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表題作カインの扉

その他の収録作品

  • 踏切
  • 手紙
  • 電話
  • 贖罪
  • 惜春
  • あとがき

あらすじ

どうして双子に生まれてきたんだろう。封印したはずの禁忌が、ひっそりと浮上する。同じ顔、同じ声、同じ欲望。せめて兄弟でなかったら…。17歳のある日、過去がいきなり僕らを引き裂いた。

登場人物
緒方舟 高校2年 双子・兄
緒方櫂 高校2年 双子・弟

作品情報

作品名
カインの扉
著者
たけうちりうと 
イラスト
ビリー高橋 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
X文庫ホワイトハート
発売日
ISBN
9784062552325
4.1

(10)

(5)

萌々

(1)

(4)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
4
得点
41
評価数
10
平均
4.1 / 5
神率
50%

レビュー投稿数4

愛情と殺意

前に読んだ同作者さんの作品に出てきた双子が印象的で、同じく双子を題材にしたと言う事で手に取ってみました。
非BLになっていますが、中身はBLと言ってもいいと思います。
BLというよりJUNEっぽいですね。

内容は双子の櫂と舟と、父母の4人家族をとりまくミステリー。
幸せそうな家族ですが、舟だけが知らない秘密があり、次第に家族間の関係がこじれていきます。
事件自体はささいな事が連続で起こるというものですが、それを一つ一つ紐解きながら、櫂と舟の心理的な依存に焦点を当てています。

愛情を描いた作品としては非常に鬱で、重いです。ティーン小説だと思って10代のときに読んでいたらショックを受けていたかもしれません…。
双子の兄弟でそういう関係になる、という事が本当に現実世界であれば家族はこうなるかも…という一例を見た気がします。

愛とは何であるのかを読み解くにはすごく深いお話で、多分読んだ人の分だけ考え方があると思います。私は、全て奪ってでも手に入れたい!と思うのが愛かなと思う派ですが、そうでない考え方もあって、どれが一番苦しいとかどれが一番良い方法だったとか、後から考えてもきっと無いんでしょう。
すごく長々と考えてしまう作品でした。

好みが分かれそうな作品なので、人にオススメできるかどうかは微妙なところかもしれません。

3

挿絵買い。

こんなどんよりした雨の日に、こんな憂鬱なエンディングの小説を読んでしまって、やってもーた感がハンパねぇです。そして過去にレビューを残してくださった方々に、まじで感謝です。これでレビューゼロだったら、気持ちの持って行き場がなくてホントしんどかった…。他の方の感想を読むことができて、かなり救われました。

むつこさんもレビューで指摘されていらっしゃいますが、この作品はBLに癒しを求めている腐女子には全く向きません。読後に気付きましたが括りは非BLで、テイストとしては完璧にJUNE系。双子の間の特別に深い結びつきを描いた物語ですが、タイトルにもあるようにカインとアベルを下敷きにした、人間にとって根源的なテーマの一つである親子関係もお話のベースを形作っていると思います。

幼少期にとある事件に巻き込まれた一卵性双生児の舟(しゅう)と櫂。高校生になり、櫂の身辺で不穏な出来事が起こり始める。舟は櫂のことが心配で、櫂も舟のことを絶対的に頼りにしてくれていると思っていた。なのに櫂はクラスメイトの宗方とばかり仲良くしているようで、大事なことを舟だけには言わない。櫂の知らない部分がどんどん増えるにつれ、父親に似て鈍感…、もとい、おおらかな舟はだんだんと周囲に目が開かれていく。仲の良い平凡な家族だと思っていたのに、父親は舟に、母親は櫂に肩入れしているようで…。

双子の絆って、双子にしかわからないんだろうなとは重々承知だけれど、フィクションなのに、読んでいてどうしてこんなに刺さるくらい舟の気持ちがわかっちゃうんだろう。片割れと離れ離れになる寂しさが、自分から半身を奪っていく者への憎しみが。エンディングを思い出すだけで、胸が抉られるように苦しくなります。

若い頃に読んだ双子もので衝撃を受けた作品に吉野朔実さんの『ジュリエットの卵』があって、この作品はわたしにとってそれと同等のインパクトがありました。歳を重ねると重たい作品は堪えるので敬遠しがちですが、それでもなお、衝撃を与えられる作品って物凄い普遍性があるんじゃないのかなと思います。傷の回復力が早い若かりし頃にリアルタイムで読みたかった。こういう古い作品読むと、どうして当時やおいから離れてしまったのかと悔やまれてなりません。まぁ、何事にも時があるんでしょうけどね。

3

双子物

帯『どうして双子に生まれてきたんだろう。』

かなり好き作品。
所謂BL小説より、むしろ普通の青春小説に近い印象。
ちと青臭い部分もあります、まあその青臭さが魅力でもあるのですね。

双子の櫂と舟。
舟視点で話は進みます。
一見すれば平凡な家庭で、両親と仲良し双子。
彼等は今まで同じ様に行動し、お互いの事を話してきた間柄でしたがその関係が少しずつ変わって行きます。
家には妙なプレセントが届き。
櫂は舟に何も言わずに部活の退部を決め、親友に言っても舟には言わない。
その彼の変化に奇妙な不快感を抱きながら舟は櫂を、そしてプレゼントの謎を知ろうとします。
次第に平和に見えていた家庭内の不和の部分が見え始め、父は舟を可愛がり櫂を攻め、その櫂を母は庇う。
櫂が舟に対してどんな感情を抱いていたのかは仄めかす程度ではっきりは語られず、彼等は離れて暮らす内に完全にバラバラな個人としてそれぞれ生きていく。
あくまで櫂が聞いて櫂が見て櫂が知った事だけなので、その裏で何があったのかは分からない部分もありそれは周りの態度や櫂の言葉から推測するしかないのですが。
双子禁忌物とは違い双子が別れて、半ば無理矢理分かれさせられてそれに戸惑う片割れ、舟視点での話です。
進めば進む程に、舟の置いて行かれた感が募っていきそこが切なくてそこがいいのだなー。

2

神にしてもいいんだけど、

双子ものってたくさん読んだけど、「設定そのものは好きなのに、実際に読むといまいち萌えない」って作品ばかりで、「双子ものはつまり私の萌えじゃないってことのかなァ…」と思ったりもしてたんですが、この作品を読んで、「やっぱりツボだ!」と思いました。
親や友人を絡ませて、惹かれる気持ちと禁忌の思いのジレンマを過不足なく描いてくれてるこの作品、本当にキュンキュンしました。
くどくない心理描写が巧みで、余計に切なさを煽るんだなこれが。
私なんで昔、たけうちりうと作品を苦手だと思っちゃったんだろうなァ…やっぱり数冊は読んでから判断しないと、面白いものを読み逃すんだなと思いました。逆もあるんだよね。最初に読んだ本が面白くて、作家買いしてくうちに「なんかチガウ…」と思うパターンとか。

冒頭からしばらくは、謎だらけです。
事件は次々に起こるんだけど、真相が分からない。
ひとつひとつ謎が解けていく過程で、「よく似た双子」であった二人が、「実はまったく違う個性を持つ」ということが分かってくる。
双子の片割れの一人称で進む小説なんですが、彼ははじめて知る色々な真実に驚き、焦り、そして、思春期むかえた二人の関係が過渡期であることに直面せざるをえなくなる。

ただし、このラストは、多くの腐女子にとっては地雷です。超がつくほどの地雷だと思います。バッドエンドとは言えないんだけど鬱エンド。
だから胸をはってオススメはできないんですが…。
なぜ櫂の身長がのび、舟の身長は止まったままだったのか、それを考えると悲しい。

2

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