久我山」「東堂」(順位不明)、2件は「灰谷」(8107位)「日比谷」(8306位)「高遠」(9738位)「斑目」(9754位)「香椎」(14763位)「綾小路」(38723位)「御木本」(43802位)「朝丘」「江南」「汐見」「東雲」「高科」「那智(那知)」「三峰」「美村」(順位不明)であった。
4)日本の苗字上位100位中、今回調査でカウントされなかったものは、「渡辺」(5位)、「木村」(18位)、「中島」(22位)、「前田」(29位)、「藤井」(41位)、「福田」(43位)、「太田」(44位)、「三浦」(45位)、「岡本」(47位)「横山」(67位)「大野」(74位)「丸山」(76位)「村田」(80位)「増田」(84位)「平野」(87位)「野口」(95位)「新井」(99位)「渡部」(100位)の18種であった。
5)一般の苗字分布との比較では、1~10位が10.61%に対し2.71%、1~100位が34.83%に対し 12.47%、1~1000位が74.03%に対し45.59%、1~7000位が96.27%に対し79.03%といずれもBL作中人物で頻度が低く、いずれの順位についてもχ2検定で有意差を認めた。
6)小説とコミックの比較では、1~10位が小説2.23%に対しコミック2.84%、 1~100位が7.84%に対し13.19%、1~1000位が33.21%に対しコミック45.59%、1~7000位が70.15%に対し 79.66%といずれも小説でコミックより頻度が低く、1~7000位についてはχ2検定で有意差を認めた。
7)ひらがな表記で集計すると、「かじ(梶・加持・鍛冶)」「たちばな(橘・立花・太刀花)」の7件、「いずみ(和泉・泉・井住)」「たかぎ(高木・高城)」の6件、「あさだ(浅田・朝田・麻田)」「くぜ(久世・久瀬)」「くぼた(久保田・窪田)」「くろかわ(黒川・黒河)」「さかき(榊・榊木)」「ふかみ(深見・深水・深海)」の5件などが上位に躍り出た。

【考察】
予想に違わず、小説・コミック作中人物の苗字は一般の分布と比較して稀なものに偏っていた。
一方で、今回検討した作品の多くがコミック短編作品であったことに起因すると思われるが、ありふれた苗字の登場人物も意外に多かった。
短編コミック作品では登場人物にフルネームが与えられていない場合も多いこと、絵でキャラクターの判別がつくことなどから、長編小説作品に比較して姓名の持つ意味合いが低いものと考えられた。
当然作中人物の名前にはキャラクター性など作家の意図が大きく影響すると考えられ、今回の調査対象にはあまり含まれなかった、例えばヤクザモノオンリーで集計してみたりすると、更に稀な苗字に偏るなどまた違った結果が得られる可能性があると思われる。
名づけに関しては作家による差異も認められたことから、一部の作家作品に関しては別項で取り上げることにする。
なお、今回は名前に関しての調査にまでは手が回らなかったが、集計していての印象としては漢字一文字の名前としては「要」が、また漢数字の「一」を含むものが多かったことを付け加えておく。

【まとめ】
調査結果から、実際の頻度にBL作品での頻度の高い“BLらしい”苗字として「渋谷」「神田」「佐倉」「加持」「橘」などが浮かび上がった。
また理由は不明であるが、「渡辺」「渡部」はありふれた苗字であるにもかかわらず使用されていなかった。

紹介者プロフィール
ぎが
本州のやや北の方に、ひとりでひっそりと生息しています。10代の頃に多少かじりはしたものの、商業BLに本格参入したのは約2年前のこと。ごく当たり前にかわいい系・きれい系の受けが好きだったはずが、あれよあれよという間にオヤジ含め幅広く雑食に。自分の適応能力に驚かされます。

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