BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?


元編集関係者が語るBL業界事情 第四回「BL作家になるには」
評者:ミサキさん
めざせBL作家!商業誌デビューに一度は憧れた、今でも憧れている方はいらっしゃいますか?
今回は、出版界ヲタ女子で腐女子な元編集関係者が、商業誌デビューの近道をみなさんに指南します!

 新しい一年の始まりということで、プラスに繋がる感じにしたいと考えて今回と次回は「なるには」話をしたいと思います。
 というわけで今回は「BL作家になるには」です。
 ちるちるさんからも「作家になりたいユーザーもいると思うので」という話があったので、まずはこのテーマにします。

 漫画家も小説家もデビューするときは投稿などから見出されていくのが一般的です。
 BLレーベルも賞を設けていたり持ち込みを受け付けているので、そこにひたすら応募することが第一です。
 どこのレーベルも自社発掘の新人を求めているので、うまくいけばかなり推してもらえます。
 最近はこれまでの雑誌・アンソロジーに加えて、電子配信の雑誌を持っているレーベルも増えてきたので、とにかく掲載できる作品数を増やしたいと考えているレーベルもあると見ています。
(通常の書籍を刊行している版元の電子書籍でなければ、単行本にならない可能性があるので印刷での出版を目指す人は要注意です)
 企業はできればお金はかけたくないので、通常の雑誌よりも明らかにコストがかからない電子配信での新人起用率は高いと思います。
 そう考えるとデビューすることのハードルは下がってきているように見えます。
 ただ、漫画と小説では状況に違いがあります。
 漫画は通常の雑誌やアンソロジーと並行して電子配信をしているところがあるので、掲載枠は増えています。また、この2~3年でさらにレーベルが増えているので、他のジャンルと比べても新人の進出経路は広いと思います。
 加えて同人からのスカウトでデビューする人も多いので、実力さえ伴えば狭き門ではないはずです。
 しかし小説は雑誌を持たないレーベルもあり、1冊分を書き下ろすのが主流なので、以前のように長い目で見て育成しにくくなっています。単行本の売上に対する判断が短気になっているため、複数冊出して様子を見る余裕がないのです。
 それに加えてこの1~2年で「勝てない勝負はしない(=利益が見込めるものだけ刊行する)」傾向の版元が増え、市場が膠着していることも原因だと思います。
(このままだと市場に面白味がなくなってますます読者離れを招くと思うのですが……。悪循環ですね)
 それでも、その突破口になるような勢いのある作品を求めているので、新人は喉から手が出るほど欲しいのです。
 だからこそ今デビューできる人は実力も編集の後押しも期待できるという見方に繋がるので、そういう意味ではプラスな面も一応あります。

 どういう作品ならデビューできるのかというのは、すでにいろいろなところで書かれているので、ここではあえて触れないことにします。
(去年ちょっと物議を醸した某少年誌編集の投稿や持ち込みをする人に向けたツイートは面白かったです。知らない方は検索をかけるとまとめサイトが出てくると思います)
 ということで、私が同人誌や投稿作を見るときに気にする部分を挙げてみます。
 漫画も小説も以下の事柄については共通です。
まずは年齢です。酷な話ですが、デビューには適齢期があると思っているので、ここである程度判断をしていました。
 あくまでも私的な基準ですが、漫画ならだいたい20~30歳くらい、小説なら20代半ば~30代半ばくらいにデビューするのがベストだと思っています。
 こんな基準を無視できるような作品があれば気にせず選びますが、作風・絵柄・言葉の選び方などに加えて、その時のジャンルの傾向、将来性、社会人としての耐性などを考えるとこのくらいが妥当なラインだと考えています。
 同人誌では具体的な年齢はわかりませんが、スペースにいる人が本人ではなく友達だったとしてもだいたい同年代の人だと思うのでそこで判断します。
(親に売り子を頼むような強者がいるなら別ですが……)
 次にエッチシーンが書けるかどうかです。
「エッチシーンは書けないとダメですか?」という質問はいつまで経っても無くならないですね。
 最近は小説でもエッチシーンが無いものが少しずつ出てきて、一時のように絶対必要という雰囲気ではなくなったと思います。しかしそういう作品の場合でも、作家が書かないことを選んだだけで書けないわけではないのが大半です。
「書けない」のと「書かない」のは違うということです。
 書かないのは選択肢ですが、書けないのは技能不足だと私は認識しています。
 ただ、得意である必要はありません。今はできない人も、「苦手だけどなんとか……」くらいになれば大丈夫じゃないでしょうか。
 通常の書籍だと「エッチシーンがないから人気が出ない」なんてことはないですが、電子配信はわかりやすくエロいから売れるものが多いです。読者層の違いによって生まれている差だと思いますが、今後そこも視野に入れるならば、やっぱりできないよりできたほうがいいです。
 これらに加えて、同人誌から探すときはパロディジャンルのほうが多いので、元設定と関係なく読み物として成立させられるかどうかも見ます。どんなに読みやすくて展開が面白くても、元の設定が崩せない人だと声はかけません。
 ゼロから作品を作り出す力が無いと話にならないので、パラレル設定ものがあるときは必ず読むようにしていました。

 漫画と小説のそれぞれの特性に合わせて見ていた部分もあります。
 漫画ならば挿絵もできそうか、もしくはどちらかだけがいいのかという点も見ます。
 絵が描ければどちらもできるように思いますが、そもそも性質が違うので向き不向きはあります。コマを割って一枚の紙の中にいくつも画面を作って読ませることと、一枚絵で印象的に魅せることは似て非なるものだからです。
 そうやって考えると挿絵のほうが簡単そうに見えても、単純な画力という点では漫画よりも高いものが求められているかもしれません。
 小説の投稿作を見る場合は、あらすじがしっかりと書けているかを重要視していました。自分の作品を自分で要約できない人は、たぶん中身もその程度だろうという読みです。
 同人誌のときは、オリジナルジャンルを中心に目新しさを重視して探します。普段からBLを読んでいる人が多いからだと思いますが、BLらしいBLが多い印象です。その枠に収まっていないものであれば依頼の検討するという感じでした。

 少しでも作家になりたい人の足しになっているといいのですが……。
 子供の将来なりたい職業ランキングの上位に公務員が入ってくるような世の中にもかかわらず、水ものである作家になりたいという夢を持っている人はとても貴重だと思います。
 商業BLジャンルは次の方向性を模索している状況(迷子になっている感は否めませんが)だと思うので、新しい展開に繋がるといいですね。
 新しい年になったことだし、ワクワクするような変革が起きないかなぁと勝手に想いを馳せています。

 ご意見・ご感想はコメント欄かツイッターアカウント@misaki_dxまでお寄せ下さい。

紹介者プロフィール
ミサキ
ヲタ女子で腐女子の残念な元編集関係者。欲望の赴くままに業界に足を突っ込むも、根気の無さと面倒くさがりが遺憾なく発揮され現在フェードアウト中。「好きなこと=できること」にするのを目標に、目下自分探しの旅を(二次元のなかで)繰り広げている。座右の銘は「世の中やっぱ金と欲」。
近況:そろそろ花粉が飛び始めているというのは本当なのでしょうか? 備え始めなければ……。
このコラムに寄せられた感想
2013年04月30日 ちひろ
なんかとても不愉快
ちるちるさんというのはBLでは有名なサイトだと思います。
ツイッターやブログがある時代に、いわば公の場所でこういう業界裏話、必要ないと思うんですが。
実際、どうしても裏ではいろいろな縛りがあるとしても、それを公開したところで読み手にはどうでもいい話だし、投稿者は混乱するだけ。よいものを持っている人も、見切りをつけてしまうのではないでしょうか?
同人誌にしたって、特に二次創作の場合はあくまでファン活動の一環でしょ? そこから原石を見つけてくるのはよしとしても、それはあくまでそちらのお仕事。元の設定を崩せないとか、そこを大事にしているファンだっていると思うので、ほっといてちょうだい、って話です。
それに、一般文学賞で年齢を考慮しますなんて言ったら、大変なことになりますよ。
これでは先入観にとらわれているのは、書き手でも受け手でもなく、その中間だと思わされずにはいられない。
編集さんというのは作家の作った夢を売るお仕事です。
夢見させてくださいよ。
なんだかとても不愉快です。




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