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ーここって…
洋ちゃんが てっぺんから
飛び込みたい様な感じ?ー
滝壺へと いざなう鼓の音
盲目となった親友・雅美の
湯治場へ呼ばれた洋一郎は
鼓が 祀(まつ)られた
祠(ほこら)の存在を
知ることになるが?
※
これは最近、私がエックスで上げた、宣伝ポスター風イラストの文ですが、これで掴みはOKでしょうか(良ければ LIHIT(リヒト) @rehit1971 で検索してみて下さい)。
主人公は、攻めの洋一郎ですが、雅美を好きという以外、あまりBL要素がありません。高校生でありながら、年上にはちゃんと敬語を使える、爽やかな好青年(大人っぽいので)といったところ。絵的にも、当時の東山紀之さんに似ていて、聴き手にも、洋一郎が好きなあまり、雅美に嫉妬する人が続出。女子部分を刺激されるキャラ、といえるかもしれません。
かたや雅美は、洋一郎が綺麗と称するほどで、女子生徒にも騒がれていますが、本人自体は涼しい顔。無邪気で可愛い部分もあるのに、多分、洋一郎以外には見せていないーフラグですよね。三味線をやっていますが、家元から後継者を打診されるほどの腕前で、長唄をやっている洋一郎とは、文化祭の実行委員が共演させようと引き合わせて以来の仲。
それが夏休み、洋一郎へ一本の電話。目が見えなくなった雅美が、湯治場にしている山奥の旅館へ、来てほしいのだと言うー。
カセットブックは、この電話から始まっていて、彼らの高校や三味線の家元など、洋一郎のモノローグや雅美の話からしか出てきません。二人の会話劇と言っても過言でない作りなのですが、そこは当時から実力派の二人。
洋一郎役は、サッカーアニメ「キャプテン翼(初期)」の日向役・鈴置洋孝さん。雅美役は、野球アニメ「タッチ」の達也役・三ッ矢雄二さん。
二人も友人で、「しやすかった(演技が)」という三ッ矢さんですが、鈴置さんは病み上がりで、座って収録した分、抑え気味という評も。逆に私は、雅美に押されがちな洋一郎のイメージに、近づいたと思います。
そして、旅館のおばさん役は、「タッチ」で達也のお母さん役だった小宮和枝さん。「若いのに引き受けてくれて」という三ッ矢さんの話からすると、ほかのキャストもお声掛かりかもしれません。何しろ、花枕桃次名で脚本も書いてますから。今後、ドラマCDへ続く、BLボイスドラマの先駆けーとは、知っておいたほうがいい話です。
それから、旅館のおばあさん役は、ジブリ映画「風の谷のナウシカ」大ババ役の京田尚子さん。こぢんまりとした感じで、耳が遠いだけに、自由にポツポツと喋るさまが可愛いと、これまた人気がありました。
あと、冒頭のセリフですが、雅美は目が見えなくなってから正夢を見ているので、夢と同じ場所ならと、気遣っていたんだと思います。それなら、飛び込んでしまうからと。
これは、順に謎が解かれていくミステリー要素があって、しかも怪談なので、ここで全部話すことは、その面白さを半減させることになります。例えば何故、雅美の目が見えなくなったのか。湯治というのは表向きの理由で、実は色々考えたかった。なのに、それどころではなくなった。
ここには鼓塚という、鼓が祀(まつ)られた祠(ほこら)があって、滝へ身投げした白拍子の持ち物だったーとは、おばさんの話で分かりますが、そうなると自分が聴いているのは、その鼓の音?
洋一郎を呼んだのは、それを確かめたかったからーもあるんですが、驚異的なのは、鼓が聴こえると告白する長ゼリフ。
普通に喋っていたところから、夜、三味線を弾くとーと喋っているうちに、今、経験しているような気分になって、感情に押し潰され、おかしくなったと思われるのは怖かったと泣き出してしまうーその間の演技プランと言うか、ペース配分と言うかに、私は圧倒されました。
これに絵が付いていたら、多分、合わせられないのではないかと思う感情の起伏ーこれが、ボイスドラマならではのリアルさだと思います。
そんなわけで、話を知ったあとも、私は夏になると、このカセットブックを聴きたくなります。鼓ヶ淵ならぬ、沼にハマってしまったかもしれません。BLシーンはラストだけ、という奥ゆかしさですが、それならBL初心者にはもってこいだし、しっとりとした和テイストの美しい音楽など、カテゴリーに縛られてたら、聴けないだけ勿体ないですからね。ずっと我慢してたという洋一郎を、物足りないと思うか、いじらしいと思うかは、あなた次第ですよ。
ー了ー
とある海外コレクターのデータの底に埋もれているのを発見しました。
題名以外は何もわからなかった代物だったそうです。
1988年、歴史上初めてのBLドラマだと教えたら、持ち主もビックリ。
音は意外にしっかりしていて、とても30年も前の作品とは思えない!と感動しきりでした。
BLというよりは「匂い系」のミステリードラマといった風合いです。
長唄をやっている洋一郎は文化祭で女と見まごうばかりの雅美に出会う。
雅美は美しいばかりではなく、洋一郎がかなわないほどの三味線の腕を持っていた。
雅美は原因不明の失明で、東京から遠く離れた温泉へ療養へ行き、
洋一郎を誘った。その近くには「鼓ヶ淵」という淵があり、言い伝えによれば
その昔、白拍子が身を投げたという。
湯治場で日々過ごすうち、二人には不思議なことが次々と起き…。
起承転結がはっきりとせず、落としどころも曖昧ですし、
白拍子の伝説と、二人の想いがどうリンクしてくるのか????な部分もかなりありまして、話がどう転がるのかわかりにくい点は否めません。
JUNE期にありがちな、「同性愛」をテーマとした作品ではなく、
あくまで「耽美」な雰囲気を楽しむのが正解なようです。
ラブシーンは最後の最後にほんのさわりだけ…。
ただ、三味線の音色や、宿のおばあさんの演技、ときどき差し挟まれる音楽がとても味わいぶかく、真剣に悩みながら作った痕跡が見えます。
主演の三ツ矢雄二さんは、黎明期のBLCDで演じるばかりでなく、脚本(花枕桃次という変名を使っているものもある)、演出と大変重要な役割をされた方です。
ぱっと思いつくかぎりでも、「ぼくのセクシュアルハラスメント」「舞え水仙花」
「富士見二丁目交響楽団シリーズ」「間の楔」「アニマル×2」など、まさにBLCDの出発点に立つ作品の数々を世に送り出した方です。
三ツ矢さんは1980年代初頭に一般アニメでかなりの売れっ子だった役者さんです。その後、自身で劇団を作ったものの、興行収入が振るわず莫大な借金を抱えたとも言われていますが、そうした時期とJUNEカセットブックなどにかかわった時期とがどうも被るんです。
お金のために何でも手掛けたのかもしれません。
しかし、それがあったからこそ、今日のBLCDがのちに故・塩澤兼人さん、また当時はデビュー間もない三木眞一郎さんや森川智之さんをして「BLドラマは面白い!」と言わせ、多くの実力派役者さんがBLドラマに参入するようになったと言えましょう。
三ツ矢さん、本当にありがとう!感謝の気持ちは★5つです!
