kayama先生インタビュー

本音はクズだって思ってんだろお前だって…
寝て起きて、夜10時からのコンビニバイト。夢をあきらめ、くすんだ毎日をおくる安藤が出会ったのは、コンビニのゴミ箱に並んで座り込んでいた高校生の中田。「家に帰りたくない」と言う彼をアパートに招き入れたら、いつかの傷がじくじくと疼きはじめて……。7月15日発売、kayama先生の初コミックス『未熟な楽園、或いは』。希望をなくした20代後半のフリーターが、将来のある高校生に抱く想いは!? 同じくコンビニ店員の恋や、大学生飲みサークルの先輩×後輩ラブなども同時収録!! それでは「801 AUTHORS 108」第978回、kayama先生どうぞ！

Q. 作品紹介をお願いします！
(1)かつて夢を持っていた男が家出をした高校生を拾ってしまい、1Kのアパートで生活することに、という話。※表題作
(2)付き合っている20代二人の、日常の中の等身大な機微の話。
(3)父親と確執を持つ男が、一本の電話により恋人との間に微妙な空気が流れて……な話。※書き下ろし／(2)と同じ登場人物です
(4)大学の先輩にいいように弄ばれる後輩の話。

の順で以上が収録されています。書き下ろし以外は同人誌と個人的にWEB上に載せていたものです。

Q. メインカップルはどんな攻×受ですか？
寝て起きてバイトに行くだけの生活を送る、ほぼ人と交わらないコンビニ店員20代後半の安藤(攻め)と、都内有名進学校に通うも落ちこぼれである意味箱入り娘な高校生の中田(受け)。
どちらも内側にコンプレックスを抱えています。


Q. 当て馬や重要な脇役は？
当て馬ではありませんが攻めの安藤のバイト先にいるコンビニ店員の主婦です。
安藤の心をちょいちょい引っ掻きます。

Q. 今作のこだわりポイントはどのあたりでしょう？
どの話にも共通していますが、現実と漫画の世界を極力ボーダーレスにして、リアリティのある世界観を構築した方が内容に合っていると思ったので、登場人物の周りにいる名前の無い人物やモブ、また場所の設定には気を遣いました。

Q. 苦労した点、また楽しかった点など聞かせてください！
知識や肌感覚なしに描くことができないので、道すがら近所にある有名進学校の学生さんの会話を何度も何度も盗み聞きしたり、コンビニの描写が多々必要だったのでコンビニに毎日通い店員さんや店内を観察したり、経験者に細かすぎる質問をぶつけたり、こういう場合は…？ という疑問が解決されるまで男性のアレについて調べたり、可能な限りロケハンをしていましたが、「描く」という大義名文を掲げながら、発見することそのものをかなり楽しんでいました。


Q. 今作にまつわる裏話ってありますか？
表題作以外、作中で明言はしていないのですが、どの話の人物も1人を除いては異性愛者の設定です。
ちなみにその1人というのは両性愛者の設定です。



Q. 執筆中の、思い出に残る日常エピソードをご披露願います！
ファミレスで仕事帰りにボロボロになりながら鬼の形相でネームをしていた時、ちょうど私の席と同じ列、ふたつ隣の席に漫画家の方とその担当さんとおぼしき方がネームをひろげながら相当火花が散ったバトルをしていて、そちらの席とこちらの席の間に通された品のいいマダム二人が、大変なことになっている両脇を見、「漫画ってそんなにおもしろいかしら…」とこぼした瞬間に、この現実を忘れないようにしようと心に誓いました…。

Q. 今、何かハマっていることは？
去年ホットプレートを人から頂きまして、それで「とりあえずなんか焼く」のにはまっています。

Q. BL作家になったきっかけを聞かせてください！
それまで二次創作の深い穴にハマってしまいしこしこと漫画を描く日々でしたが、高校を卒業した年にたった一度創作の同人誌を作った過去がありまして、その時に何にも代え難い描くことの楽しさを経験し、ちょうど時間に余裕があった今年のタイミングに創作系の即売会に参加しました。
そこで頒布していた同人誌をたまたま担当さんが読んでくださっていたようで、それでご連絡を頂いたことがきっかけです。
ちなみにその、高校を卒業した年に出した同人誌は1冊も売れなかったんですが、そんなことどうでもいい…とにかく楽しい…とそこに価値を見出せたことが結果として今に繋がっていると思います。

Q. 発売に関して今のお気持ちはいかがでしょう？
とても緊張しています。
発売されるという事実をふと考えてしまうと、必ず体のどこかしらが震えます。

Q. ちるちるユーザーにメッセージをどうぞ！
はじめまして、kayamaと申します。
拙い表現が多々ありますが、大なり小なり大切にしたいことは信念曲げずに注ぎ込みました。
この本が、読んでくださった方にとってのよき出会いになれたら、これ以上無い幸せです。
よろしくお願いいたします…！


担当編集より
kayama先生のデビューコミックスは、隠していた心の葛藤に迫る1冊。

表題作は、過去に夢を諦めたフリーターが家出中の男子高校生を拾い、狭いアパートで一緒に暮らすお話です。
毎日バイトに行って廃棄を食べて寝るだけの自分と、まだ将来が希望に満ちている高校生。


相手の頼る先が自分だけであることや慣れない他人との生活に苛立ちを感じながらも、二人は次第にお互いを受け容れていきます。
kayama先生の情緒豊かなモノローグやセリフにより描かれている、彼らの繊細で時に暴力的な心の機微が…染みます!!

ほか、コンビニ店員と元ヤンチャな書店員の等身大の恋愛や大学生飲みサーの先輩×後輩など、それぞれ心に何かを抱えつつ、歩み寄ったり突き放したりする恋愛模様。
ぜひお楽しみください！


(C)kayama/一迅社