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鮮やかな生活

待望の第4巻…素晴らしかった…。

他のレビューでも述べられているが、4巻はいわゆる濡れ場がない。読後、キスし…あれ?キスしたっけ?となるレベル。駿と実央ふたりのお熱いシーンを期待されていた方(特に久しぶりの新刊ですし)は、拍子抜けするかもしれないが、私はむしろそこがよかった。

ゲイカップル、婚約破棄、養子、鬱病…などなど複雑な事情を抱えている人たちを描いている以上一筋縄では行かないはずなのに、どうしてこんなにもすんなり読めてしまうんだろう…。自然も生活も人物もそこにあるモノをていねいに切り取って、嘘なく(フィクションということは置いておいて)伝えたいという姿勢が、もうすごい!(としか言えぬ)。
登場人物一人一人がちゃんと感情をもって思考して生きている作品だなといつも思う。

しかも今回は前巻から5年後のお話。
そして主に文のお話でもある。
文が思春期を迎え、なかなかにかわいらしい有様だ。その文を周りが「思春期ねえ」「反抗期ねえ」と微笑ましく若干面白がっているところがまた良い。文は彼なりに己が境遇をある程度は客観的に眺めつつ、抑えられない感情そのままぶつかっていく(よいなぁ)。
養子のかわいそうな子というレッテルが貼られ、その孤独に寄り添う家族…そんなシチュエーションがありそうなのに、この作品にはない。そういうところに好感を抱いている。
例えば、ブリーチかつイライラの文を見て「バランス的にあの位ブチ切れてる方がね安心じゃね」と駿が言い「まあふみはね確かに」と実央が同意する。サラッと読んだけれど、このやりとりはなかなかに鋭いと思う。養子である文の立場をメタ的に表現し、それとは言わない。
愛しているのよ、大事なんだよという雰囲気を醸し出さない。その代わり、文を一個人として尊重し案じている家族の在り方が小気味よい。

文が頑張るシーンが多いけれど、もちろんメインのおふたり相変わらず素敵に描かれている。5年が経って、どう始まるのかと思って開いたら…まさかのデカダン駿…?と思ってたら主夫の実央(イントネーション主婦の友)。上手いこと言えた(?)自慢ではなく、ほんとうにこの勢いが掴みの冒頭。この冒頭だけで色々理解した。圧倒的生活感。濡れ場がなくて当然だなぁと。
決心してふたりで故郷へ帰ってきた頃、実央は駿のために髪を伸ばし始める。しかし5年後、駿本人が長髪を見て「邪魔じゃないの」という。そして歳月の象徴のような実央の長髪を、駿がばっさり切る。
恥ずかしくなるような約束や形に見える愛情表現を持たなくてもいい関係。もだもだ期を緩やかに過ごした後の日常に愛が浸透しきったふたりがいとおしい。
余談だけど、BL漫画って散髪シーンが多い。いつか考察したい。

最後に作画について、コマ割りや吹き出し、擬音擬態語などが大振りになった印象を受けた。伝えたいこと魅せたい事柄がよりダイナミックに放たれている気がする。相変わらず表情が繊細で豊か。

同時発売の画集も買った。
映画公開も楽しみだ(前売り買った)。

文学作品の域に達していると思う

死んだら棺に入れてほしい作品筆頭。

どこまでが厚意でどこからが愛なのか。
数年前に購入して以来今でも頻繁に読み返す一冊。

簡単に言うと、顔見知り程度だった大学生二人の関係の変化を描いた作品。好奇心と親切心から始まった関係が、深まっていくにつれて(そんなつもり全くなかったのに)傷ついてしまう…心の機微を繊細に捉えている。
一度読んだだけではよく分からない作品だ。じっくり行間を読むことで、こういうことだったのかもしれないと気づかされる。こんなにも考察しがいのあるBL作品が他にあるだろうか…。

話している言語によって思考が変わる、みたいな説が確かあった気がするのだけど、それを思い出した。
飛田は真澄にとって宇宙人みたいで、宇宙人からすれば真澄だってそうだろう。自分の常識の範囲外の言葉、思考、出来事に対する反応が面白い。
例えば飛田は、真澄が風邪を引いた自分のところに差し入れを持ってくる優しさが分からないので差し入れをぞんざいに扱う。例えば真澄は、飛田から天文学の分厚い本を誕生日プレゼントとして投げ渡されるが、外国語で書かれているため読めずにパラパラめくって放置する。例えば、真澄が飛田と水族館にいることを楽しんでいても、飛田は真澄に帰路で虐めてもらっている時の方が嬉しそうで、真澄がそれに腹を立てて飛田の顔を蹴っても、飛田には快感になってしまう。読めば読むほど、はがゆい、じれったい、ままならない。
互いに投げ合ってはいる(かなり全力直球)けど、転がしておいて拾わないキャッチボールという具合。あるいは、自分にとっての好物が相手にとっての苦手な物、ではなくて石ころ(食べ物ですらない)みたいな関係性。
結局最後まで互いを理解することはできないまま終わる。ただし、受け入れることはできるようになる。それが愛だ、ってなるとチープに見えてしまうけれど、やっぱりつまりどうしようもなく愛だろう。自分がいること、相手がいること、相手のことを考えること、相手のことを考えて行動すること、この流れの描かれ方はほんとうに素晴らしいと思う。自分にとってはただの石ころだけど、相手はこれを好きで食べるのだから拾ってあげよう。だから真澄は飛田を虐めて快感を与えてあげるし、飛田は真澄にキスをして喜ばせてあげる。どうしようもなく尊い。

うまく所感を述べられないこともまだまだたくさんある。天文学と絡めた描写や、純粋にエロすぎる濡れ場、視点を真澄ではなく飛田に移すと……などなど。また読み直そう。
BL作品の枠におさめていくのはもったいないと思う。もっと広く読まれるべきだ(難しいけど)。

※ほんとうにどうでも良い所感(妄想)↓
人当たりも要領も良さそうな真澄。人の好き嫌いがはっきりしているマイペースな飛田。大学生あるあるを踏まえた勝手なイメージだと、飛田は出席日数ギリギリだけどレポートやテストはそこそこ良い評価を得るのでなんとか単位は落とさない(まれに出席日数足りずに落とす)講義室の割と前の方の通路側にぽつんと座ってるタイプ。真澄は基本真面目に出席するけど欠席のときは友人に代筆頼んだりテストは先輩から過去問流してもらったりしてフル単、講義室の後ろの方の真ん中あたりに友人たちと座ってるタイプ。