あとがきを読んで、この作品が初めての書籍化と知り、なるほどと思いました。
上巻では所々素人臭さがあるものの、一途にシノの幸せを願うラウルの気持ちにはぐっときたし、美少年ラルの姿にも関わらずちょっとずつボロが出てきてシノに気づかれていくあたりもわくわくしたし、さらには魔法についてや、まわりの人物なども丁寧に書き込まれていたので、下巻もとても楽しみにしていたのですが、う~ん。
伏線の回収があまりうまくないのかなぁ。上巻の丁寧さに比べると、アラが目立つというか整合性に欠けるし、ずいぶん乱暴にまとめちゃったなぁと感じました。
1番理解に苦しむのが黄金竜ラドゥルの行動でした。自己を犠牲にしても人間を救おうとさする立派な竜なのかと思いきや、ラウルと入れ替わった途端、関係ない人物にまで嫌な態度をとってみたり、ラウルを脅してみたり、拗ねてみたりとまるで子ども。そもそも関係のない人物を承諾もなく勝手に巻き込んでるあたりから、ちょっと理解に苦しむところはあるのですが、罪悪感を感じて謝っていたり、人間を守るという大義名分はあるにしてもあまりに自己中すぎて私には受け入れられませんでした。
それ以外にも、上巻でソウマ王子が竜には好かれるとか有望な竜使いだとなっていたので、少ないとはいえ竜もそれなりにいるのかと思いきや、融合中のラドゥルや人間の姿で執務中のレイを含めてもたった5頭しかいないというのにはびっくり。ヒーくんは三択で選ばれたのか…。
さらには宮廷魔術師は人命をかけて試験を行うのに、その上役の宰相は素人にあっさり引き継ぎされちゃうとか、その宮廷魔術師自体も敵国の魔術師に入り込まれちゃったりしてるし。
主人公ラウルさえも、治療術師だから大怪我をしてもすぐに回復できるってなってたのに、腰が痛くて昼まで動けないとか薬をもらったとか…もう挙げ始めたらキリがない。
姿が変わってしまって昔のように振る舞うことができないというジレンマを抱えながらも、可愛い弟子を見守ることに満足しているラウルが、少しずつ想いを恋愛に変化させていく過程はすごくドキドキしたし、シノのブレない執拗なまでの執着心にもキュンとさせられただけに、最後まで丁寧に書ききって欲しかった。
書籍化の際に出版社の方で訂正なり加筆なりを促すことができなかったものかと残念で仕方ありません。かなりのページ数を書ききるだけの力のある作家さんですので、次の作品に期待します。
私屋カヲルさんの作品は大好きだし、もふもふ好きだし、そもそも地雷少ない雑食なので、全然構えず読んだのですが、ごめんなさい、これはちょっと…生理的にダメでした。
ネコが大好きな方にはただの可愛い〈ネコあるある〉なんだと思うのですが、可愛いなぁ~くらいにしかネコに思い入れのない私にはかなりハードル高めでした。
野良猫ちゃんが人間に変身して、対人スキルの低い落ちこぼれホストの恋人となって、どんどんホストくんが成長していくというハートウォーミングなストーリーなんですけど、中途半端にネコの部分が残っている変身に、萌えられず。残すのは耳ともふもふくらいでよかったのになぁ。
さわり心地のいい毛で隠れてはいるので乳首が8個あるのはまだいいのですが、性器にトゲドケがあったり、魚くさいとか口でのキスとか、肉球の臭い嗅いだりとかになると、うわっ…となってしまい、もうそれ以上入ってきませんでした。
私屋さんだけあって話はちゃんと読みごたえのある作品だし、絵もむっちりボディで可愛いのに、ネコの魅力がわからない自分が残念でした。