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第1回 BL小説アワード

アンドロイド・ユキの事情

エロ/思春期

和希とユキは幼い頃より寝室を共にしていた。といってもユキは充電という名目で布団に入り寝ているように見せかけているだけで実のところ常に電源ははいりっぱなしの為寝転んでいるだけで意識は常にある。和希はその事実を知らない。

タロんちゅ
4
グッジョブ

 今日もまた甘く、苦しくもどかしい拷問のような時間が始まる。

 ユキは自身の所有者である和希が性欲旺盛な年頃らしく自慰に耽る時間、心を無の境地に持っていくことに必死だ。
自身がせめて現代のアンドロイドのように感情乏しく機械らしくあればと心の底から願ってやまなかった。

 日々、さまざまな場面で多種多様に機械化が進められている現代の人類最たる成果はアンドロイドの急速な発達といっても過言ではない。今でこそ各家庭に1体あるのが常識になっているが、そもそものアンドロイドの発端は高齢化による労働力の減少を抑える事だった。医療用、介護用から始まり今では人の手の感覚で行わなければできないような仕事でもこなせるようにまで進化を遂げた。
 細かい所作まで人のような動きになってくると剥きだしの鉄や銅、ステンレス等の無機質で味気ない見た目は倦厭されいつの間にか人型へと姿を変えていった。そうなると、人の傲はとどまることを知らず次に見た目にこだわりを持ち、声色、性格、感情など人さながら各アンドロイドごとに個性を持つようになってきた。それに伴い企業用だけでなく一般家庭用に生産するアンドロイド―メーカも出始め、販売価格も最初こそ1体あたり約高級車1台分くらいの値段だったが需要が増えていくにあたり大量生産され、今では各家庭に1体以上あるのが当たり前になっていた。

 ユキが高梨家にやってきたのは、和希がまだ物心がつく前に仕事で家をあけがちな両親が寂しくないようにとの配慮だった。何よりも和希を優先させる事、和希の為だけにあり続けるようにユキはプログラミングされ、24時間年中無休で和希とともにあり続けていた。下手なベビーシッターよりもよほど愛情深く和希を育てるユキを両親はアンドロイドながら熱く信頼を寄せていた。感情豊かで和希の事を慈しみ育てていくユキはアンドロイドである事をおけばさながら本当の兄弟のようであった。
 和希が嬉しそうにしていたり楽しいことを話していると同じように嬉しい楽しい気持ちで満たされ、また悲しいことがあった時や辛そうにしていると同じように悲しい辛いという感情を共有していた。時に和希が間違ったことをしたり人に迷惑をかけた場合は厳しく叱り、真摯に諭しきちんと反省させ和希とともに成長の時間を重ねていった。
 アンドロイドのユキは初期設定こそ和希にの為だけにあり続けることを前提として登録されていたが、周囲の環境や自身の置かれている立場などさまざまな要素に適応し学習していくようにプログラミングされていた。また、痛い事をしたらどんなものでも痛いんだという当たり前の事をアンドロイドと育っていてもわかるように痛覚なども感知するように設定されていたためユキは本当の人間のようになってしまった。
 そんな人間臭いアンドロイドが多くなったあるとき、あまりにも感情豊かなアンドロイドにいずれ人は乗っ取られてしまうのではないかと危惧した研究者が声を上げ始めた。その心配は徐々に世間を包み込み一気にアンドロイド感情抑制法案という新しい法律さえ可決されてしまった。
 幸いにも、アンドロイドの開発者が至って健全であった為か人間を乗っ取り人の世界をアンドロイドが支配するような事態は起こらなかったが、代わりにあまりにも人間に近づきすぎてしまった感情の豊かなアンドロイドに人が依存する由々しき事態が多数起こっていた。
 亡くなった妻の代わりにアンドロイドとともに暮らしていた男性はアンドロイドが交通事故に巻き込まれてしまい修理不能になったことにより更なる心の傷に耐えられず自殺したり、また人ではできない奴隷のような扱いをアンドロイドに強いた者がいたりさまざまな場所で人ならざる人への弊害が出るようになってきていた。
 そういった事態を受け、各アンドロイド企業は販売しているアンドロイドの感情抑制を行うべくアンドロイドの改修もしくは感情抑制されたアンドロイドへの交換を実施していった。
 法により決定されたことなので概ねの人々は改修、交換に応じていた。だが、あまりにもアンドロイドに気持ちを傾けてしまっている人はなかなか対応せず、仕方なく感情をそのままに表情を出しにくくするような措置が取られた。
 
 ユキもまた感情豊かなアンドロイドとして他のアンドロイド同様、改修するように政府より勧告され両親もそうする予定であったが、物心ついたころよりずっと一緒にいた和希がどうしても納得しなかった。
 ずっと二人きりで育った和希の気持ちを慮り、両親はユキを表情の乏しいアンドロイドにとどめるにことにした。ほぼ何も変わらない。顔も、匂いも、感情も。ただ表情が硬くなったことだけが唯一にして最大の変更点であった。
 そんな無表情なユキにしばし違和感を拭えなかった和希だったが、再び同じく時間を過ごしていくうちにユキはユキなのだと変わらないことに気づき安堵を覚え平穏な日常を取り戻していった。

 そんな1年前のある日、和希が少し熱っぽい瞳でユキに訴えてきた。
「ユキ、なんだか体が熱くてだるい…」
 朝のバイタルチェックで特に異常はなかったが風邪でも引いたのかと思いユキは体温感知ができるおでこを、和希のおでこにくっつけてみる。
「うーん、特に熱はないみたいだけどなんか変なものでも食べた?」
 普段元気な和希がしおれているのが、なんだか可愛いなと思いながら無表情でサーチシステムを起動させ体を探っていく。
「なんか、お腹っていうか下半身が熱い気がする…?むかむかっていうかこうじわじわするカンジ…」
 言われて下半身に目をやると少し和希の股間に熱が集まっていた。
「あー、和希も大人になってるんだね~。むかむかというかムラムラしてるんだよ。大丈夫だよ処理したらすぐスッキリするよ。」
ユキはそういうとリビングのソファーに座り和希をその間へと鎮座させ後ろから抱えるような姿勢を取った。
「俺はアンドロイドだからないけど、人は大人になっていくと成長に合わせて体も変化していくんだ。だから和希のここが少し膨らんでるのも成長しようと体が精通を促してるんだよ」
 至って事務的にそう説明しながら、ユキは和希に体の仕組みに教えてあげる。小学五年生で精通は早いのかどうかは不明だが、まだ性教育前でそういった知識のない和希には実際やってみたほうが早いと思った。数ある膨大な知識の中から性に関する知識をもとに和希の体を高めていく。人より少し冷たいユキの体は和希が小さい頃より慣れ親しんだ温度で和希の体温と相まってどんどん熱が上がっていく。少し苦しそうになったズボンと下着をさっと脱がし、まだ幼い和希の性器に手を這わせやさしくこすり、強弱をつけながら上下にしごいていく。
「ぅ、ふぅあ!ユキっっ、なんか…もれそうっっ」
 幼いながらも和希の性器は可愛く立ち上がり、先端の小さな口からは少しずつ精子が迸ってきている。
手の置き場を探すように和希の両手がさまよっているのに気づき左手をそっと握り、右手は一緒に性器を扱くように促しピッチを速める。ユキと同じように擦りながら徐々に自分のいいところがわかっていくのか和希が自発的に手を動かすようになったのを見計らい、ユキは和希の耳元で
「漏らしていいよ、全部受け止めてあげるから」とそっと一言囁くとその途端、一際感じ入るように喘ぎながら和希は射精した。
 そんな和希を見てユキはただひたすら可愛いと思った。何も表情には表れないが幼かった和希が大人の階段をかけていくその手伝いを自分ができた事に何とも言えない充足感を味わっていた。愛しい愛しいかわいい和希。アンドロイドの自分のこの感情はただのプログラムにすぎないとわかっているのに集積回路の集まりである自身の胸は不穏に騒いだ。どんなに和希を好きでいても自分には何も未来などないのが痛いほどわかっているのが苦しくて仕方がなかった。
「和希、精通おめでとう。次から自分で処理するんだよ」
ユキが和希に言えるのはそれだけだった。
 
 和希とユキは幼い頃より寝室を共にしていた。といってもユキは充電という名目で布団に入り寝ているように見せかけているだけで実のところ常に電源ははいりっぱなしの為寝転んでいるだけで意識は常にある。和希はその事実を知らない。幼い頃よりスリープモードであるという先入観によって意識はないと思い続けている。
 和希に自慰のやり方をレクチャーした日以降、和希は夜中にたまに自慰に耽っていることをユキは知っていた。それを話題にすることはデリカシーにかけるのでユキはそ知らぬふりを通した。
 ただ、いつからかは忘れたが和希は性器と共に自身の後孔を弄りながら自慰をするようになっていた。確かに後孔には前立腺という性感帯が備わっているため男でも入れられる快感を得られるが、和希はいったいどこでこの情報を知り得たのか…。その際、さらに悩ましいことに和希は「ユキ・・・ユキっ、ん、すきっ」と自分の名を呼びながら自慰をしている。
 ユキは、他の誰でもなく自身の名を呼びながら自慰に耽る和希を死ぬほど愛おしく感じた。狂おしいまでの愛情が胸を駆け巡りすぐにでも自分も和希が好きだと、何事にも代えがたいほど大切だと駆け寄って抱きしめたかった。
 だがその瞬間、自分のこの感情程厄介で手に負えなく未来もないものはないと悟った。せめて自身にセクサロイド機能があれば和希の体を喜ばすことができたかもしれないが家庭用育成型アンドロイドである自身にはそれもあり得なかった。もし、好きだと告げたとしても自身は和希に恋人として何もしてあげることはできない。ただ、好きだよと無用な言葉の呪縛で縛る事だけしかできない自分の不甲斐なさに漠然と絶望を覚えた。
 だったら自分の気持ちは告げるべきではない。
アンドロイドとのありもしない未来よりも、どこかで出会うかもしれない和希の運命の人とのために自分は無責任な言葉の呪縛で縛ってはいけない。そう結論付けたユキは、この出来事をいつものように見てないものとして心の片隅に大切にしまうことにした。和希が自身に想いを寄せてくれる事を嬉しく思いつつも同じ温度で気持ちを返せないことが心苦しい。

 まったく、こんな厄介な感情、アンドロイドの手には負いかねる。開発者を心より疎ましく思った。だが自身を生み出してくれたおかげで和希との大切な時間を共有できることも然り・・・。複雑な思いを抱きつつユキは寝る時間が来る事を少なからず待ちどおしにしている。自分を思って自慰に耽ってくれている間は間違いなく和希はユキのことしか考えていないという事実がユキに複雑な優越感を与える。
  
 あぁ今日もまた甘く、苦しくもどかしい拷問のような時間が始まる。

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