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いちかわ壱 

切なく仄暗い、異色の三角関係

バスケ部に所属する3人の高校生の三角関係を描いたお話です。
とはいえ物語の最初から既にカップルが出来上がっていることもあり、三角関係ものにありがちな「本命攻×主人公受←当て馬」の構図からは離れた、少し異色の三角関係ものと言えるでしょう。

受の冬真は失恋の度に泣きついてくる2歳年上の幼馴染、蒼に片想いをしており、ある日いつも通り彼女に振られて自分の前で泣く蒼を「自分がそばにいる」と慰めます。それをきっかけに蒼と冬真は付き合い始めますが、冬真は蒼の傷心に付け込むようなことをしたと気に病み、 「そばにいる」という言葉1つであっさり自分に乗り換えた(ように見える)蒼との関係を悲観しがちになります。
冬真の同級生で友人の槙は冬真が恋人との関係に悩んでいることに気付き何とか間を取り持とうと行動を始め、そこから蒼と冬真と槙の三角関係が動き出します。

視点が冬真・槙・蒼と移り変わる度に、それぞれのキャラクターやそれぞれの関係性から受ける印象が移り変わっていくところが、この作品の見どころの1つです。
真面目で考えすぎる余りに自分自身も蒼からの想いも肯定的に受け止められない冬真と、その恋愛遍歴も災いして移り気で捉えどころが無いように見える蒼。この2人の関係は互いに想い合い仲睦まじくありつつもどこか歪(いびつ)で、槙という第三者を介すことでその歪さが浮き彫りになっていきます。
一方、明るく真っ直ぐな性格で冬真に対する友情と恩義から蒼との関係を応援しようとしていた槙の心情も、2人に関わるうちに次第に変化していきます。

ネタバレを極力せずに感想を書くのがとても難しい作品なのですが、この作品はぜひネタバレ無しで読んでもらいたいです。
全体的に漂う雰囲気は切なく仄暗くはありますが、メインの登場人物たちが高校生なのもあって必要以上にドロドロしてはおらず、読みやすい作品だと思います。
BLとしても三角関係ものとしてもある意味セオリーを外した内容なので読み手によって受け止め方は様々だと思いますが、私自身はこの作品がとても好きです。Chara本誌の方で既に続編の連載も始まっているので、そちらの方も楽しみにしています。