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本当の完結編

表題作の志澤×藍と、弥刀×朋樹編、そして福田×衞編の3編。

前半2つは、本編だけの「ハッピーエンド」ではなく、
その後もそれぞれカップルが続いていくのだという未来への希望を描いてくださったように感じました。

きっと志澤は、藍がひとつ大人になるたび
今回のように不安になってはいじけて離れて…それを藍がたしなめて…
そんなことまさしく死ぬまで繰り返してそうだなと。
傍目からは想像できない力関係に落ち着いてて微笑ましい笑。

朋樹は元から自立し達観したキャラクターでしたが
社会人になって、柔軟さや繊細な気遣いなどを覚え、最強キャラになっていっている気がします…!
しかもそれが「弥刀ならどうするか考えた」って…愛じゃん…
これからもっと辛いこともあるだろうけど、どんどん成長して最強になって、名実ともに(?)弥刀を抱いてください。

最後に、福田×衞について。
崎谷先生はこれを書いたことで、ようやく白鷺シリーズに終止符を打てたのではないか?と考えさせられました。
シリーズ第一作目で、突っ走った藍をたしなめた志澤が
間違った方向に向かってしまったらこうなっていたかもしれないですね。
この二人についてはまず、このさらに上の世代の靖彬と清嵐の時代から歪みがあったのだと思います。
靖彬に否定されたコンプレックスを抱え、筆を折った福田。
それでも自身の審美眼は間違っていないのだと、幼い衞にその期待のすべてを押し付けます。
結果、世間から評価されることに固執しありのままの衞を受け入れなかった。
それはおろか、自分の中の感情すら気付かない始末。
というか見ないふりをしていますね。極悪なほうのツンデレ…?
愛し愛されることが上下関係に繋がるとしか考えられなかったのでしょう。福田の出自も気になるところです。
陰鬱な描写が多いですが、福田からの衞への愛情が読み取れる場面もチラホラあります。

衞に関しても、最初の歪みは清嵐からの愛情不足だと思います。
息子と引き換えに妻を失ったのは衞も同じ立場。
もしかしたら清嵐と衞も幼いうちは、衞から藍に向けられていたような
温かいコミュニケーションがあったのかもですが…結果的に衞は都会へのあこがれと足りない父性への欲望を抱えた
歪な子供に育ってしまいました。これについては清嵐も反省しているのか
藍への教育はしっかりしていたようで。志澤は運が良かったね。
衞は自分が福田に抱えている感情が何なのか分かる前に洗脳され、
その後も福田に絶対的な「父」でいることを望んでいたように思います。
父は自分なんかに乱されてはいけない、モノとして扱ってほしい、父の自慢になれるような良い子(=画壇で評価される)でなければならない…
愛していると自覚してからもそれは変わらず。
所有される以外の愛があることも知っていたのに、それも求めず。
決定的にすれ違うことになった場面での衞の「失望した」という独白が、これまでの力関係が実は逆だったのか?とすら思えるほど
冷めた表現で驚きました。福田が衞を縛っているというよりむしろ
衞が福田に「完璧な父」を求め、それに福田が(健全な方法では)応えきれなくなり、抑圧することで無理にでも衞の上に立っていたのかもしれないと…。

己の感情に気が付かなかった鈍感な大人と、気づいていたのに相手に孤高を望んだ子供の、悲しすぎるすれ違いのお話でした。
愛と出会って満たされ、藍を遺してくれたのは奇跡みたいなご都合主義ですが
このくらいの救いがないとやってられません。それだけ重たい話です。
二人のお互いへの愛情が見て取れるだけに余計…
崎谷先生、こんなにも感情を揺さぶってくれる作品をありがとうございました。

初読はもう10年以上前ですが、やっと感想を書くことができました。