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表題作甘い棘の在処

受けと同居している従兄弟の木島敦,本社勤務,25歳
記憶喪失の柿沼達也,飲食店の副店長,25歳

その他の収録作品

  • 甘い場所

あらすじ

事故で記憶を失った達也。唯一執着を憶えたのは、従兄弟の敦だけだった。だが敦は達也を冷たくあしらう。寂しくて悲しくて――でも側にいたくて、縋るように敦との同居を続ける達也に、敦が告げた残酷な過去。「無理矢理犯った。ハメ撮りの写真一枚でおまえを従えた」組み敷かれ、繋がったそこから熟れていく身体。蕩けるように甘い愉悦を貪り、疼いた身体も心もただ敦だけに纏わり付く――。超話題作、書き下ろしつき。

作品情報

作品名
甘い棘の在処
著者
萩野シロ 
イラスト
円陣闇丸 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイSLASHノベルズ
発売日
ISBN
9784862633187
3.3

(18)

(4)

萌々

(4)

(7)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
9
得点
58
評価数
18
平均
3.3 / 5
神率
22.2%

レビュー投稿数9

側面だけでは見えてこない真実

事故に遭い、記憶を失ってしまった達也は
裕福な実家があるにも関わらず
仲が良さそうではなかった従兄弟の敦と同居していたようです。
前と同じ環境の方が思い出しやすいと医者にも言われ
敦とまた同居を始めますが
決して友好的ではない敦の態度に戸惑います。
自分と敦の関係性はいったい…。

記憶喪失もの、結構作品として数はあると思いますが、
しばらくわからないまま進むので
達也の不安に共感してしまいました。
しかも、冒頭から凌辱シーンなのですが
無理矢理な行為は好ましくないのに
達也がすごく感じているので
嫌な気持ちにはあまりなりませんでした。
ただ敦の冷たさが気になって、一気に読み進められました。

思い出せなくても敦に対してだけ感じる執着、
憎いのに側にいたい矛盾、
敦に翻弄されながら抗えない達也に胸が痛み、
意外な真実が明かされた後半では驚かされました。

ベッドシーンは何度かありましたが
甘い雰囲気ではないのに達也が気持ち良さげで
事後の冷たさが引き立つ様子もまた切なかったんです。
それすらもラストの心を通わせた場面では
二人とも苦しんで来たけど良かったねと思えました。

SSの『甘い場所』で達也同様救われたような気持ちに…。
書き下ろしまで読めて嬉しかったです!

なんといっても円陣闇丸さんの美しすぎるイラスト!!!
服のシワでさえ素敵ってどういう事なんでしょうね…。
しばらくうっとり見つめてしまいました!!

4

「感情」は覚えている

表題作と短めの続編の2作品収録されています。

記憶喪失ものって、「失うまでの記憶はどんなものなのか」「いつどうやって記憶を取り戻すか」がポイントとなり、ミステリ要素が高くなる傾向があるので、推理小説好きの私にとっては大好きなジャンルです。

事故まではどんな自分だった?
本当に単なる事故だったの?
二人の関係は?上位だったのはどっち?

そして、その期待を裏切らない素晴らしい作品でした!
幼馴染から社会人までの二人の思い出と、それに伴う「達也」の長い片思い。事故までの素直になれない「達也」と、事故後の記憶をなくしながらも一緒にいたいという感情のまま動く達也。そんな達也の変化に戸惑う敦。二人の揺れる感情がとても丁寧に書かれていました。
達也は敦にしたことは許しがたいはずなのにーーラストの敦の言葉に、達也と一緒に泣きました。

続編の「甘い場所」では、不器用な達也と、好きと分かった途端に甘い敦の話に大満足でした。

幼馴染み社会人カップルがお好きな方、切ない大人同士の恋がお好きな方にお勧めです。円陣先生のイラストも素敵ですし、エロ場面も多いです。ただ、冒頭をエッチシーンにして回想させる必要はあったのかは微妙な印象でした。ありがちですが、事故の白いライトの方が良かったのでは。

陵辱が苦手な私にも気持ちがある分そう酷くは思いませんでしたが、無理強いする場面があります。また、攻め受けが反対な場面もありますので、苦手な方はご注意下さい。

2

真実が何かわからない

記憶喪失ものの作品てすごく好きということもなく、あんまり期待しないことのほうが多いです。
何故なら記憶をなくす→相手のことを忘れてしまう→それを取り戻すまでのストーリー展開という一本道が最初から完全に定められてるからなのですが。
しかしこれは冒頭から引き込まれました。

交通事故で記憶をなくした達也は、従兄弟の敦と同居していたと知って記憶をなくしたまま、また彼と暮らしはじめます。
でも敦は冷たく、達也のことが嫌いだという。
嫌いなら何故同居していたのか?
戸惑いながら記憶を辿ろうも、メールも電話をくれる友人もなく、訪ねてくる人もいなく…
一体自分はどんな人間だったのか、仲良くないのに暮らしていた敦との関係も疑問で、よく電話をしていたはずなのに、敦の携帯電話の番号も登録されていない。
二人の関係って一体どんなだったのか、気になって仕方なかったです。

核心まで読むと、結構痛々しい、せつないお話です。
敦と達也の本当の関係はネタバレになるので真実を書くのは控えますが、達也は記憶をなくし、何もわからないまま、敦の言葉に翻弄されながら敦に惹かれていきます。
何が本当かわからない、記憶ほど曖昧なものはない、というテーマで作者さんは書かれたらしいのですが、とても引き込まれるお話でした。

面白いことに、記憶をなくしたことで達也はもとの達也という人間も客観的に見られるのですね。
そして第三者的な目線で、二人の関係の真実にいきつくわけです。
そして達也が真実を知ってからがすごくせつない。

せつなくて苦しくて、でもお話としてよく出来ていると思ったのは、達也は敦が好きなのに、過去の自分のせいて達也は嫌われている、「達也」のツケを今払っているわけです。
過去の自分のせいで報われない恋。達也は過去の自分を恨みます。
そのあたりがよくある記憶喪失モノの一連の流れと違っていて、ひきこまれました。

くっつくのかハラハラな関係も最後は、甘かす感じで終わっています。
あんなにドロドロしていたのに、でも不自然でなく、敦が達也を可愛いと感じたことも、何故可愛いと思うのかも素直に伝わってきて共感が持てました。
達也が事故にあった理由も、口で説明を聞くとせつなくてじんときた。


えろが多目なのですが、イラストが本当に綺麗でしげしげ眺めてしまいました。
ちょっと痛々しくもギスギスした関係が最後は甘々になります。
ストーリーそのものも面白く、カップリングとしても楽しめました。

4

記憶を失くしても執着する…

事故で記憶を失くし、親にでさえ距離をとってしまう達也(受)は、従兄弟であり同居人であった敦(攻)の側に居たいと望みます。
敦は、記憶を失った達也に対し冷たい態度をとり、達也は戸惑い落胆し、怒りさえ覚えますが、それでも敦の側に居たいと執着する。
そして、敦から告げられる記憶を失くす前の『達也』と敦の関係…そして達也は敦から凌辱されてしまう(>_<)。だけど、それでも達也は敦の側に居たいと望みます。

記憶を失くした達也は、記憶をなくす前の『達也』の事を知ろうとしますが、なかなか思い出せず…幼いころの『達也』の記憶をやっと思い出し、『達也』が敦に想いを寄せていたことを知る。

今の自分の敦への執着は、『達也』のものであると気付いた達也は、…敦が『達也』を憎み嫌っている本当の出来事を知り…敦を解放しようとする。

達也が思い出せない『達也』は、敦に対して酷い事をしていた…そして、6年の間…敦を無理やり支配していたんですね(>_<)。
達也は、『達也』がした敦への仕打ちに罪悪感を感じているけれど、『達也』の気持ちも理解している…そして、今の達也も敦が好きで、だからこそ、自分の気持ちを告げずに敦を解放しようと心に決めた。
なのに、敦は達也にしてはいけない質問をぶつける…
何故…『達也』は自分に酷い事をしたのか、事故の夜の『達也』の行動のわけを知りたいと…

それに対する達也の返事は…言うつもりもなかった言葉を言ってしまう…「好きだ」と…(>_<)。
『達也』も達也も…敦が好きなんだと…。
そして、…敦は許します…敦のセリフが良いですね…「全部、馬鹿げた愛情の裏返しだって、許してやる」…(^-^)。
敦もいつしか達也に魅かれていたんですね。だから、達也を無理やり抱いたんですかね~。

『達也』は、いつか達也に思い出してもらえるのかな…敦は、『達也』ごと達也を受入れてくれたから…達也は幸せになれますね(^-^)。

同時収録の【甘い場所】で、恋人同士になった2人が読めます。
敦は、達也を甘やかしていますね…甘甘の2人です(^・^)。

萩野シロ先生の本の中で「浸食」の次に好きな作品です。

0

いとこ同士の確執+記憶喪失

初読の作家さんとBLによくある“記憶喪失”というのがあって、長く積ん読いちゃいました。ふと円陣先生の表紙絵に呼ばれて読み始め・・・

最初から玄関先のエロシーンですか^^;
そう来るか・・と思っていたら、段落が変わるとストーリーの時間もパタッと変わり、冒頭のシーンはまず置いておいて・・みたいな話の進め方です。
時間軸の点が線になるまで少し辛抱。
それと、作者さまは単純な文がお好きではないらしく、比喩する修飾がされている言葉が文章が多いです。
単純で直接な修飾ではないので、面倒に感じる時もありました。
また、自分とは違う句読点の使い方や反語の連立とかの不慣れは、吉原理恵子先生にも感じたっけ。
読み終えてしまえば「経験値アップ」と言う事です。

さておき、ストーリーです。
交通事故で記憶喪失になった達也は、病室で出会った従兄弟の敦と一緒にいたいと強く願う自分に気付きます。
長く同居していたという敦なのに、達也に冷たく、いや、敵視と言う程。
記憶の無い達也は、以前の達也と敦の仲を知るすべも無く「自分が出来る事から始めよう」と前向きな態度で敦に接します。
料理を作ったり、敦の心配をしたり。
そんな達也に、敦の態度は悪くなっていく一方なのは何故?
達也は、記憶を失くす前を知りたくて、外に出て人と出会う事で「前・達也」の人となりを聞き、「前・達也」がしなかった良い関係を築いていきます。
そうこうしている内に、記憶の一片、幼い頃の敦との思い出が回復され、1つ1つ思い出す度に「前」が敦にどれ程の執着していたかを知っていきます。
達也も敦に想うのは「前」からの継続なのか?それとも?
敦も「後」を心憎からず思ったからこそ「前」との確執に戸惑ってしまい、今の達也に当たってしまう。とっても痛い関係です。
それでも達也は敦を想い、敦はそれを分かっているから、その後は完全無視続ける。
「前」と敦の確執を知った「後」の自分がどうすれば敦の良い様になるか悩むあたりでは、「前」のせいでどうしてくれるんだよーって突っ込んでしまいました!
あ・・ネタバレ過ぎ?すみません。

BLに多い記憶喪失モノと、あまり気にしていなかったこの作品。
良かったです!
記憶喪失モノの中でも絶対上位だと思います!

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