受けは蛮獣と忌避される霊獣を持って生まれ、幼い頃に王命で国を追放される。攻めは、幼少期にはどうすることもできなかった無念さを抱えながら、受けを取り戻すために執念で力をつけていく。受けを宮殿に迎える為に周りに頭を下げる様子が感動的。巧みに伏線を貼りつつ、回収しつつ、テンポよく話は進み、退屈なシーンは一つも無く、あっという間に読んでしまった。小山田あみ先生の描く竜がド迫力でとても美しいです。右宰相家、左宰相家という対をなす設定ゆえ、あまり対格差の無い2人が霊獣と共に並び立つ絵も見て見たかった(作画カロリー高そう)。初読の作家さんだったんですが、遡って他の本も読んでみたいです。
個人的萌えポイント
①本音が霊獣の様子からダダ漏れになる
②霊獣の声が渋い(ウヌ・ヌン)
③攻め受けであまり対格差が無い(少数派?)
侵略戦争を続ける帝国の方針を嫌い、チート級の魔術の力を持ちながらも鷹爪を隠して生きる受け。貴族でありながら安酒場を流していますw 捕虜となった攻めの世話をするうちに心を通わせますが、やがて戦闘力の高い攻めを手懐けて、戦場へ行けと命じられてしまいます。最後はハピエンで楽しく読了しましたが、どことなくスッキリしない印象があるのは、これだけのチートがありながら、国をひっくり返すこともせず、うまく逃げおおせるという結末のためかもしれません。この点は好みが分かれそうです。受けは厭世的でやや受け身な性格。エヴァのシンジを思い出しましたw 攻めも、どっしり動じず受けに寄り添うタイプ。当て馬の王子も王子というより宰相タイプで、主要キャラが揃って「静」のタイプなので、コントラストがやや弱めに感じられます。もし続刊があるなら、攻めの滅ぼされた国を立て直しつつやり返す展開も期待できそうで、その可能性を考えながら読むのも楽しいです。
腰巾着というパワーワードに惹かれて、レビューの評価が高かったこともあり読んでみました。一瞬、執着系ジャイアンと美貌のスネ夫みたいな話を思い浮かべましたが、ドラえもん味はありませんでしたw
姉の創作世界に転生し、自分がペン入れしたキャラの幼少期になってしまう。総受けの運命から逃れる為に、すったもんだする物語。後半の山場で、主要サブキャラとはいえ第3者がちょちょいで解決させるのが惜しい。面白い舞台設定なので、もう少しストーリーラインのディテールが練られていたら、さらに楽しく読めたような。1巻で完結の感じはあるものの、次巻があるようなので楽しみです。
ゲームの世界の臨場感がとても高く、小説ならではの面白さも加わっています。
WEB小説らしい自由な文体で書かれているのがユニークです。
主人公だけに謎のフラグが立ち、次々と特別なクエストが現れる展開にワクワクし、没入感の高いゲームをプレイしているかのような感覚で一気に読んでしまいました。
序盤早々にお気に入りのNPCから口説かれます。話が早いw
このゲーム内のNPCは、主人公から見ると感情を持った人間のように描かれており、映画『アバター』のナヴィ族を思い出します(見た目はナイス筋肉のイケメン)。人間プレイヤーが死んでも復活できるのに対し、NPCは一度死んでしまえば二度と戻れない―この設定が興味深く、意味深だなと感じます。
NPCの攻めと恋に落ちた主人公が、この先どのような運命を辿るのか。
2巻を楽しみに待ちたいと思います。
三日月(1巻)・満月(2巻)を含めの感想です。ネタバレあり。
元皇太子という立場から得た国政の知識とカリスマ性を発揮し、貧しい領地を立て直していく主人公(受け)。困難に前向きに取り組む姿は清々しく、日本に於いても歪なナショナリズムが目立つ時代だからこそ、為政者・軍人・国民の有り様を描いた意義深い作品だと感じました。
BLらしく、惜しみなく愛に満ちた生活もふんだんに描かれています。
安っぽい正義を振りかざすのではなく、「敵を殺す」、それが戦争なのだと綺麗事を排した描写には説得力があります。終盤の死別については、個人的にはやや地雷。年を重ねるほど、死に際に接する感情は人と共有できるようでできない、とてもパーソナルなものだと感じています。とはいえ全体の評価は変わらず、神作品だと思います。
前国王陛下に仕えたタージェスが、崩御した陛下の一房の頭髪とともに長い旅をするエピソードがお気に入りです。孫にあたる主人公と出会い、旅を終えるまでの物語。
月夜先生の他の作品も、大手プラットフォームで読めるようになることを切に願います。
攻めの顔が異常に良い、という一点以外にBL的な萌え要素はなく、内容としてはDV夫にただ耐え続ける絶望の嫁のようなエンディング。読了させるだけの筆力はさすがお持ちですが、次回作を手に取るかと言われると正直微妙です。
神話好きや鬱展開に快感を覚える層には刺さるかもしれませんが、BLである必然性はあまり感じられませんでした。ジャンルとしてはホラーが最も近い印象。ホラーには怖さと同時に面白さや芸術点も求められると思うのですが、そのあたりは物足りなかったというのが率直な感想です。
神に蹂躙される怖さと快感を描きたかったのかなと感じましたが、そういうニヒリズムに時間を使わないようにしてるので、これ以上はお付き合いできませんw