私のBL論!


尻毛ハザード、それとも尻毛ウィザード?
内田カヲル・尻毛にみるおっさんの純情
評者:桃園あかりさん
胸毛といえば内田カヲル、オッサン受けといえば内田カヲル 彼女はその強烈な個性でBL作家の中で確固としたポジションを得た。
しかしなぜ美しいファンタジーの世界に、隠しておきたいリアルな体を持ち込んで彼女は成功したのか? その謎を2回にわたって検証する。

ボーイズラブを読んでいると、つくづくと不思議な気分に襲われることがある。よく考えてみれば、なんで女のわたしが、男と男の恋物語を読んでいるのか?「内田カヲル 前編」
世の中には、腐男子、腐兄と呼ばれる男のBL読者もいるのを知っているが、BL読者の大部分は女性だろう。
それでは、腐女子、貴腐人、汚超夫人と呼ばれる女性たちは、男同士の物語であるBLをなぜ愛好するのだろうか?
それはBLという形式が、男女の恋愛では達成できない地平をどこかしら拓いているからではないかと思うのである。
例えば、内田カヲルさんのおっさん受け。
内田さんが描くおっさんは、筋肉がムキムキで、ヒゲどころか、胸毛や脛毛も立派に生えていて、なんと尻毛までボーボー、というか、ふさふさしている。
どこからどうみたって、立派な男。なのに、心は乙女で、立派な「受」である。
抱かれているときには感激して、顔を真っ赤にして震えながら、涙まで流しちゃったりする。
はじめは尻毛を書くのを「ダメ出し」されて、担当に止められていたそうだが、内田さんはどうしても描きたかったらしい。
そのうち、修正されたら任せようと思いながら、どんどん尻毛を描いていったら、「ゆっても聞かないくらい描きたいんだなァと思って」と許されたという。
止められても止められても尻毛を描きたいと思う内田さんの心のなかには、彼女なりの必然性があり、尻毛のおっさんが出てくる内田さんのマンガをつぎからつぎへと面白いと思って読む読者にも、必然性がある、と思う。
わたしの場合、おっさんを愛でながらも、乙女するおっさんをみて、安心しているところがある。
「ああ、わたし、ありのままでいいのね…!!」
みたいに。男は女に、多大なる幻想をもっていて、男の自分とは違う女の部分に欲情しているところがある。けれど実際の女の身体は、男と同じように、体毛だって生えているし、汗だってかくし、男の考える「理想の身体」からは程遠いということは、女自身がいちばんよく知っている。「幻想の身体」と「現実の身体」のあいだの落差に、やましい思いや、恥ずかしく思う気持ちを誰でも持っている。
しかし、そんなわたしでも、「乙女していてもいいんだわ!」たとえ「ゴリラみたい(内田さん、ごめん!)な姿かたちをしていたとしても、乙女する資格はあるのよ」と内田さんのマンガは安心させてくれるのである。
尻毛のおっさんはわたしの分身でもあり、そのおっさんを愛してあげるのもわたしの分身。過去にゲイ男性に、「女装したオカマ」と間違われた経験もあるわたしとしては、なんか癒されるぅ…。

紹介者プロフィール
桃園あかり
腐っていることを周囲に隠していないカミングアウト済み貴腐人。しかし流石に、子どもからはBLをどう隠すかが最近の懸念。職業は、意外にまじめなプロフェッサ~。思うより職場のスーツ率が、低くて悲しい。

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