「プライスシリーズ全4巻」和泉桂
箱入り息子が子供から大人の男へと成長していく成長物語。
BLの設定でよくありがちでもう飽和状態と言っても過言ではない、ヤクザ物(マフィア含む)、警察物、学園物。
学園物は別として、知らない専門業界だからこそ、あれこれと最大限に妄想力想像力を掻き立てられたりする。
テレビドラマではデパートを舞台としたドラマがたまにありますが、数ある業種の中でBLの設定として意外にありそうで無いデパート物。
デパート自体、お客さんには表向きの綺麗なところしか見せないので、誰もが一度は行った事がありながら、何か特別な職業でもないのに実態はわかりにくいのではないでしょうか。
今回ご紹介するこの「プライスシリーズ」の舞台はデパートです。
「ふらちな恋のプライス」はこのシリーズ1作目で尚也と桐生の出会い編。といったところでしょうか。
いいトコの坊(ぼん)で親にも兄・怜史(さとし)にも甘やかされるだけ甘やかされて育てられた瀧口尚也(たきぐちなおや)が東都デパートの社員として働く事になり、尚也の勤めるデパートの経営不振を再建するために呼ばれた会計士、桐生行成(きりゅうゆきなり)と恋に落ちる。
舞台設定がデパートと言うこともあって、カッチリワイシャツ、ネクタイ、スーツ姿。
そしてチラリと上着の袖から見える紳士物の腕時計。…萌えでございます。
おまけに桐生(攻め)は鬼畜眼鏡。
最初の出会いは最悪で尚也に対し桐生は容赦なく辛辣な言葉を浴びせ、「厳しくて冷たい人」でしかない。
冷たくされてシュンとなるけれど、本人は自分の足で立って歩きたい、兄に頼ってばかりでは駄目だと尚也なりに努力する姿に、みているこちらは頑張れー!と応援したくなります。
そんな健気な尚也を見ていた桐生も次第に尚也のことを可愛いと思うようになり、今までの自分のペースをとことん乱す尚也に心惹かれ、気になって仕方がない。
尚也も桐生の事を冷たいばかりの人だと思っていたけれど、時折見せる優しさに本当はそうじゃない人だと言うことに気付く。
最初こそ桐生は尚也に「ツンツン」ばかりでしたが、自分の気持ちを認めてしまえば尚也に対する甘やかし度は兄・怜史以上じゃないのか?と思える位のデレっぷりです(笑)
実は1作目の3分の2までは、本当にBL小説?と思うくらいぬるめでございます。
(って、何が?って「ナニ」が、でございますよ 笑)
まぁ最初ですからね、きっかけと途中経過は重要です。強引な展開でHシーンにがっつくほどガキじゃありませんので、そこはじっくりみっちりジワリジワリと攻めて行き、初(うぶ)な尚也を桐生の大人のテクニックで調教する(落とす)のは見ているこちらも楽しいです。
2作目となる「内緒のキスのプライス」は仕事と恋愛どちらも尚也にとって「最初の試練」といった感じじゃないでしょうか。
晴れて気持の通じ合った桐生と尚也。社会人1年目でいっぱいいっぱいだった仕事も慣れるに従って余裕ができ、仕事場の上司から初めての企画を任されることになる。
恋愛の方はというと尚也は偶然売り場で知り合った、ディスプレイデザイナーが桐生の過去の女性だった事を知ってしまう。
自分と桐生の過去の女を勝手に比べて自信を無くし、仕事も思うように進まずグルグルになる尚也がみられます。
BLに出てくる女はなぜが男同士の恋愛に寛容だったり、単なるお邪魔虫なだけだったりの役回りが多い。過去に自分が付き合った男が今は男と付き合っていても、さして驚く様子もない所が不思議。ここに出てくる女もやっぱりそうでした(笑)
もし現実世界で起こったら、それはそれでショックだと思うのに(多分)。
「事実は小説よりも奇なり」って言うくらいだし、もしかしたら自分が知らないだけで
現実世界ではもっとすごいことが展開されているのかも。
男同士の恋愛にいくら寛容でも、邪魔して引っ掻き回すだけの女は要らんのじゃ!女は!(笑)
「溺れる愛のプライス」はいつもクールで余裕、初な尚也を翻弄するばかりの桐生でしたが、3作目では一転、尚也に大いに振り回される番です。
桐生との約束の日に同期・谷崎とドライブに出かけてしまった尚也。桐生は尚也の口からキャンセルの理由を知らされないまま、本当の理由を怜史から聞かされる。
尚也がどうして内緒で出かけたのか、素直に聞けば良かったのに変なプライドが邪魔してしまい、後悔と嫉妬をする桐生。
超能力者ではないので思っているだけでは、気持ちは伝わらないということですね。
人間は言葉という道具を持っているのだから、素直に自分の気持ちをちゃんと伝えないと、ということです。
「いとしい声のプライス」このシリーズ4作目、完結編です。
プライスシリーズ完結編では、尚也が今まで仕事での数々の失敗や困難を乗り越え、仕事も恋愛も充実し成長した一人の大人の男になった姿が見られます。
最初こそ桐生は鬼畜眼鏡でしたが、物語が進むにつれて可愛い年下の恋人にメロメロです(笑)
尚也の兄・怜史もこのシリーズの中でチョイチョイ出てくるのですが、兄は兄で番外編があり、また尚也とは違った意味で、大変な恋愛を展開していたりします。
(リミットシリーズ:焦がれる愛のリミット、あふれる熱のリミット)
プライスシリーズ、リミットシリーズ、全て読むとこの兄弟の事がよりわかるんじゃないかと思います。