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 榎田尤利先生 インタビュー

2012/11/14 12:00

榎田尤利先生が小説執筆に加え、漫画原作も担当した「恋愛シリーズ」。小説と漫画で、ふたつのカップルの物語がリンクしながら進む新機軸BLです。漫画執筆、小説のイラストで榎田先生とコラボしたのは町屋はとこ先生。小説全4巻、漫画全3巻に渡って紡がれた長期シリーズが完結し、最終巻が発売の今月、榎田先生にお話をうかがいました。

Q. 小説『愛とは言えない』、漫画『恋とは呼べない』、完結おめでとうございます! ジレジレしちゃうほどゆったり時間をかけて高めていく恋人たちの関係を堪能いたしました。BL界でもメインカップル以外の人気キャラによるスピンオフは多いですが、ここまで時間軸が完璧にリンクした二作品、しかも小説と漫画のコラボ作品というのは初めてだったのではないかと思います。この物語の着想を教えていただけますか?

A:ありがとうございます。書いている私もジレジレしました(笑)
最初にコラボのお話をいただいたとき、「どうせなら、コラボでしかできない物語構成にしてみよう」と思いました。つまり、小説と漫画の両方を読んで、はじめて世界が完成するようになっていて、かつ雑誌掲載のあいだは同じ時間軸で物語が進んでいくような構成ですね。これこそコラボならでは! ……と張り切ったわけですが、あとから小説と漫画の同時進行がいかに難しいかを思い知りました(笑)

Q. そのあたり、連載としてリンクする苦労や、むしろおもしろかった、などという点をうかがえますでしょうか。

A:小説と漫画では、連載一回分あたりに盛り込めるエピソード量が違うのです。無理矢理喩えて言いますと、小説がどんぶりだとしたら、漫画は子供用のごはん茶碗くらい。いやもっと少ないかな……おちょこかな……。とにかくそれくらい違います。
今回は四人(と一匹)のキャラクターが小説と漫画で絡み合いますので、あ、いやイヤラシイ意味じゃなくて……イヤラシイ意味でも絡むけど……まあとにかく、四人は同じ時間に存在していなくちゃいけないわけですね。小説だけお話が先に進むわけにはいかないんです。小説が漫画のネタバレをしてしまうことになるので。そういう意味で、小説と漫画の足並みを揃えるというところが大変でした。かなり大きな表を用意して、プロットを切り貼りし、時系列に並べて整理していました。コピー取れないサイズの表になっちゃいましたが(笑)
もっとも、苦労したのはその点くらいで、あとはみんな楽しかったです。町屋先生のネームは素晴らしかったし、私の「こうしたらどうかな」という思いつきを、私の想像以上に素敵にしてくださいました。自分のお話が漫画になるって最高だな! と思いながらやっていました。

Q. 今回のお話は、「経験値が高いがゆえに臆病で頑なになってしまう大人の恋」と「未熟さから認めたり許したりできない若者の恋」という構図かな、と思ってます。みんな何かがちょっとずつ欠けていて、それをお互いうまい具合に補完しあう。この絶妙な四人のキャラ設定は、どんなところから生まれたのでしょうか?

A:大人組と若者組を作ろうというのは最初から考えていたのですが、あとはキャラクターよりもプロット優先だったような記憶があります。普通の男たちが、普通に恋愛して、普通に悩んだり苦しんだりする物語なので、派手なキャラクターは必要なかったんです。ですから、私がふだん書く小説のキャラより、だいぶマイルドなんじゃないでしょうか。サガンさんの頑固さは別として(笑)

Q. 『愛とは言えない』を読んでいると、橘高×サガンのやりとりを見るたび、つい先生の著作『きみがいなけりゃ息もできない』の東海林×ルコちゃんを思い出してしまいます。スペック高いイケメンで仕事ができて強引で、そして大変面倒見のよい男……。先生のお書きになるスーパー攻め様はいつもとても素敵です。

A:橘高とサガンは、東海林とルコちゃんとはだいぶ違うと思うのですが(笑)
東海林とルコちゃんは、もう共依存ですからね……よりかかり合うどころか、お互いがっぷり四つに組んだまま生きて行くというか。それはそれで、ラブラブなわけですが。
橘高とサガンはもう少し大人なんだと思います。橘高はサガンに振り回されてはいますが、それで自分の生活や仕事をおろそかにはしませんし、精神的にもあまり不安定にはなりません。そのへんは年の功です。40男なので。サガンは不安定な人ですが、それでも基本ひとりでなんとかしようとします。頑固なのもありますが、他者に依存することをよしとしない大人の感覚なんですね。
でもまあ、たしかに私の書く攻キャラは世話焼き系が多いです……あと、なんかみんな料理がうまい……(笑)

Q. それにしても、サガンの偏屈ぶりは最強だと思います。将来、偏屈ジジイになること間違いなし! でも、だからこそたまに見せる素直な態度やテレが最凶にカワイイという……。そして、「目」という漢字で「サガン」と読む個性的な苗字が私たちに与えるイメージとインパクト。キャラクター設定の上でも、この名前は非常に効果を発揮していると思いました。知的なクールビューティー、でも超偏屈……。あのギャップ、たまりません。このように魅力的なキャラクターたちを生み出す秘訣など、ちらりとご披露いただけないでしょうか。

A:サガンは名前から生まれたキャラクターです。これは私には珍しいパターンです。なにかで「目」を「サガン」と読むと知り、名前で使いたい……と思ったのですね。で、音からイメージしたら美形で理屈屋になりました。当初はここまで偏屈になる予定ではなかったのですが、なってしまったものは仕方ない(笑) キャラクターはわりと勝手に動くのです。私がこうしたい、と思ってもだめな場合もしばしばあります。

Q. 榎田先生は、どのキャラクターが一番書きやすく、親近感を覚えられていましたか?

A:やきのり。やきのり最強。やきのり万歳。
人間だと橘高ですかね。可愛げがあるオッサンは書きやすいです。じつは一番人間味のある人だという気もしています。女癖悪そうだけど。

Q. これはスゴイ! と思ったのは、『愛とは言えない』2巻のカレーのエピソードです。おいしい料理を食べさせて惚れさせるというテクは常道ですが、それとは異なるサガンの超高度テクニック! あれはスゴイと思いました。榎田先生のお話には、いつも美味しそうなお料理がでてきて食欲を刺激されます。今回のカレーも美味しそうでした! 先生にとって、カレーはどんな食べ物でしょう? どんな時にカレーを食べたくなりますか? そして作りたくなるときは?

A:風邪気味になるとカレーを食べたくなる傾向があります。身体がスパイスを欲しているのでしょうか。風邪気味じゃなくても好きなので、月に二回は食べていると思います。多いと週に二回だとか。最近は南インドカレーがお気に入りです。油が少ないのでヘルシーなんですよ。
作りたくなるときは……ラクしたいとき?(笑)

Q. それにしても、猫のやきのりちゃんのかわいさに癒されまくりでした。読者はもちろん、あの頑ななサガンの心を溶かしたのも、実は橘高ではなくやきのりちゃんではないかと……。モデルは先生のおうちの猫ちゃんたちでしょうか? ストーリー中で使いたかったけど、使いそびれてしまったエピソードなどあれば教えていただけるとうれしいです。

A:私もいつも癒やされていました~。町屋先生のやきのり作画スキルがぐんぐん上がっていくのを目の当たりにもしていました(笑) でもうちの猫たちがモデルというわけではないのです。うちのにゃんズは男子で、やきのりちゃんは女子ですし。
書こうかなと思いつつ、機会がなかったのは動物病院に行くエピソードかな。ワクチン接種だとかね。「びょういん、こあいぃぃぃぃ」と超ビビるやきのりと、それを必死に慰めるサガンさん……みたいな。そしてストレスをつのらせたやきのりは、帰宅してから橘高で爪を研ぐという、黄金のパターンですね(笑)

Q. 漫画好きとして知られている榎田先生。『恋とは呼べない』の原作に着手される前にご自分の中にあった意気込みや、原作者としてのこだわりなどうかがえますでしょうか。

A:意気込みは最初の質問にお答えした感じでした。
原作者としては、まだまだ修業の足りない私なので、こだわりというほどのものはありませんが、わかりやすい原作を出すようにというのは心がけていました。原作は脚本形式でしたが、その中でも肝になるシーンや決め台詞にしたいところには、注釈をつけてみたり……でもこれ、原作者はみんなしていることだと思います(笑)
あとは町屋先生がすてきにしてくださるので、安心しきっていました。

Q. 作家という立場を離れて、どんなカップリングやシチュエーションのBLがお好きですか?

A:なんでも美味しくいただけるのですが、最近は50歳以上のくたびれたオヤジ受がとくに美味しいです。攻は若くていいです。

Q. 恋愛シリーズをはじめ、長期間に渡るシリーズの際は、他の連載や物語と並行して執筆されると思うのですが、テイストの異なる作品を並行して進める場合、気持ちやテンションの切り替えはどのようにしてらっしゃいますか? それとも、ひとつの作品世界から抜け出すのは時間がかかったりするでしょうか?

A:忘れっぽいので切替はわりと大丈夫です。ひと晩寝たらだいたい忘れます。それはそれで問題という気もします。
恋愛シリーズは、プロットに関してはかなり先行してできていたので、それを見て記憶を蘇らせる感じですね。あとは、ある程度まとめて書いていた部分もあります。とくに漫画原作は、何作ぶんかまとめて作っていました。

Q. 執筆活動を含めて、先生は一日をどういったスケジュールで過ごされていますか?

A:7時半~8時くらいに起きて、猫を撫でて朝ごはんを食べて、仕事をして猫を撫でて昼ごはんを食べて、ちょっと買い物に行ったりして、帰ってきて猫を撫でて仕事をして晩ごはんを食べて、仕事をして猫を撫でてお風呂に入って猫を撫でて、深夜12時~1時くらいに寝ます。
仕事には漫画を読むことと、ネットをうろうろすることも含まれています。
趣味は観劇です。狂言、歌舞伎、バレエなど。たまにはお友達と食事にでかけたりもします。旅行も好きですが、猫とあまり離れていると私がさみしいので、長期は難しいですね。今年はホーチミンにひとり旅してきました。

Q. プライベートで、最近楽しかったことや将来実現させたい目標や野望があれば、聞かせてください。

A:三線習いたいのです。沖縄の三味線。
あれを抱えて海辺に行き、潮風に吹かれながらぺんぺんと演奏してみたい。かっこいいですよね。

Q. 最後に、ちるちるユーザーにメッセージをお願いします!

A:ここまでお読みいただき、ありがとうございました。私にとってとても楽しく、かついろいろ勉強できたコラボが終わってしまうのはちょっぴりさみしいことです……やきのりに会えなくなっちゃうなんて……(涙)
本当に、じっくりジレジレと進む恋愛物語でしたが、お楽しみいただけたでしょうか。連載中、ツイッターなどでいただいた応援のお言葉は本当に嬉しかったです。未見の方には、まずはコミックス『恋とは呼べない』1巻をオススメいたします。お気に召していただけたら、小説の『愛とは言えない』1巻に進んでいただきますと、物語の世界がぐっと広がるかと。私と町屋先生が丹精込めて創りあげたシリーズです。子猫のやきのりの可愛さもご堪能いただけますよ! 完結記念の企画もございますので、そちらもぜひチェックしてみてくださいませ。
このメッセージを書いている11月現在、日増しに肌寒くなっています。どうぞ温かいココアなど用意して、素敵な本をたくさんお楽しみください。その中に拙著がまじっているといいなあと思いつつ、お別れしたいと思います。ではまたどこかで、お会いできますように。

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