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表題作傍に在るなら、犬のように

須藤恭二,32歳,ヤクザな家主
杉浦伸幸,15歳,中学3年生

その他の収録作品

  • あとがき
  • 須藤家見取図

あらすじ

施設を出た伸幸に、手紙と地図だけを渡して、母親はまた消えてしまった。地図をたどった先には、ある一軒家が…。そこは、名字も歳もバラバラな住人たちに、ヤクザな家主、オカマの家政婦もどきが一家団欒している変な家だった!しかもそのヤクザ―俺の親父だって!?流し目の似合う男っぷりのいい父親に、ひねくれ少年・伸幸のドキドキな居候生活がはじまった。

作品情報

作品名
傍に在るなら、犬のように
著者
魔鬼砂夜花 
イラスト
大黒屋りんご 
媒体
小説
出版社
プランタン出版
レーベル
プラチナ文庫
発売日
ISBN
9784829622025
3

(4)

(0)

萌々

(0)

(4)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
4
得点
12
評価数
4
平均
3 / 5
神率
0%

レビュー投稿数4

隠された過去にあるもの……

 母親に連れだされ施設を出た伸幸は、手紙と地図だけを渡されると、また、母親とはぐれてしまう。その地図の通りに伸幸が行くと、不思議な会社に辿り着き。
 そこにいた人に、あっという間に名字も歳もバラバラな住人達の住む家に連れて来られてしまう。
 手紙に書いてあったのは、そこにいたヤクザな家主が「父親」だということで、そこから奇妙な居候生活が始まる。

 最初、ダメな母親を持ったばかりに、施設に預けられ、また引き取られて、血の繋がらない父親から暴力を受けたり……また、施設に預けられて……ということを繰り返していた伸幸はまるで、傷ついた猫のようだったけど。
 だんだん、心を開いて行く様がよかった。
 そこに住んでる名字も歳もバラバラな住人は、それぞれ、過去に傷を抱えてて。
 こういうのきっと、「傷の舐め合い」だとか言うんだろうけど……
 それでも、こういう作品は好きです。
 別にそれでもいいじゃない!! って、本当にそう思う。
 だって、人間にもそういうことって必要だよ!!
 そして、あんまり心を動かさないように、信じないようにってしていた少年が、ちょっと心を動かされて、ちょっと他人を信じたくなって、ちょっと信じて、ちょっとわがまま言えるようになって……
 ってしていく様は、本当に素敵でした。
 BLだとか、BLじゃない異常に胸に沁みるものが確かにありました。

 そして、最後には、警戒心丸出しだった少年が「犬になりたい」って言ったのは、ちょっと切なかったけど、嬉しかったような、複雑な気持ちになりました。
 それで、本当にワンコみたいで、キュンってきた!

 タイトルから、ちょっとハードな内容を想像していたのですが、そんなのではなく、しっとりした落ち着いた感じの話でした。

 とってもいい作品でした!

1

初めて触れたあたたかさ

家族愛がメインのBLです。
大丈夫大丈夫と気構えて読んでいたにも関わらず、受けの健気さにふいに泣かされた本です。
攻めの顔が強面で墨や真珠も入れていますが、家族が極道なだけで、かろうじてヤクザではないです。
建設会社の社長で、寮に皆を住まわせています。

強面の家主・須藤恭二(32)包容力硬派攻め×中学生・杉浦伸幸(15)意地っ張り健気受け
新しい男が出来る度に母に捨てられて、施設に行くのも一人になるのも慣れっこになっている。
母親から須藤のもとに行けと手紙をもたされて行った先には、不動産屋で働く定信がいた。
家を世話されるのかと思いきや、連れて行かれた所には個性豊かな面々がいて。
ナンパ男の純貴、元気系の悟、小学校位の美少女の花梨、オカマのユミ。
極めつけは、大柄で強面のヤクザみたいな男がいて、それも自分の親父だと言われて。

ヤクザみたいに怖い男に怯えていたのに、絶対におまえを殴らないと真剣に誓われ、初めて会ったにも関わらず、伸幸の事を信用して守ってくれたことから惹かれはじめます。
でこぼこの家族のような皆も優しくて、初めて人の温かさを知ります。
新年に願うことは、卒業するまでここにいさせてくださいで。
ここまで世知辛くていいのだろうかと思ってしまう位、平凡でつつましい願いです。
幸せにしてあげたい、なって欲しいと心から思います。

男と別れた母に引き取られてまた捨てられて、伸幸が独りの部屋の中で思う事は、犬になりたい。
犬なら待つなと言われても、ずっと待っていられるから。
人間の伸幸は理性と打算と生存本能があるから、待ってはいられない。
本当はずっと待っていたいのに、そんなことを願ってしまう伸幸がいじらしくて切なくて、たまらない。
いままでの伸幸の孤独な人生を振り返らずには、いられなかったです。
15歳の子がここまで思ってしまう程、心に入れてしまった気持ちが温かい人が恭二で。

受けが15歳だし、無理にエロシーン(受けをイかせるだけ)は入れなくてよかった気がします。
そこだけ、ちょっと取ってつけた感があるのが気になりました。
愛情をわからせるように、ただ力強くぎゅっと抱きしめてあげて欲しかったです。
父親不在の家庭なのでファザコンかもしれないので、もうちょっと時間と年をとってからでいいと思う。
家族は血のつながりでもなんでもなく、大事なのは互いを思い合う気持ちだと心から思わせられました。

エロ:★1 なくてもいい位です。
総合:★4 エロがなければ、★5です。血のつながりのない家族愛の温かさに泣かされます。

1

BLじゃなくても、良い話だった。

家族とは?
本当の親子の絆とは何か?
って考えさせる、普通にジュニア小説として、良い話だった。

女としてしか生きられない、身勝手な母に、何度も捨てられながら、それでも、子供は親を選べないと、自分の境遇を諦め、受け入れてきた伸幸。
手紙と地図だけを渡されて、尋ねていった先にあったのは、血縁よりも情に溢れた、何とも暖かい所で、、、
それまで、境遇に、ただ押し流され、やり過ごす事だけで生きてきた伸幸も、恭二やユミ矢他のみんなとの短い生活の中で、この場所にあり続けたいと思うようになります。
この家に集まっただれも、血縁に翻弄されてキズを負った過去があったりして、人間の表面から見ただけではわからない部分を知り、ますますその思いを強くするのですが、、、

伸幸が、自分がこの家によこされた理由を知って、もうここでは暮らせない、自分が犬ならよかったのにと、事務所の仮眠室で一人泣く場面が切ないです。
そして、そんな伸幸を一人そっとしたまま、階下の事務所で朝まで待ち続けてくれた純貴。
翌朝、行方が見つかった伸幸の母の所へ純貴につれられて行った伸幸は、結局恭二の家を出て、母と暮らす事を選びます。

と、この辺まで、全くBLである必要のない、普通によくできたジュニア小説です

この後、恭二が伸幸を迎えに来てくれるのですが、一応、ここでBL展開に。
伸幸はまだ中学生、対して恭二は背中に錦鯉、逸物にパール。
さすがに一気にどうにかなったりはしません。
恭二の家に帰って、一緒に暮らすようになっても、多分、後数年は、恭二おあずけ生殺し状態のままでしょうね。

1

みんな暖かい

初読み作家さんです。
「ヤクザ・裏社会」のキーワードで見つけた作品だったと思います。
事前の情報は全く何もなかったので(表紙だけしか見てません。あらずじも読む前には読まないので)、特に何も期待せず読み始めたのですが、なかなかどうして、良かったでございますよ。^^

主人公はもうすぐ中学を卒業しようとしている15才の少年、伸幸君。
彼はまだ15才だというのに、しょっちゅう子供を置いて男の元へ走る母親のせいで施設に預けられたり、自分で生活する術をなんとか探さないといけなかったりと苦労しているのですが、とても健気で泣けてきます。
何度も裏切られているせいで多くを望まず、人の言葉もそのまま信じることが難しくなってしまった哀しい状況なのですが、そんな彼がいきなり全く知らない人達の中で暮らすことになるお話です。
そこの住人はバックグラウンドがそれこそ色々なのですが、口が悪かったり少々乱暴だったりする割に暖かい人達ばかり。
まるで家族のように暮らしている彼らの関係がとてもいいなと思いました。
それぞれ何らかの痛みを知っている人達が他の人に優しくなれるって素敵です。
恋愛度はちょっと低めだと思うのですが、この後はきっと攻め様が受け様をすごく甘やかしてラブラブになるんだろうなという予感を感じさせるラストだと思いました。

0

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