この世にこんなに素晴らしい作品が存在していたなんて、とてつもない衝撃です。私の拙い語彙ではこの作品の良さを上手く伝えられないです。
棺桶に入れて一緒に燃やしてもらいたい作品がまたひとつ増えました。それくらい私には刺さっています。
オメガバースの世界をこんなにもやさしく描けるんだ、という驚きがありました。
オメガバースの世界に生きる人はみな、大小さまざまな偏見や差別、そして当事者ですらどうにもできない身体的な特性に悩まされながら生活しています。早寝先生はそんな世界の現実や登場人物たちそれぞれが抱えるままならない感情……それらをまっすぐに、丁寧に、透明感溢れる繊細なタッチで描いています。
主人公の白根は自分の芯がしっかり通っていて、凛としていて。しゃんと伸びた背筋が彼のこれまでの生き方を表しているような、そんなキャラクターです。そんな揺らがない自分を持っている彼でさえもオメガ性に振り回されながら日々を生きている。
「これが世界の現実なら、そこに生きる人間にはきっとこんな葛藤があるのだろう。」読みながら何度も考えさられました。ファンタジーな世界観のはずなのにすごくリアリティがあって、気づけば読者の私まで胸が苦しくなっています。これは良い意味での苦しみです。
早寝電灯先生の心情描写はとてもとても丁寧で美しくて、言葉にできない感情をキャラクターの表情に乗せるのが本当にお上手だなと思います。見せゴマで何回息を飲んだかもう数え切れません。
会話のテンポ感、作品全体にただよう独特の質感がきっと刺さる人にはかなり刺さると思います。
読了後、端正な文学作品を読んだ後みたいな気分になります。現代文の授業とかで読むような、しっとりとした日本文学を読んだ後みたいな……説明が難しいですが、そういう雰囲気の作品が好きな人に念を押しておすすめしたい一作です。
2025年ももう終わるというこの頃にめちゃくちゃ良い作品に出会えてもう本当にハッピーです!最高!ベストバイ!ありがとう!