この作家に聞きたかった

紹介文

2011年はすでに3冊の小説をリリース、12月22日には新刊もひかえている成瀬かの先生。商業のほか、同人では「加藤ショコラ」名義でも活躍してらっしゃいます。今回は“ショコラ”つながりでもある心交社から出版されている作品を中心に、お話をうかがいました。



Q. 成瀬先生は出版社からリリースされる商業作品のほか、同人でも多くの作品を発表されていますね。先生の中で、商業と同人の住み分けというか書き分けというか、ボーダーラインの基準を教えていただけますか?

A:同人は自分が書きたいものを書くだけなので、プロットも立てずどうお話が終わるのかもわからないまま、その時思いついた萌と勢いだけで書き進める事が多いです。ページ数も最後までわかりません。

商業誌で書かせていただくようになってからは、同人ではファンタジーとか両性具有とか奔放な受とか、商業では書かせてもらえなさそうな題材に偏ってきています(商業番外除く)。

商業は自分一人だけ満足すればいいものではないので、買ってくださった方に楽しんでもらえる事を第一に考えながら書いています。

Q. ホームページに掲載されている作品の更新頻度を見ると、成瀬先生は常に書いてなきゃいられない人なのでは……? という印象を持ちました。実際はいかがでしょう?

A:最近は再掲載ばっかりで本当に新しい更新はできてないのですが、確かに書いている時間は長いかも。暇だとなんとなくPCの前に座ってしまいます。

Q. 同人では、加藤ショコラというペンネームで活動してらっしゃいますが、くしくも同じ名前を持つ「小説ショコラ」に作品を発表されるときは、どんなお気持ちでしたか? 心交社さんからオファーがあったのでしょうか?

A:いえいえ私は投稿組です。といっても、まじめに投稿作品を書いていた訳ではなく、同人やサイトで発表したものが募集規定にあえば送ってみるという感じでした。

2012年の春頃に心交社さんから出していただく予定の『愛がない』がお仕事をいただくきっかけとなった投稿作品です。

「小説ショコラ」に初めてお話を載せていただいた時は嬉しい気持ちより、ちゃんと水準に達した作品を提出できたんだろうかという不安の方が勝っていました。面白くなかったらどうしよう、これが最初で最後かもなーとか。

名前の「ショコラ」がかぶってしまったのには、しまった! と思いました(笑)。投稿だから予想して然るべきなんですが、まさか通るとは思ってなかったので。まだ書かせていただいているなんて、当時の自分が知ったらびっくりしそうです。

Q. では、「加藤ショコラ」「成瀬かの」それぞれのペンネームの由来、込めた思いなど、聞かせてください。

A:「加藤ショコラ」はスイーツの「ガトーショコラ」をもじって作ったペンネームです。

それぞれお菓子にちなんだペンネームをつけて、ちょっとした企画ものをやろうと盛り上がった時に、友達と考えました。結局企画は流れて友人たちのペンネームが使われる事もありませんでしたが、このペンネームはすごく気に入っていて、ずっと使っています。

「成瀬かの」はどうやってつけたのかすら全く覚えていません。実は改名したくてうずうずしています。

Q. 心交社からの第一作『若と馬鹿犬』には、ストーリー冒頭からヤクザの若頭である御門(みかど)が、部下の朗(ろう)に組み伏せられながらも感じてしまうシーンがありますね。この描写がとても異様というか、真綿で絞められるようなHシーンに、この二人の関係はどうなってるんだ! と衝撃でした。『若と馬鹿犬』の着想は、どんなところから得られたんでしょうか?

A:その前に書いたお話がなかなかキャラクターが定まらなくて手こずったので、同じ轍を踏むまいと、初めから壊れ気味のキャラクターをメインに据えようと決めてお話を作っていきました。

朗ありきのお話です。Hシーンも迷いなく、このキャラだったらこれしかないという感じで書き上げました。

Q. ストーリー後半では、御門と朗とは10歳くらい年の離れた可愛い大学生、美嗣(よしつぐ)が登場。「おお、これは年の差展開も……?」と一段と引き付けられました。先生はこれまで、年の差カップルを多く書いてらっしゃる印象があるのですが、『若と馬鹿犬』の同い年カップル、御門と朗は先生の中でどんな存在ですか?

A:基本的なスペックはものすごく高いのに、色々とダメな所が可愛いカップル。

年の差だとどうしてもどっちかが保護者でどっちかが被保護者的立場になってしまうけれど、あくまで対等にどつきあいつつ、支えあいつつ生きていける感じがイイ! と思っています。

Q. 朗はいろんな意味で犬だな~、と感じました。悲しかったり、忠実だったり、健気だったり。最後は「本当に、御門に会えてよかったね!」と、子犬を見守る犬好きのような気持ちになってしまって……。振り返るとストーリーには先生の、弱き者たちへの気持ちが表れている気がしたのですが、いかがでしょうか?

A:自分自身がダメダメな人間なんで、つい欠けた所のあるキャラクターに優しくしてしまうのかもしれないです。不器用な子とか、可哀想な子な程可愛いし、幸せにしてあげたいなーと思います。

Q. 続いて、ちるちるのユーザーの中では「アラブものだけどアラブじゃ無い」「アラブ苦手でも、このアラブなら大丈夫!」というような声が聞かれた『砂の国の鳥籠』。記憶を失った受のハルと、攻でアラブの王子であるイドリースとの関係を描きながら、ハルの消えた過去を徐々に読み解く展開が新鮮でした。このようなスタイルの狙いを教えてください。

A:すごく嬉しい感想ですが、おかしいな、自分では精一杯アラブものの王道を踏襲したつもりだったんですけど……!

記憶喪失にしたのは、資料をあたってみたらアラブ世界が思っていた以上になじみのない文化を持つ社会だったので、何も知らない読者と同じ視点でお話が進んだ方がわかりやすいだろうと思ったのと、攻がお世話する、無邪気な“らぶらぶいちゃいちゃ”なシーンがいっぱい書けそうだったからです。

Q. もうひとつ、『砂の国の鳥籠』でとても印象的だったのが、物語の最後を飾るHシーンです。多くのページに渡って描かれていて興奮したのはもとより、それまで重なってきた謎解き要素や恐怖感、すれ違いなどが最高潮に達して、一気に物語が展開した後のH。おいしかったです。『砂の国の鳥籠』も含め、成瀬先生のHシーンに対するこだわりなど、ぜひ教えてください。

A:ひたすらエロく! そんな中にもキャラクターの切ない心情が滲み出てくるようなH! が理想だと思っています。

Q. 12月22日にリリースの新刊『女王陛下と跪く男』は、どんな作品でしょうか? 執筆前の構想や、執筆中の心理状態など、裏話的なこともうかがえたら、さいわいです。

A:『女王陛下と跪く男』はタイトルも受の名前も変えましたが、昔サイトに載せていた短編連作がベースになっています。最後まで書き上げられないままサイトからも下ろしてしまいましたが、自分でも気に入っていたお話でいつか完結させたいとずっと思っていました。

昔の作品を見ていただいて編集さんにOKいただいたのはいいのですが、当然ながら短編連作は繋げれば長編になるというものではないのです。バランスよく構成を直さねばならないけれど、そうするとお気に入りだったシーンを削らねばならなくなったりする。

涙を飲んでいじくりまわしているうちにお話の肝を見失ってしまったりしてすごく苦しみましたが、満足いくお話に仕上がったと思っています。

内容はタイトル通りですが、タイトルから受けるイメージからは程遠いかもしれないです。女王陛下は男性で、ちゃんとBLです。女装癖とかもありません。ツンデレです。

リーマン×ショップ店員で、どうしようもないダメ人間が出てくるお話です。

Q. 今後、チャレンジしたいと思ってらっしゃる作品や分野は? 抱負など交え、聞かせてください。

A:ファンタジーです。人外とか異世界トリップとかが大好きなので。BLではあまり見ないのが淋しいですが……。

Q. 最後に、ちるちるユーザーのみなさんにメッセージをお願いします!

ありがとうございました! 私がお話を書かせていただけるのも、ひとえに本を買って下さる皆さんがいらっしゃるからこそです。これからもより精力的に頑張っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします!

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