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女性ボトムヘビーさん

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“隣の現場”で起きていそうなオメガバラブストーリー

作家買いプラス、「現場の推し」というパワーワードに期待値マックスで手に取った本作。うちの近所でもよく工事をやってますが、推しがいたら散歩がはかどりそうです。

海野先生の作品はお仕事ものが多いこともあり、隣の駅で起きてるような、身近に感じさせてくれるラブストーリーの印象が強いのですが、今回のオメガバ現代劇でも、その空気感があります。一般的にオメガバといえばファンタジーで、不憫環境からのし上がるシンデレラストーリーが多いイメージですが、本作では隣の工事現場で起きている物語のような、距離感の近さが魅力です。

受けが攻めにアタック(レトロ失礼)するお話は、元気が出るし大好物です。フラレたのに攻めを諦められず、より好きになってしまい、気持ちのままならなさに公園の椅子を叩き続ける受けが可愛そうなのにおもしろいw
受けのヒートの臨場感が凄いです。ヒートに伴って受けを覆いつくそうとする寂しさが胸に迫ってきて、ついうるっとします。

海野先生の描く攻めは、強いだけではなく繊細なところがあって、隙も弱さも見せてくれてキュンときます。俺を諦めるなと恨みがましい目で見てくる攻め、「好きだが!」とキレぎみに伝えてくる攻め、コミカルで可愛くてたまらなかったです。

親身になって話を聞きつつ視野を広げてくれるサークルの先輩達や、受けの変化に戸惑い、すぐには変われないけど、徐々に理解し寄り添ってくれる仲間たちといった、多様な人間関係も魅力です。
アルファやオメガに対して、"こうあるべき"と多くの人がとらわれていますが、「ベータの作ったオメガバ都市伝説」というフレーズは、ユーモアがありながらアイロニーが効いています。自分にとっての幸せは何かを問い直す、というテーマが通底にあります。

攻めも受けも、どこかおかしみを感じさせる面もありつつ、誠実に一生懸命生きていて、素敵な2人のラブストーリーでした。テーマとしてはきれいに収束しているんですが、2人が萌え萌えしいので、もう少し読みたい感じではあります。出産育児編とか、社会問題のど真ん中でもあるので、海野先生がどのように描かれるのか読んでみたいです。

本編はモダモダすれ違いBL、スピンオフはお仕事活躍系

本編は、不器用な2人のモダモダ恋愛を描いたお話。
特別な障壁があるわけではなく、本来なら問題なく進みそうな関係性なのに、互いの勘違いとすれ違いによって、なぜかうまくいかないまま足踏みが続きます。
嫉妬にかられて受けを抱こうとする攻めに、やっと抱いてもらえると受けが期待したところへ、突然我に返る攻め。こうしたすれ違いが繰り返され「なんでやねん」と思わされる場面が何度もありましたw

この作品の軸は“言葉足らずによるすれ違い”なんですが、個人的にはこのタイプの展開があまり得意ではなく、イライラが萌えを上回ってしまうことが多いです。
アンソロジー作品のため、尺の制約上シンプルな構造になりがちなのは理解できますが、長編のような感覚で読み始めると物足りなさや戸惑いを感じる人もいるかもしれません。

一方で、メインカプの長男レイを主人公にしたスピンオフは楽しめました。アルファばかりの家族の中でベータとして生まれた彼が、自分の立ち位置に悩みながらも、得意な算術を活かして懸命に役立とうとする姿が胸を打ちます。彼の個性に目を向けて、道を示そうとする親の描写も良かったし、攻めも一途で素敵です。
こちらのスピンオフは、物語としての前進感があって読みやすさにつながっていたように思います。

全体としては、ライトで読みやすい作風が特徴的な一冊。すれ違いによるモダモダ展開を楽しめるかどうかで、評価が分かれそうです。読みごたえを期待する読者には少し物足りなく感じるかもしれません。

傾国のごときお師匠様と、総受けエンドの難しさ

攻め5人の総受け作品ながら、エロ以上に萌え溢れる本作。いったい、どのように風呂敷を畳むのか…と期待と不安が入り混じる中で正座待機していた第2巻。

かつて最強を誇ったお師匠様・翡燕が力を失い、人間的な魅力と精神的高潔さだけで周囲を魅了していく姿は、戦司帝というより傾国と紙一重という印象。周囲を狂わせ、翻弄し、結果として国や勢力を動かしてしまう、絶対的ヒロインのようなポジションです。

ネタバレですが、みんなが翡燕に力を貸すのは、彼の人柄ゆえではあるものの、最終的にレジェンドがオセロの盤面(比喩です)をあっさり全部ひっくり返して終わった…というような展開です。終わってみると、絵的に受けはひたすら血を流すか寝込むかしてる姿が印象に残り、構造上仕方がないのですが、個人的な好みとしては少し物足りなかったところではあります。弱く可愛くなってしまったお師匠様、という設定なので仕方がない点ではある。

本編終了後に怒涛のエロ展開が始まるという、中華BLっぽい魔道祖師方式です。最終的に5人を全て受け入れるのだけど、みんな番です、というのは個人的にやはりもやもやが残る…かといって、1人に絞るのが正解かというと、そういうことでも無く、やはりこの作品ならではの難しさを感じました。意欲作であるのは間違いがなく、美しい神々の物語を見るようではあります。

本作での笠井先生のイラストは、とにかく神がかってて、壮絶に美しいです!!1巻と2巻の表紙をポスターにしてほしい…

無垢な王子に翻弄される辺境伯…!

作家買いです。輿入れの日、雪積もる城の門前で受けが待ちぼうけをくらってるところへ、大きな体の辺境伯が犬ぞりで登場するオープニングが印象的です。
2年の結婚期間の内に熱病を治療した後、故郷に戻り妖魔の贄になる予定の受け。無垢でうぶな王子が生贄になる運命という王道の設定ながらも、さすがベテランの文章は読みやすく、ぐいぐい引き込まれて一気読みしました。受けが無垢ゆえの無自覚さで、攻めを萌で殺しに来て、攻めが必死に耐える感じ。佐竹先生、あざとい。。。!と思いつつも、とても良くてw 読者のツボを的確に押してくるのが見事です。

終盤、年の差を理由に尻込みする攻めを、受けが「ジジイぶるな!」と焚き付けるシーンが、とても愉快・爽快です。自分に課せられた役割以上の成果を上げ、自分の欲しいものを手に入れた受け。読後感良く、満足度の高い作品でした。佐竹先生の作品はほぼ毎年読んでいますが、どんどん面白くなってるような気がします。次作もまた楽しみです。

ノリが刺されば最高に楽しい、コメディBL

受けの王子が攻めを一方的に婚約破棄するオープニングから始まり、やがて王族らしからぬ日頃の行いを問われて、廃嫡されてしまいます。
序盤から「これはコメディです」と言わんばかりのギャグの応酬です。独特のノリで好みが分かれそうですが、個人的には好きな感じのユーモアでした。テンポや笑いのツボの押し方が絶妙で、可笑しくてしょうがなかったです。電車で読んでたら、いったん読むのを止めたと思いますw

受けは人手不足の為に攻めの家業に駆り出されることになり、仕事をこなしつつすったもんだします。修行を終えた攻めも国に戻ってきて、婚約破棄した2人のまき直しへの物語が始まります。

終盤、廃嫡にまつわる流れは、王子の特務の一環だったことが分かるわけですが、この辺りの種明かしはもう少し早めもありかなと思いました。意図的に伏せている構成ではあるものの、その分、受けの行動が任務ゆえなのか、ポンコツゆえなのかが判断しづらく、やや引っかかりとして残ります。もう少し受けの内面に寄り添える形になると、より感情移入しやすかったかもしれません。

初読み作家さんだったのですが、細かな描写の端々に教養が感じられ、引き出しの多さを感じさせます。ここまで振り切ったコメディの作風は貴重なので、今後の作品にも期待したいです。

わちゃわちゃイチャイチャ好き向け、ストーリー重視派は注意

コミカライズ原作の書籍化作品。評価が高かったため手に取りました。

冒頭から攻め受けの、わちゃわちゃイチャイチャとしたやり取りの描写が長く続き、ストーリーの進行は緩やかです。装飾や寄り道の多い文体も相まって、やや冗長に感じられ、読み進める中で集中力が途切れがちです。

本作は人身売買という導入から始まるものの、その後は同棲をめぐるやり取りや過去の出会いへと遡る場面へと続き、山場らしい展開が見えにくかったです。攻め受けの日常?を楽しむタイプの作品なのかもしれません。

キャラクター同士の関係性を丁寧に描こうとする意図や、作者が楽しんで描いている雰囲気は伝わってくるのですが、この攻め受けの掛け合いの雰囲気にはまれないと、置いてけぼりに感じる読者もいそうです。
半分ほど読んだところで、「これはわたしが想像するような展開は来ないな…」と、本を閉じました。

テンポの良いストーリーや明確な物語の進行を重視する読者にとっては、ややハードルの高い作品かもしれません。

ポテンシャルは感じますが、ディテールの甘さが惜しまれる作品

出会うなり侮辱的な言葉を浴びせてくる攻めに対し、なぜか興味津々な受けという導入は、先の展開を期待させるワクワク感があって良かったです。
ただその後の設定や展開については、モヤモヤが積み重なる読書体験となりました。

公爵家長男でありながら家庭内で冷遇されるという不憫設定。"継母+連れ子"からいじめられるシンデレラパターンは既視感が強く、その後のざまぁ展開も含め、ややお手軽に感じられます。

物語全体として、展開や萌えを優先するあまりディテールの整合性や説得力が置き去りになっている印象が強いです。
ヒートの来ないオメガを国同士の政略結婚に使う点といい、隣国に嫁いだ人物がその国の歴史編纂に関わるという設定といい、重要なストーリーラインに関わる点での無理筋を感じます。ファンタジーとはいえ、戦争が起きている世界の中で、この国防感の緩さはやや違和感があります。国の歴史編纂という設定にこだわるなら、受けは自国民にした方が良かったように思います。

その他にも、リアリティラインを下げる要素が頻出します。

・公衆の面前で王の伴侶候補を侮辱する隣国の大使
・他国出身の伴侶候補を国の重要資料室に簡単に通すセキュリティの甘さ
・オメガの護衛騎士がアルファ
・「国より受けが大事」と言い切る皇帝のスタンス
・「嫁がせた相手を返せ」という要求への疑問が十分に扱われない
・継母の連れ子は王妃でもないのに隣国の皇帝に容易に面会できる
・戦を仕掛けた敵国の王子が、結婚の祝辞を述べに来る

細かいことを気にせず、ファンタジーとして割り切って、キャラの救済だけに集中できる方なら楽しめるように思いますが、物語の説得力を重視する読者にはややストレスを感じやすい作品かもしれません。

人生ガチャのままならなさが沁みる、"死に戻り"ものの快作!

未来の王達との問答から始まる印象的なオープニング。この未来の人間との対話を通して自分の生き方を問い直すという場面は、この作品のテーマを象徴しているようで、とても感じ入りました。

王子である主人公が、一兵卒として市井に交じって過ごす中で、民それぞれの人生ガチャのままならなさと為政者の重要性を実感します。"死に戻り"ものは、ゲームリセットのような"やり直し"ものを多く目にする中で、本作は一歩踏み込んで人生の有り様を考えさせられる点が印象に残ります。

前作の現代劇からのファンでしたが、元々、芹沢先生はファンタジーがお好きだったとのことで、さすが構成がよく練られている作品だなと感じます。物語が終盤に向かうにつれ、きれいに伏線が回収されていくカタルシスの気持ちよいことといったら。読後感良く、満足度の高い1冊でした。
受けと会えなくなった攻めが、せめてと受けの馬に会いに来るシーンは健気でジーンときました。健気な攻め、大好物です。そのシーンも唐突なサービスシーンとしてではなく、自然な構成の流れの中で描かれていて、スムーズで美しいです。

ちなみに、笠井先生の美麗なイラストの中に混じって、珍しいモブ絵!を拝見できて、ちょっと興奮しましたw


鬱展開注意です

オープニング早々、奴隷として買われ慰み者になる鬱展開。夢見が悪くなりそうだなと思ったので、いったん読む手を止めて翌日昼に持ち越しました。第2章まで、過去のネグレクト等含め胸糞展開が続くので要注意です。

文章は読みやすく引き込む力のある作家さんで、最後まで読ませる技量は感じます。ただ、壮大な舞台設定に対して、物語の着地がテンプレ的な令嬢の撃退劇に収束しており、ややコンパクトにまとまった印象です。竜の呪いといった世界観の要素が十分に掘り下げられなかった点は少し物足りなさを感じました。

敵役である令嬢視点の章については、読者によっては好みが分かれる部分かもしれません。
女性キャラクターの描き方は、特に気になりました。ネグレクトを描く際に、父親の存在がほとんど描かれず、問題の多くが「ふしだらでだらしない母親」に集約されているように見える点や、敵役の令嬢のややテンプレ的な悪女造形など、読者によってはバイアスと感じる可能性もありそうです。
女性キャラクターが、結果として主人公を貶めるための装置のように機能している印象もあり、いわゆる「BLに女子はいらない」という極論を、悪い意味で体現してしまっているのが惜しいと感じました。

あとがきにもある通り、不憫な受けの描写にかなり力が入っており、ネグレクトやいじめ、奴隷落ちなどハードな設定が重なります。この点については刺さる読者もいるのかと思いますが、社会的なテーマを萌え要素として扱う作風は、個人的にはあまり好みではありませんでした。
作家さんの力量自体は感じられる作品でしたが、価値観の面で少し合わない部分もあり、次回作を手に取るかは様子見になりそうです。

脇キャラ達の魅力が目立つ第2巻

2巻では、脇キャラの魅力が目立ちます。過酷な竜生を送りながらも好奇心旺盛でご機嫌な長老リナリアや、ひたむきで健気なフィン。フィンとの関係性は、竜と人との在り方を示す重要な軸になっている印象です。副団長たちも含め、多様かつ竜らしさを堪能できるキャラクターの厚みは本作の大きな魅力だと思います。竜の生態や価値観といった種族の在り方をここまで掘り下げたBL作品はあまり見かけず、その点でも印象に残る作品です。

1巻に比べて物語運びのペースがやや落ちた印象があります。主人公の支配力を上げる展開が中心で、進行がやや緩やかに感じられました。
キャラクター同士の交流を通してそれぞれの魅力を引き出す構成は本作の強みでもある一方で、主人公の内面の葛藤を描くパートが長く続くと、ややもったりとした印象に。重要な要素ではあるものの、もう少しコンパクトにした方が読みやすく感じるかもしれません。また、作者独特の言葉選びもあり、やや意図が掴みにくいと感じる場面がしばしばあります。

テンポにややばらつきを感じつつも、なんだかんだ楽しく読了。物語のゴールの方向性がある程度見えてるタイプの作品で、各エピソードがある意味脇道のように感じられる構造でもあるので、この寄り道がどれだけ楽しめるかにかかってるように思います。次巻を待ちたいと思います。