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【おすすめBLレビュー】ハートフル不穏BLや、龍×軍人などBL5作品レビュー!

2019/12/09 12:00

こんにちは、電子書籍ストアのBookLive!です。
最近発売されたBL漫画のおすすめをご紹介♪
注目のデビューコミックスから、隠れた名作まで、BL担当書店員が熱く語ります。

壊れゆく世界で見つけた究極の“ハッピーエンド”『心中するまで、待っててね。』

  • 心中するまで、待っててね。
    心中するまで、待っててね。
    市梨きみ
    757円 (689円+税)


    困っている人を見ると助けずにはいられないお人好しの大学生・福太。優しくて誰からも愛される彼ですが、アパートの自室のドアに「出ていけ」と落書きをされたり、ゴミを撒き散らかされたりといった嫌がらせに悩んでいました。そんなある日、バイトから帰ってきた福太を待っていたのは、幼少期に仲が良かった隣の家の「葵兄ちゃん」。しかし、「葵兄ちゃん」は、昔と変わらない少年の姿のままで……?

    お人好しの主人公に相応しくない陰湿な嫌がらせ、昔の頃のままの姿で現れた憧れの人、そしてすっぽりと抜け落ちた幼少期の記憶――そんないくつかの小さな違和感が不協和音を奏でるような、不穏なムードに包まれて物語は始まります。ふわふわと天然オーラを振りまく福太と福太を振り回すちょっぴり横暴な葵兄ちゃんとの、突然始まった同棲生活は何気ない幸せに溢れていますが、やはり不吉な影が2人から完全に離れることはなく……。迫りくる崩壊から目を背けて、精一杯幸せを謳歌する姿を見て込み上げるこの感情はどう形容すればいいのでしょう。
    嫌がらせの犯人は誰なのか、どうして葵兄ちゃんは子どもの姿のままなのか。“ハートフル不穏BL”に釘付けになってしまいます!

    前作『さよならアルファ』(リブレ)では、互いが小学生と高校生のときに出会ってしまった年の差番の純愛を描いた市梨きみ先生。「これはすごい方向転換なのでは?」と思いきや、初期作品の『可愛い先輩の飼い殺し方』(リブレ)では、クソデカ愛情で受けを監禁しちゃうヤンデレ攻めも描いているという、奇跡的な光と闇のバイリンガル……! その尊さに、跪き手を合わせるしかありません。

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運命の番は、全てを魅了する“極上のオメガ”『蜜に牙』

  • 蜜に牙【電子限定かきおろし付】
    蜜に牙【電子限定かきおろし付】
    東条さかな
    724円 (659円+税)


    普通なら中学生で出現するはずの第2の性が、高校生になっても出現しない狼一覇。「どうせベータだろう」と高をくくっていた彼の前に、極上のフェロモンを持つオメガ・灘姫桜千雪が現れ、「居た…俺の番」と“運命の番”宣言をします。すると、彼のフェロモンに誘われるように、狼は強力なアルファとして目覚めていき……。

    初対面の狼に運命を感じた灘姫の、握りしめた手の甲に口づけながら「俺のだ」と囁いたり、額にキスをして「俺と結婚することだけ考えろ」とプロポーズ(!)をしたりといった男前な振る舞いに、序盤から軽く腰が砕けます。かと思いきや、ベッドでは「(狼に)欲しがられたくて仕方ない…」と頬を赤らめて迫り、首筋を噛まれてうっとりする……。このギャップ、腐女子を殺しにかかっているとしか思えません。
    狼と出会うまで灘姫を守ってきたアルファ・鉄、ベータながらモンペばりの守備力を見せる元結らとの、女王と騎士のような関係性も独特でキュンキュンします。逆境に悩み苦しむ薄幸オメガもいいですが、本作のようにアルファをかしずかせる“女王様系オメガ”もたまらないものです。

    あまあまいちゃいちゃの名手である東条さかな先生。初恋を成就させた幼馴染カップルの甘い高校生活を描いた『星のうさぎ』(ジュネット)や、言葉を食べるヨーカイと彼になつかれた男子大学生・真のエロあまラブ『君と美味しい愛のコトノハ』(ジュネット)もマストチェックです!(どちらも表紙の密着感がすっごくエッチ……)

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孤独な2人が見つけた永遠の愛『龍の夫―亡国の神―』

  • 龍の夫―亡国の神―【特典付】
    龍の夫―亡国の神―【特典付】
    須嵜朱
    715円 (650円+税)


    舞台は数千年に渡り、龍の加護を受けたとある国。他国からの侵略を受けるも、それを退けて独立を守ってきた国王に、突然龍が「守り神を続けてほしくば、下の王子をよこせ」と言い出します。そのため、国王の弟・軍隊長は国のため、身を龍に捧げることを決意。人の理を超えた存在である龍が、どうして軍隊長を求めるのか――人と龍との、奇妙な結婚生活が始まります。

    永遠の命と強大な力を持つ龍。しかし、彼の話す言葉を理解するのは、守護国の王族の血を引く者だけ。永い時を孤独に暮らしてきました。軍隊長と一緒に暮らすことになった龍が最初にしたのは、自分の鱗を軍隊長の体内に埋め込み、外側からも体液を馴染ませて彼の体を、自分の眷属に作り変えていくこと。軍隊長の意志や人権ガン無視のやり口は、さすが龍といったところです。
    命を命とも思わない言動を見せたかと思うと、軍隊長のくだけた態度に満面の笑みを浮かべるなど、傲慢な残酷さと屈託の無さを併せ持つ龍。その人外みあふれるギャップにゾワゾワさせられてしまいます!

    人間と龍、相容れるはずのない2人ですが、心の内に同じ孤独を抱えていて、その孤独を癒せるのは互いだけということに気付き始めます。人化した龍の肌のぬくもりに軍隊長がやすらぎを感じたり、最初は威厳たっぷりで偉そうにしていた龍が、いつの間にか大型犬のように軍隊長にじゃれつくようになっていたり、ささやかな幸せが刺さること刺さること。骨太なストーリーの中に散りばめられた萌ポイントに殺されないよう要注意です……!

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どうしようもなさが愛おしくて、「これが恋だ!!」と叫びたくなる『初恋、カタルシス。』

  • 初恋、カタルシス。【電子限定かきおろし付】
    初恋、カタルシス。【電子限定かきおろし付】
    鳩川ぬこ
    790円 (719円+税)


    失恋のショックから寝込んでいた一騎のアパートにやってきた、当の元カレ・唐木田。「こないだオレと別れたよね?」という一騎に対して唐木田は「オレはやだって言ったし! なしでしょ」と言い張り、勝手に一騎の看病を始めます。おおらかで優しいけどちょっと強引で計算高い唐木田と、純粋で不器用ゆえに恋心がこじれがちな一騎の、素敵なだけじゃない等身大ラブストーリー。

    唐木田が一騎のことを気にし始めたのは、一騎が唐木田の腕に抱かれたいと思っていたから。一騎の気持ちを見透かした上でからかうような唐木田の言動がズルい! ズルいけど、それだけ一騎の感情が見えてしまうのは、すでに彼に恋しているからなのでは? このミイラ取りがミイラ感、嫌いじゃないですよ……!
    運命的な出会いを果たしたり、誤解が原因ですれ違ったり、親の都合で引き裂かれそうになったり……といった大きなドラマは起こりません。2人の男が出会い、一度は別れ、それでもやっぱり一緒にいることを選択する――誰しもが直面しえる人生の一場面なのに、2人の感情の裏の裏までが描かれているせいで、心が震えて仕方ありません。ページを閉じれば終わってしまう「物語」ではなく、ページの向こう側で2人の人生が続いているような錯覚すら覚えるのです。

    本作がデビュー作という鳩川ぬこ先生。唐木田と一騎を、こんなにも生々しくも魅力的に描く圧倒的筆力に脱帽するしかありません。次回はどんな作品を世に送り出してくれるのか、今から楽しみです!

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美しすぎたがゆえに壊れてしまった、切ない両片思い『僕の美しいひと』

  • 僕の美しいひと【電子限定おまけ付き】
    僕の美しいひと【電子限定おまけ付き】
    カシオ
    792円 (720円+税)


    全寮制の名門・聖ヨゼフ高等学校に入学した小野寺忍。一見普通の男子高生でしかない彼ですが、その正体は人工的に生み出された生命・バイオロイド。しかも、性的な愛玩用に作られたセクサロイドだったのです。寮で同室になった製薬会社の御曹司・吉良と忍は友人として近付いていきますが、ある日忍の秘密を知られてしまい……。

    セクサロイドといっても、食事をすれば排泄もし、人間と変わらない感情を持っています。しかし、12時間に1回「ハーネス」という薬を飲まないと理性を失くしてしまう――幼い頃にその姿を目撃しトラウマを抱えていた吉良は、忍がセクサロイドだと知ると、「俺を騙してたのか」と怒りを顕にして彼を犯します。その怒りは、忍のことを特別な親友だと思っていた強い信頼の裏返し。吉良が忍に酷くあたればあたるほど、それまで忍に抱いていた感情の大きさを思い知らされるようです。親や家族を持たない忍だけでなく、名家「吉良」の名前ゆえに心許せる相手がいなかった吉良もまた孤独だったのでしょう。本当なら互いを慈しみ合えるはずだった2人なのに、傷つけ、傷つけられるしかなくなってしまった運命がただただ悲しく目頭が熱くなります……。

    繊細なタッチで綴られる悲しくも美しい物語に惚れた方には、カシオ先生の代表作『心を殺す方法』(祥伝社)をぜひ読んでいただきたい! 両親の再婚により義兄弟となった人見知りの美少年・光と優しく穏やかな青年・春樹の、究極の執着愛憎劇です。衝撃に次ぐ衝撃に思い切り振り回さえる快感が味わえます。

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