ディアレスト コミコミ特典ペーパー

変らずに続く時間の中で

本品は『ディアレスト』のコミコミスタジオ特典ペーパーです。

本編後、昼下がりの一時のお話になります。

その日もキオはお茶のご相伴に預かりながら、ロシェルが絵を描く
様子を見守っていました。ロシェルはここのところ調子がすこぶる
良いらしく、今も熱心に画帳に鉛筆を走らせています。

ロシェルの画く絵は明確に何を現しているのか不明なものが多いで
すが、近頃は少しずつ、植物や生きもの等をが罪に選ぶことが多く
なりました。

きっと新しく描きたいものが増えて楽しくてたまらないのでしょう。
そんなロシェルの姿は感慨深く、キオは惚れ惚れといつまでも見つ
め続けていられます。

無心に素描を続けているロシェルを見ているうちに、キオはふと
彼の髪が伸びている事に気づきます。無意識の様ですが、絵を描く
最中に何度も払っている前髪は瞳を覆わんばかりでした。

ロシェルに髪を切りましょうと提案し、地下室の倉庫から髪を切る
ための鋏を取り出して、軽く研いでから離れに戻ると、ロシェルは
手持無沙汰な様子でキオを待っていました。

ロシェルは身の回りの様々な事同様、髪を切る事もキオにしか許し
ません。キオには床屋の心得などなく、不器用でないものの見栄え
よく整えるのは思った以上に難しいのですが･･･

B5サイズ４つ折り両面にてキオがロシェルと自分の髪を切るお話
です。

そうしなければロシェルは自分で髪を切ってしまうのです。一度
あまりに伸びた神が煩わしかったのか、キオも気づかないうちに
斬新なまでに短く、毛先も整えず、邪魔な草でも刈ったかのよう
に無造作に切られてしまったのです。

本人としては快適なようでしたが、キオは卒倒しそうになったし、
主人であるジェラルドも複雑そうな目をしていました。それ以来
キオはロシェルが好き勝手に切らない様に注意しています。

キオはいつも美しい人の一部を盗み取っているようないけないよう
なことをしている気がします。今回も慎重に鋏を入れて整え、つい
で自分の髪を整えようとすると、ロシェルから「そこは切るな」
「あと少しならいい」と事細かな指示が飛びました。

自分の髪には無頓着なのにロシェルの髪型についての注文はとても
細かいのです。いっそロシェルが切ってくれればと思いますが、
かつてたとえ髪１本でもキオの１部なのだから切れないとこぼされ
てキオは謝る事しかできませんでした。

やっとロシェルのお気に召すように髪が切れると、ロシェルは仕上
げとばかりにキスしてきます。お茶が冷めてしまいましたがキオは
「もう少しこのままで」というロシェルの抱擁に身を任せる

･･･というほのぼのとした後日談でした。

ゆったりとして時間の中にも過去と変わらない時間、過去と変った
想いが見えて彼らの幸せが滲んでいる素敵なSSでした　(^-^)