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性暴力に対する無理解を感じた

初めてレビューします。
今までレビューは好きな作品だけにしようと思っていたのですが、この作品を読み、どうしても書きたくなり、今回レビューすることにしました。

タイトルにもありますが、この本を読んで、作者の性暴力に対する無理解を感じました。

別に、BLはフィクションですし、レイプした相手と恋仲になることには(現実ではほぼあり得ないことだとしても)文句はありません。
ただ、この作品の書き方はあまりにも酷いのではないかと思いました。最後の方は、モヤモヤした気持ちで文字を追ってもあまり頭に入ってこず、何度か読むのをやめようかと思いました。

渓舟は、和希達に強姦されたことで、人を殺し、深く悔やんでいる司に、仕方なかったんだ、と言っていますが、渓舟自身が過去にしていたことへの反省は正直私にはあまり感じられませんでした。勿論、渓舟は攻めで、主要キャラです。作者も読者も肩入れするのはわかります。確かに彼は司に、お前の嫌がることはもうしない、と言ったり、反省しているような言葉を言ってもいます。しかしそれは、やったことの酷さを悔いているというより、愛する人を傷付けたことに対してだというふうに感じられました。彼は過去に、他の女性に対しても酷いことをしていたようですが、正直、その女性たちに対しても反省の気持ちがあるとは思えませんでした。

「俺はお前が好きだった……ひどいことっていうか、AVみたいなことはさんざんヤったけど、食い物にはしていない。俺はお前に売春なんてさせていないからな」
彼の冷酷さを描きたかったのかもしれませんが、それにしても本当に酷いセリフだと思いました。反省しているならこんな事言うでしょうか。渓舟や緒方や邦彦は、悔やむ司に、正当防衛だ、仕方なかった、といいますが、レイプしたりそれを笑ってみていたりしていた人間が何を言っているんだ、と思ってしまいます。

和弥に暴行をしたあと、
「和弥、あいつはあんなケガには慣れているはずだ。あいつの兄貴は家庭内暴力も激しかったから、お袋さんと和弥は何度も救急車で運ばれている。もしかしたら、あいつが一番打たれ強いかもしれない」
と司に言いますが、このセリフにも違和感を感じます。

渓舟や緒方、邦彦は、もう更正したかのように書かれていますが、私にはあまり変わっていないように感じられました。反省の言葉もありますが、彼がやったことに対して少な過ぎるように思います。反省の気持ちも、少ししかないように感じられます。レイプ加害者と被害者が恋に落ち、それによって渓舟のやったことが不問になっている印象を受けました。結局、彼らが守ろうと思うのは、自分が好きな人だけなんでしょうね。彼らは他者を悪く和弥や原に対しては酷く言いますが、自分たちのしていたことの重大さについては反省しているのでしょうか。

性暴力は、人の尊厳を傷付け、自分を許せないような気持ちにさせ、何年もそのことに囚われさせる、そんな卑劣な行為です。
最初の方に書きましたが、レイプ加害者と被害者が恋仲になることは、物語ですし、構わないと思っています。物語なので、必ず加害者が反省しなければならない、とも思いません。しかし、この作品には、司が渓舟に恋するようになる、言わば必然性や説得力のようなものが薄く感じられました。また、渓舟を未だに道徳観のないままの悪人、人非人として描くのではなく、まるで悪いことから足を洗い更正したかのように描いているというところも、性暴力に対する無理解を感じる原因だったと思います。他にも、司が当時されたことを思い出して頬を赤らめているシーンがありますが、そのような反応をする割には、司が性的なことや被虐的なことに強く惹かれる人物には思えませんでした。他の書き方、キャラクターの描き方だったら、違和感や無理解を感じなかったかもしれません。

フィクションだ、BLはファンタジーだ、という人もいると思いますが、フィクションならフィクション、ファンタジーならファンタジーなりに、現実に即しながらも説得力のある物語としての面白さ、突飛さ、もしくはこれはファンタジーだ、そういうものだ、と思わせるような、これまた説得力、そういう物が必要だったと思います。