この男から目を離せない――そういうところが面倒なんだ…。

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ぜんぶ、猫のせい~木蘭町の謎解き事件簿~

zenbu neko no sei

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表題作ぜんぶ、猫のせい~木蘭町の謎解き事件簿~

庚育真,28歳,イケメン高学歴の猫好き引きこもり探偵
五十嵐知可,26歳,元漫画アシスタントの家政夫バイト

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

『住み込みで、ある男とペットの世話をしてほしい』警視庁勤めの父から頼まれて、郊外の一軒家で家政婦のバイトをはじめた知可。家主の育真はイケメンで高学歴なのに“引きこもり”で猫だけを可愛がる残念な男だった。開店休業状態の探偵業を営む彼は、自信家で偏屈で傲慢で何かと知可を悩ますが、事件の謎解きになると秘められた人の想いを繋ぐ優しい顔をみせて??。

作品情報

作品名
ぜんぶ、猫のせい~木蘭町の謎解き事件簿~
著者
和泉桂 
イラスト
小椋ムク 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリア文庫
発売日
ISBN
9784861346231
3.6

(30)

(4)

萌々

(16)

(7)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
8
得点
107
評価数
30
平均
3.6 / 5
神率
13.3%

レビュー投稿数8

ゆるめの恋愛ミステリー

和泉さんの作品は自分の中で評価が分かれるんですが、これはかなりの当たりでした!
キャラクター同士の関係性もストーリーもどちらも面白かったです。

ゆるい「日常の謎」を解きつつ、ラブストーリーが進行していきます。
ひねくれ者の引きこもりの探偵×料理上手の元漫画家アシスタント というカップルで、二人のキャラや脇キャラがそれぞれ魅力的で、分厚い本なのにあっという間に読んでしまいました。

日常の謎はよく考えたらミステリーとは呼ぶにはぬるいところもあるのですが、謎解きが二人の関係を進展させる要素になっていて、意味のあるものになっているのが面白かったです。

それから小椋ムクさんのイラストがすごくいいです。ストーリーに合っていて、イメージがぐっと広がりました。表紙はほのぼのとしていて可愛いし、中のイラストはすごく色っぽくてステキです。
個人的にすごいと思ったのは春画を描いたイラストです。ムクさんの絵なのにきちんと浮世絵調になっていて、さすがだなあと感心しました。

シリーズとして続きがあるかはわからないんですが、この二人をもっと見ていたいなと思う作品でした。ぜひ続きを書いてほしいと思います。

6

木蘭町のシャーロックw

これ、すっごく気に入りました!
本は分厚いですが、グイグイとひきこまれてあっという間です。
実はぶっちゃけちゃうと、和泉作品のドラマティックロマンティック路線が超苦手なのです。
対してこの作品、ある街を舞台にして世界や設定が庶民的なのです。
多少変人みたいな人が主人公の一人として登場するのも楽しいですし、やり取りも面白い。どちらかというととても日常的なのでコメディタッチな様相も呈していて、ものすごく劇的な何か起きるわけでもない。
このちょっと違った出来事が舞い込むことでその日常に変化が起きて彼等の関係が進展していく。
こんな感じの小説、一般小説で腐妄想をする展開の作りに非常に近いそれをBL展開で実現した、そんな感じが受け取れます。
だからなのか、すごく引き込まれちゃったんですよね♪

漫画家のプロアシをしていた知可(ともよし)は付いていた漫画家がデジタル移行するのに激しいドライアイの為継続することができなくなり、職を失った時、警察官である父親から上司の弟の家の家政夫の仕事を持ちかけられる。
その相手が、自宅にひきこもりで探偵業をしているという二匹の猫を溺愛している育馬。
それまで3人の家政婦が来たが折り合いが悪くてすぐ辞めて行った後釜の4人目としてお試し期間の4週間を住み込みで過ごすことになる。
この家がある木蘭町を舞台にして、
この街から出たコアなコレクターが存在するという故・久保寺幸三郎という画家とその作品にまつわる人間が絡んで色々な事柄が発生しながら、知可と育馬が近づいていくというお話です。

今までの家政婦がダメで知可が大丈夫だった件。
胃袋を掴んだのも大きかったでしょうが、知可の媚びない歯に衣を着せない態度とモノ言いが一番でしょう。
育馬ですが、彼はチビとトラという二匹の猫を飼っています。
特にチビの体調が悪いらしく、彼が心配でひきこもりをしているという・・・ある意味変人かもしれませんw
この育馬も何だか猫みたいなんですよね。
ぶっきらぼうで、お前なんかいらないぞ、みたいなあからさまな態度を示す癖に、餌付けされたせいかちょっと慣れたら触ってもいいぞみたいな態度を示す猫みたいな。
偉そうに接近を許すみたいな?
漫画家のアシスタントをしていたから、探究心も旺盛だったりする知可という姿もあったからかもしれないですが、一番大きかったのは、近所のご主人がゴミ出しをしていた。
その姿について二人で推理議論を戦わしたこと。
これが心を許す一番大きなきっかけだったと思います。

この育馬、引きこもりですがネットで情報を沢山仕入れている。
そして観察力が鋭い、相手の様子から推理を導き出している姿、某BBCのシャーロックか!?とか思っちゃった!でも~ちょっと影響されてるキャラかもしれないですね(というか…)w
そして、事件とか色々な出来事は夜の時間をもてあます知可がバーのバイトを始めたことからです。
そこであった出来事から、出会った人の事を知可が育馬に話すことで発展していくという。
天然石のブレスレット、春画、その影にちらちら見えるコレクターの影。
ラストでその男はフェードアウトしますが、何やら怪しげな人物でしたから。今回は画商と名乗っていましたがどうやら本当ではないような。
とても大きな事件とか事故とかそういうのではありませんが、あれ?ひょっとしてこれってシャーロックでいうところのモリアーティ教授に・・・?
この先、シリーズ展開しそうな予感を残してこの話は一応の終わりをしております。
きっとシリーズ化されると思う。

キャラクターに萌えを感じることはなかったのですが、人間性や関係性やお話としては充分に魅力的。
木蘭町のホームズとワトソンみたいな組み合わせなのか(笑)ということでこの評価です。

9

サクサク読める日常系ミステリ風味の作品♪

面白かったです。
あとがきにもあるようにあくまで「ミステリーっぽい」作品で、
すごい難事件やトリックはないのですが
一つ一つの謎に、またそれらを推理する育真の姿勢にドラマや人情味があって
なかなか読ませます。
北村薫さんや坂木司さんなどの日常系ミステリがお好きな方にオススメしたい世界観。


バイトの家政婦・知可が日常で感じたささいな謎を
家主・育真がネットスキルと博識を活かして鮮やかに解決していきます。
猫を愛するあまり家に引きこもりがちな育真ですが
気になる謎が絡むと積極的に外出もする行動型の探偵で、
思ったほど奇人・変人でない男前でした。
(猫と戯れる様子や天然な言動に可愛いところはありますがv)

舞台となる木蘭町は"文学のまち"三鷹がモデルだったりするのかな…?
(関東大震災以降、詩人たちが移り住んだ…というエピから連想)
この昔ながらの商店街が残るレトロな町で起こる数々の謎は、
古い本屋や江戸時代の春画など、どことなくノスタルジーな味わい。
しかし懐古趣味というわけでもなく、
ネットを駆使する育真の推理法や、第4話のプロジェクションマッピングのシーンなど
新しい技術を取り入れつつ古いものを大事にしていこうとする登場人物達の姿勢が
興味深いし好感がもてました。


また、BLとしても、互いが好意をもつ理由付けが割としっかりしていて良かったです。
知可の育真の推理に異を唱える気の強さ、優れた記憶力・観察眼などが
育真の知的好奇心を刺激したことは想像に難くないし、
今まで他人に興味がなかった(らしい)知可が
色んな意味で好奇心を刺激される存在・育真に出会い
会話や観察、謎解きを通じて惹かれていく様子も自然でした。

育真と知可が公私ともにコンビを結成し
探偵モノにつきもののライバル/犯罪者キャラも登場したことですし
シリーズ化したら面白そうな作品だと思います☆

5

シリーズになっても面白そう

愛猫が心配で引きこもりになった変人気味の探偵と家政婦のバイトを引き受けた
元マンガアシの知可とのほのぼのとした人情風味ありの穏やかラブストーリー。

知可がお試し期間の家政婦バイトから、同居人になり相棒に格上げになって
恋人同士になるまでと、育真の派手さはないけれど、的確な推理で身の回りで起こる
事件を解決していく探偵ものと言う側面もあって面白い。
育真の人慣れない感じが次第に知可に心を開いていく様子も微笑ましいのですが、
ストレートな愛の言葉が無いことで後半でちょっぴりすれ違い気味になるけれど、
もどかしい程不器用な愛情表現がしっくりハマる二人でしたね。

探偵には相棒が必要で、知可がそれに就任したし、何やら謎に満ちている敵も現れ、
一応今回は育真たちに軍配が上がって終わりましたが、なかなかヒネた雰囲気もあり
敵とはいえ、そこそこいい味出していたのでまた二人に何かで絡んでの続編を
期待してしまいます。
今度はしっかり探偵と相棒のコンビで本格的な謎解きなんかも読んで見たいです。

5

ほのぼのミステリー風味。

和泉さんでは個人的に珍しい当たりでした。

私にとって和泉さんは基本的にメロドラマ作家なんです。
そして大変申し訳ありませんが、私は『メロドラマ作家』としての和泉さんは好みじゃない。人気のある作品ほど苦手度がアップするというくらいです。

つまり、ほとんどの作品は合わないんですよ。作家買いは決してできないし、たまに新作買う場合もすごく迷います。

和泉さんの作品は数十作拝読しましたが、正直言って再読したいと思ったのは『お気に召すまで』と『七つの海より遠く』だけです(そしてこの2つは繰り返し読んでます)。←しかし、よりによって和泉さんでこの2つ・・・好みの辺境っぷりに我ながらどうなんだと思わなくもない。

そしてこちらが『再読したい』3作目になりました。

私は和泉さん作品では『ゆるい○○風』は好きなんです。今作は『ミステリー』なんですね。
もともと、ゆったり・ほのぼの系統は好みなんですよ。H(描写)もたいして求めてないし。
だから、こういう雰囲気の作品はすごく好き。

ミステリーとのことですが、ゆるいというかまさに『風味』です。ちょっとした日常の謎があって、それを推理で解決して行く。

何よりもこの構成が上手いな~と思いました。
ミステリー面は軽い『風味』程度だからさら~っと読みやすいんですが、本格的とは言い難いので(『本格』を望んでいる訳ではありません)、それぞれの謎だけで1冊引っ張るのは無理がありそうです。

でも『ミステリー』の部分は章立てでオムニバスっぽく(全体を通じて根底に流れるものはありますが)繋げて行く形式で、ひとつひとつは小粒でも薄味でも物足りないと感じない。

その上でラブ面は少しずつ進展して行って、どちらも楽しみながら読み進められます。

まあ、育真(攻)が探偵らしいと言っていいのかわかりませんが、なんとも掴み所のない変わったキャラクターなので、キスや何やの行動があまりにも唐突で脈絡が無さ過ぎて、知可(受)もワケわからんだろうな~という感じはしました。

でも、育真は確かに思考や行動形態は独特でわかりにくいかもしれませんが、(私のものすごく苦手な)俺様でも傲慢でもないので、まったく苦手・イヤではないんです。読んでるうちに慣れればなかなかいいキャラクターだと思えます。

分厚い割には山も谷もなく平坦なイメージなんですが、それでも退屈させないのはさすがです。とても面白かった。

なんというか、新シリーズの導入(設定・キャラクター紹介)のようにも受け取れます。実際に続くかどうかは別として。

うん、ホントこれはよかったです。個人的にすごく好きな和泉さんでした。

もっとこういう系統を書いてくれたら是非読みたいんですけどね~。
土台はきっちりしてる作家さんなので、設定や何かが好みに合えばハマるんですよ。←私は、和泉さんの基本的な作風(好んで書かれるキャラクターやシチュエーション)がもうダメなんです。残念ながら。

4

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