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表題作飛天のごとく 上 初恋の巻

佐藤義清
藤原頼長

あらすじ

貴方の笑顔が胸にしみて――男と偽る姫の初めての恋!!
藤原頼長のもう1つの秘められた物語

上皇が実権を握る院政が行われていた平安末期。関白家の次男、藤原頼長は本当は女だったが、母の嘘で男として育てられ、性別を偽ったまま元服した。ある日、ふとした悪戯心で女装し、綾と言う名で佐藤義清に会う。綾に一目ぼれした義清に恋を知らない頼長も次第に心惹かれ、はじめて女でありたいと思うようになる。が、すべてを捨てる覚悟はできず……。そして、綾を頼長の愛人と誤解した義清は!?
出版社より

作品情報

作品名
飛天のごとく 上 初恋の巻
著者
宮乃崎桜子 
イラスト
浅見侑 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
X文庫ホワイトハート
発売日
ISBN
9784062865944
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中立

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趣味じゃない

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神率
0%

レビュー投稿数1

史実を元にしたBL……じゃない!?

時は平安時代後期。「悪左府」と呼ばれた公卿・藤原頼長と佐藤義清(後の西行)のラブストーリー。
と、普通にBLかと思って読んだらビックリ!頼長は実は女で、事情があって男として育てられたという設定でした。気持ちBL(体は女性だけど心は男)というものかな、と思い直して読みましたが…。

菖蒲若(女名は綾)は母の嘘で男として育てられました。母が亡くなった今、男であるという事実を知っているのは乳母だけ。実父に真実を告げる機会を逃し、元服して藤原頼長と名を改め出仕。さらには政略結婚で徳大寺実能の娘・幸子と結婚します。当然ながら妻とは床に入れないので、夫婦仲は冷え切った関係になりました。
ある日、気まぐれで女装した頼長は徳大寺家に仕える武官・佐藤義清と出会い、恋に落ちます。しかし、頼長は滅多に女装姿になれないので、なかなか義清と会えない日々が続きます。一方、義清は綾を頼長の愛人と誤解して、囚われの生活から自由にしてあげたいと望みますが…。

史実の藤原頼長が好きなので、このお話にはがっかりしました。
頼長に関して研究書を読んだことはないので詳しいことは私も知りませんが、明らかに事実と誤っているシーンがいくつか散見されました。また、史実の頼長像とこのお話の頼長にはズレがあるように思われます。

たとえば姫と結婚するとき。頼長は父・藤原忠実が結婚の話題を出したとき、驚き動揺して思い悩みます。「これが男として生きる苦難か」と(本に書いてあったセリフを要約)。
男の事実を隠して元服した以上、次にまっているのは当時の常識からして結婚のはずです。結婚しなければならないことは予測可能なはず。なぜそんなことも思い当たらなかったんだ、頼長?
とても「日本一の大学生」と学識の高さを称賛されるような人物に思えません。彼(彼女)が持っているのは怜悧な頭脳ではなく、考えなしでその場かぎりの行動力です。

恋愛面に同様のことが言えました。義清との恋は叶わないと分かり切っているのに。
分かっているけど夢中になって周りを見えなくなるほどの恋ならいいですが、このお話はひたすら淡々とした文章で、頼長の恋心にそこまでの熱情があるようには思えませんでした。たいした感情があるわけでもないのに恋の真似事をするのは、やっぱり考えなしだと思います。

4

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