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十亀の過去が壮絶すぎる、よくグレなかったと思う。

相変わらず小説上手すぎ。物語に引き込まれるとはまさにこの事。
前半は悲しいことの連続。
一瞬にして全てを失ったとあるがまさに言葉の通りだし,
ヤクザが十亀で保険金を取るつもりだったというシーンは本当に冷や冷やする。
そして強姦しかけた二宮くんと再開するシーンで
二宮お前いいヤツだなあと噛み締めて終わる良い読後感。
後半,万とちょっと喧嘩するも上手く仕事をこなす十亀。
映画を撮っているシチュエーションで様々な役職や映画撮影に関する描写が
出てくるけど分かりやすいし,
嫌なヤツも複数出てくるけどそこまでモヤモヤするわけでもない。
すべてのキャラの動かし方が上手すぎる。
そして万(受け)とのイチャイチャもある。
もう一度いう木原さん小説上手すぎる。
全体を通して心に残るのは何度か出てきた十亀の
『不運だったが、不幸ではなかった。』というフレーズ。
貧しいながらにがんばってきたのに家族をなくし
非道な借金取りから逃れるため、唯一の友達のもとからも離れて一生懸命生きてきた彼。
それでも不幸ではないという十亀の幸せを願わずにはいられない。