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「トレインスポッティング」でキレッキレのベグビー役ロバート・カーライルにどっぷり惚れ込み、出演作を見漁った時に出会った作品です。主人公ライナス・ローチはそれはそれは美しい青年司祭で、カーライルは、なんだろ?決して美貌の持ち主ではない、カッサカサのやさぐれが似合う俳優なのに、何故かお耽美系の匂いもする稀有な役者なんですよね。BL的に言えば「総受け」。
同性愛に悩む司祭(グレッグ)、その司祭を愛する男(グレアム)、と書けば結構なラブロマンスかと思いきや(ベッドシーンもある。カーライルの尻に2度惚れしました)、これ、身を削られるくらい社会派というか、宗教とタブー、1990年代のイギリスを克明に写した映画で、「考えさせらる」というよりは、うっかりすれば「打ちのめされる、揺さぶられる」ほど心に痕を残す作品です。同性愛という宗教的な罪を背負う青年司祭に降りかかる、懺悔室の悲惨な「告白」~父からの性的虐待~明らかな被害を救うことの出来ない絶望感。発覚するグレアムとの関係に、向けられる世間の嫌悪。それでも尚、問いかけずにはいられない宗教(神)との葛藤は、壮絶ですらあります。
なんといっても、脚本が「心理探偵フィッツ」のジミー・マクガヴァンなのですから。
N〇Kでも放送された「心理探偵フィッツ」は、博打・女好きの性格破綻者フィッツジェラルドが(ロビー・コルトレーンの代表作でもあります。ハリポタのハグリッドさんです)活躍する探偵ドラマ。心理学者でもあるフィッツが警察に協力して捜査するお話なんですけど、幼児性愛、冤罪、人種差別と、センセーショナルな犯罪を扱うだけでなく、その犯罪の禍々しい風に当てられて破綻していく周りの、主人公やその家族、警察官までもを痛々しくねちねちと描ききっていて、観ているこちら側にも「焦燥感」を味合わせられる、書いているだけで気が滅入る傑作中の傑作ドラマです。これぞ、ジミー・マクガヴァンの真骨頂。
この時代は「第一容疑者」(ヘレン・ミレンの刑事役がこれまた良い!)も発表された時期で、社会の膿をあぶり出すことに躊躇しない(まあそれは、スキャンダラスを好むという悪手も含まれますが)英国の精神というものに、ドラマ好きの未熟な私は感銘を受けたものでした。
1990年代は、もちろんLGBTなんて言葉もなく(あったのかな?浸透してなかっただけで)、当時は教会から上映中止の抗議を受けるなど、キリスト教圏では反発があった映画です。映画の後半になるほど、現実社会の体裁と宗教的概念の問いが浮き彫りになっていくのですが、私自身キリスト教徒でもなく、ただ欧米の映画や数冊の本にて与えられた知識しか持ってないので、壮大な宗教観を語ることは出来ませんし、その教養もありません。
ただ、ラストは涙しました。「癒し」や「救済」をクライマックスとして求めがちな自分自身、その前に「赦し」があるということを教えてくれた、大切な映画です。(あらやだ、どっかの浮気旦那を持つ奥さんみたいなこと書いちゃった。まあ「赦し」すらままならない私はまだバリバリの俗人なんですけどね)
マクガヴァンはその他、マイケル・ウィンターボトム監督の元、カーライル主演で「GO NOW」も撮ってます。カーライルは「心理探偵フィッツ」にも出てて、重なってカーライルを起用したことに、なんかのドキュメンタリーで語っていたのだけど内容忘れちゃった。90年代って、日本にも単館ブームが起きてマイナーな映画が輸入されて、「美しい英国映画」ってよりは労働者階級の社会派映画がどっと入ってきた時期でもあって、その時代にロバート・カーライルは愛されていた役者だったのですよ。巨匠ケン・ローチの「カルラの歌」とか。個性が強い割には、いろんな役もこなします。ヒトラーもやってたな。今も色んな映画やTVドラマで活躍されてます。
美青年ライナス・ローチは「鳩の翼」が有名ですが、なんといってもアメリカの長寿ドラマ「LAW&ORDER」での検事役カッターさんでしょう。もう美中年!美中年!すっごい美中年!あとメジャー作品ならノーラン版「バッドマン」の、ブルース・ウェインのお父さん役でちょい出てますね。この方もTVドラマ等で活躍中です。最近では「ヴァイキング」かな。ほんと美中年なんだわ。
なんやかんや難いこと書いても、ローチとカーライルが良いのです。ちょっとうるんだ目でグレッグへ愛を捧げるグレアムが思いのほか健気でね、、、ああ、もう一回観たいわ。でもこの映画DVDとか一時は入手困難?何気に1万円くらいして、おススメしたくてもあんまり日の目をみない作品なんです。TVやケーブルでも。サブスクにあるのかしらん??
あと、英国の名脇役・トム・ウィルキンソンがグレック(ローチ)を導こうとするちょっと偽善的な司祭として出てきます。善き哉!