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うっとりと吸い込まれる

宝井理人さんの素敵な表紙と、タイトルに惹かれて購入しました。

ストーリーとしては、ある港町にひっそりとある中国茶カフェ(どちらかというと喫茶?)を舞台に、以前ある種の事故のように関係を持ったことのあるふたりが出会い、想いが通じ合うまでが丁寧に、ゆっくりと書かれています。
そのときのことが忘れられず、ずっと想いを胸に秘めていた長谷部と、酒に酔っていてそのときのことは覚えておらず、初対面のように接する入谷。
しかし、入谷もだんだんと長谷部に惹かれていって…

他の方が書かれていたように、確かに少し文章が分かりづらく、言い回しも独特かも知れません。
でも、雨や魚、水、水槽、そして馨り。
それらの言葉が作中何度も繰り返されて、どこか幻想的な世界観を与えるこの作品においては、それもありなのでは?と思いました。
どちらかというと、お話にそれほどアップダウンもなく、ふわふわとつかみ所のないような文章が好きな私としては、ものすごくストライクな作品でした。

雨の日に、ゆっくり中国茶とは言わずとも、好きな飲み物をそばに置いて読みたい作品です。
デビュー作と言うことですので、次回作にも期待します。