最初に、この人は天才だ。と思いました。独特な世界感と登場人物の作り込みが巧みで、どうしてこんなにも心が抉られる程の絶望の中に愛と希望、そしてあたたかい話が書けるのかと驚きました。
不器用だけれど優しい青年ライチと子供に見えて成人している10くん。一見おにしょた?と見間違えますが、二人は5歳くらいしか年の差無いんですね。
最初は10くんとライチは恋愛に発展するのだろうか?ブロマンス寄りなのかな?なんて思っていたら、物語が進むに連れてしっかりBLしている…というか自然にどんどんと互いに惹かれあっていく描写がお上手で、愛に満ちている。
ライチの過去は胸が苦しくなる程辛くて、弟分のユタが亡くなるシーン、そしてライチの助けたかったのに助けられなかった無力さ、悔しさに感情移入してしまい涙が止まりませんでした。読み進めて、彼のトラウマは計り知れないものなのだと知った時、登場時の印象とは大分変わりましたね。なんて人間らしいキャラクターなのだろう。
10くんの方は産まれた時から地獄の中で生活していた背景を考えると、ライチが来てからの毎日に少しずつ幸せを覚えていくシーンが愛おしく、尊かったです。希望ファームでの惨いシーンは目を瞑りたくもなりましたがライチが居てくれて、10くんは結果幸せだったなと思います。ライチが居なかったらどうなっていたことか…考えるだけで辛いので辞めておきましょう。
希望ファームを脱出してから10くんが少しずつ外の世界を知って、どんどん精神的に成長していく姿が微笑ましいです。外の美味しい食べ物や親切な人々に触れて、ひと皮もふた皮も剥けていきます。
ライチも純粋な10くんに触れていくに連れて、本当の自分を取り戻していく感じが伝わってきて、この2人のCP大好きです。なんて可愛いらしいのでしょうか。
他の登場人物もそんなに多くはありませんが、魅力的なキャラクターばかりで、そこも好きです。
慈愛に満ちた神父さんや10くんに初恋を抱くネリネちゃんも可愛くて皆、幸せになってほしいです。
神父さんの恋人の牛人…気になります。純愛の香りがするので過去編を書いて欲しいです。
そして、ライチの弟分のユタとライチの短くもかけがえの無い時間が愛おしかったです。ユタの分まで懸命に不器用に生きるライチに胸が締め付けられましたね。
瑠璃色の花は時期的にネモフィラでしょうかね?今後、ネモフィラを見るとユタを思い出してしまいそうです。
花といえば、10くんとライチの庭に咲く向日葵。そして告白のシーンは忘れられないくらい印象的なシーンでした。なんて甘酸っぱい。この話を夏に読めたことは感慨深いです。
エロは少なめですが、心配せずともしっかりあるのでストーリーもちゃんとしていて、ラブラブエッチも読みたい。という方にはオススメしたいです。
もしこのレビューを読んで購入を迷っている方がいたら、読んでみてほしいです。
私は何度も読み返すくらい大好きな作品になりました。