このBLだけは読んでおけ!ボーイズラブが好きな乙女なら、一度は読んでおかねば! 推薦者が己の萌えに忠実にチョイスした「BLマストブック」!


ほろ苦く甘酸っぱい青春群像
あふれそうなプール 石原理
評者:高坂ミキさん
石原理の最高傑作にして、BLの最高傑作作品との呼び声も高い「あふれそうなプール」。王道的なBLが確立する90年代に描かれた同作品は、今でも不思議な力で読者を圧倒する。石原独特のヒリヒリするような緊張感、そしてその緊張の合間に伝わってくる、かすかに懐かしい感覚。
時代を超えた名作をみなさんにぜひとも堪能してほしい。

初めて読んだ石原さんの作品は友人から借りた「カリスマ」個性の強い絵柄も、どこか難解なストーリーも正直言って自分には苦手だと思った。
なんとなく馴染めないまま、作品を買うことも挿絵として見かけても、暫くは敬遠していたこの方の本を自ら手に取ろうと思った理由は定かではないのだが、その苦手意識がこの本によって一掃されてしまったのは確かだ。

「あふれそうなプール」「カリスマ」はアメリカを舞台にしていて自分自身日常生活のなかで一度も体感したことのない話であるのに対し、この作品の方は、日本が舞台で主人公が高校生であったことで話に馴染みやすい雰囲気が加わることで先の作品より敷居が低くなったのもあるかもしれない。


この作品を読んだことの無い人に話の内容を簡単に説明しておこう。
子供のころに経験したいいじめのような出来事で、対人恐怖症ぎみの入谷鉄央は同じ学年の中でもひどく存在感のある木津涼二になぜか目をつけられる。
隠されている自分の内側を暴かれる恐怖におびえて、出来るだけ木津と距離を置こうとする入谷だがどんなわけがあるのか木津のほうはほっておいてはくれない、自分の内側に無遠慮に侵入してくる木津に苛立ちを覚えながらも、それとはまた逆に彼に強く引かれていく気持ちも止められないでいる。

小、中学校時代にはいじめにも似た扱いを受けていつも泣いていた入谷は、そんな自分の過去をあまり知る人間のいない学校を選び、今までと態度もがらりと変えてまったく違う生活を送ろうとしていてそれは成功しているように見えていたのに、木津の前でだけはなぜかその均衡がくずれそうになってしまう。
逃げようとする入谷と捕らえた獲物を逃すまいとする木津、どちらも一歩も譲ろうとしないぎりぎりに張り詰めた攻防戦に読みながらぐいぐいと惹きつけられていく自分がいて止まらなくなってしまったのだ。

文庫化された折に各巻に新しく描き加えられた書下ろしがまた良い。二人のその後に当たる内容なので、ネタバレ的なものが嫌いな方は途中で読まないほうが良いかもしれないが男らしく成長した二人のその後の関係が垣間見える内容におもわず悶絶してしまう。
読み終わったあとに苦手だったあの作品を再読したのだが、何が苦手だったのかわからないほど普通に楽しめたのが不思議だった。

等身大の彼らが巻き起こす、ほろ苦く甘酸っぱい青春群像……。
すでに経験した者にはどこか懐かしく、それでいて長い間読み告がれていくための新鮮さも加味されたこの作品を、ぜひ一度手にとって読んでみてほしいものだ。

作品データ
作 品 名 : あふれそうなプール
著者 : 石原理 :
媒   体 : コミック シリーズ : Hug文庫(メディエイション)
出 版 社 : メディエイション ISBN : 9784870318106
出 版 日 : 2007/05  価   格 : ¥680
紹介者プロフィール
高坂ミキ
好きな作家は、英田サキさん、ひちわゆかさんなど。Hシーンよりストーリーの濃い作品が好き。
30の後半を過ぎてからヤオイに嵌った遅咲き腐女子。似たような内容のストーリーが溢れているBL海で、本当に萌えられる自分好みの作家さんやお話を今だ探検中。
このコラムに寄せられた感想
2010年01月28日 ぴな
石原さんの作品大好きです。
登場人物の思いが真っ直ぐすぎて、読んでいるこちらの顔が赤くなっちゃうなんて経験は初めてでした。
あのギリギリの緊張感、たまりませんよね。

「俺の(心の)なかにはプールがある…」なんて叙情的なモノローグも、センスがあって素敵だと思いました。

好みの作家さんを模索中とのことなので、
もしまだご存知なければ、遙々アルクさんの作品をオススメいたします。
コミック数はまだ少ないですが、反響の多い作家さんです。このサイトのレビューを参考にされてみてはいかがでしょうか?蛇足で失礼しました。


2009年07月19日 めいしんどろーむ
読みましたv
このコラムを読ませていただいて、「あふれそうなプール」文庫版で読みました!!
ほんと、よかったです(ノд-。)クスン
ありがとうございました。


2009年07月15日 tyanpon
No Title
高坂ミキさんこんにちは!
独特の絵柄でまだ読んだ事のない漫画家でした。
あふれそうなプールとカリスマが文庫化するときに取り上げられていたのですが、そのまま。。。
絵柄で決め付けてしまっていたので、これから読んでみたいと思います。



このBLだけは読んでおけ!
岡田屋鉄蔵はぜひ「恐る恐る」読み始めてほしい! (05/24)
このBLだけは読んでおけ!
『銀の弾丸シリーズ 秀 香穂里』
デキル男は恋も仕事も (01/28)
私のBL論!
キミたち、抵抗力なさすぎたろ! (01/09)
私のBL論!
私がまだBL初心者だったころ (10/31)
このBLだけは読んでおけ!
『伯爵様は不埒なキスがお好き』
吸血鬼伯爵様のコウモリ姿は 文字通り“鬼”ラブリーです (09/15)
このBLだけは読んでおけ!
『あふれそうなプール』
ほろ苦く甘酸っぱい青春群像 (07/14)
このBLだけは読んでおけ!
『愛とバクダン』
冴えない探偵所長×危うく影のある美青年 ガチのぶつかり合いと強烈な愛を描いた人気シリーズ (04/03)
このBLだけは読んでおけ!
『今宵、雲の上のキッチンで』
毒舌家と天邪鬼 何度読み返しても飽きない二人の恋物語 (02/13)
このBLだけは読んでおけ!
『成層圏の灯』
苦節8年、不遇の時代を生き抜いて、今、輝く鳥人ヒロミの名シリーズ (01/23)
私のBL論!
『12時の鐘が鳴る前に』
年の差と犬の散歩は、一回りほどが いとおかし? (01/06)
BL未満ボーイズラブ以上
『風と木の詩1』
70年代、日本を震撼させた元祖ボーイズラブ ジルベールは世代を超えて生き続ける (10/07)
このBLだけは読んでおけ!
『君とハルジオン』
ほのぼの路線に癒されて (08/19)
このBLだけは読んでおけ!
『胡桃の中』
絵画をめぐって巻き起こる人間ドラマ 愛憎をみつめる卓越したエピソード (07/15)
BL未満ボーイズラブ以上
『今宵、天使と杯を』
編集が「こんな話商業で出しちゃって良いんですね~」 とまで言い放った?英田サキ、マニアな名作 (05/29)

特集トップへ

特別企画
BLアワード2010
榎田尤利特集
BLアワード2009
崎谷はるひがエロい!
ここがヘンだよボーイズラブ
初心者特集
BLはファンタジーの王様です
オヤジ大解剖
号泣BL特集
2008年度ランキング特集
年の差特集
ヤクザ特集
木原音瀬特集

おすすめの記事
私のBL論!
BLファンタジーが成立する土台を検証する
BL未満ボーイズラブ以上
『南総里見八犬伝』
BLの先駆けは江戸ファンタジー文学にあり!
私のBL論!
におってるオヤジが好きだ、ついリピートしたくなる……
このBLだけは読んでおけ!
『石黒和臣氏の、ささやかな愉しみ』
世界のセレブ、犬の飼い方躾け方 私の選んだ愛ある鬼畜♪
私のBL論!
堺市の図書館BL騒動 禁書になった作品はコレ?