このBLだけは読んでおけ!ボーイズラブが好きな乙女なら、一度は読んでおかねば! 推薦者が己の萌えに忠実にチョイスした「BLマストブック」!


”コレ”読まずしてBLファンタジーは語れない
クリムゾン・スペル やまねあやの
評者:まゆみさん
ボーイズラブは存在自体が「ファンタジー」とまで言われるジャンル。今回のちるちる特集はその中で「ファンタジー」をやっちゃいます!まさに「fantasy of fantasy」。これ以上の「ファンタジー」はありませんね。
その中でも絶対に押さえておきたい作品「クリムゾン・スペル」「是-ZE-」を今回はバチッとご紹介しますよ!

ファンタジー特集ということで、ひとまずファンタジーとは果たして何なのか、を考えてみる。竜、剣、魔法、妖精が出てくる物語、というぼんやりしたイメージは浮かぶが、それ以上のはっきりした定義は分からない。困った。困ったのでWikipediaに聞いてみるとする。

「ファンタジーの定義はあいまいだが、(略)世界設定や物語の展開において(略)空想や象徴、魔術が重要な役割を果たす。」冒頭からまさかの曖昧発言だが、あながち抱いていたイメージと違わないようだ。また、「ファンタジーの定義を広く「仮想の設定のもとに世界を構築する作品」と」することもあるらしい。BLの突飛さや無茶苦茶さを指摘されたとき、しばしば腐女子は「BLはファンタジー!」という言葉を免罪符として使うが、ここで用いられる「ファンタジー」は、後者の定義から来ていることになる。男子校に通う生徒の九割が校内で恋人を作ったり、受が妊娠したり出産したりする、そういう「仮想の設定」を基盤にしたBLはまさにファンタジーだ。

で、ファンタジーものBLである。前者の代表作になるのが「クリムゾン・スペル」(やまねあやの)だろう。「クリムゾン・スペル」封印されていた魔剣を抜いて呪いをかけられた王国の王子と、魔導士の物語を、文句のつけようがない作画で描く人気作品である。やまねさんは美しい男を書くのがうまいだけでなく、馬だの武器だのを書いても本当にうまい。ドラマティックな展開は読み応えがあり、その合間合間に描かれるコメディ部分ではしっかり笑わせてくれる、非常にバランスの良い作品だ。コッテコテのファンタジーを求めるひとには鉄板である。

それに比べて後者はかなり間口が広いが、ここではその「仮想の設定」が色濃く出ている作品を紹介したい。「是-ZE-」(志水ゆき)だ。一巻完結ものや、タイトルの違うスピンオフものの多いBL作品の中で、現在八巻まで発売されている人気シリーズである。

「クリムゾン・スペル」舞台は現代日本だが、主人公が暮らす屋敷に住んでいるのは人間ばかりではない。人形師によって作られた存在である「紙様」も暮らしているのだ。天然100パーセントパルプの紙でできたかれらは、それぞれ自分だけの主を持つ。主は発した言葉を現実にする力を持った「言霊使い」であり、紙様は言霊使いが術を使う代償として受けるべき傷を、代わりに受けるため・治癒するために存在しているのだ。代わりに傷を受けることは、言霊使いの言霊によって命令されるが、一端言霊使いが受けた傷を治癒するには、粘膜の接触が必要となる。そして言霊使いと紙様は同性でなくてはならない、という決まりもある。

とまあ一度にまとめると非常にややこしく、難しい設定のある物語だと思われてしまいそうだが、特に読んでいて難解なことはなかった。何も知らない状態で屋敷に引っ越してきた主人公・雷蔵が少しずつその仕組みを知ってゆくかたちで話が進んでいくので、それを読み進めるうちに、読者も問題なくシステムを把握できるようになっている。

「是-ZE-」が面白いのは、なにも特殊な設定の珍しさだけによるものではない。作中に数組出てくる言霊使いと紙様の主従関係兼恋愛関係の在り方が、どれもこれも非常に魅力的なのだ。それぞれのキャラの個性も、二人の間にあるエピソードも印象的で、人気投票まで行われるほどの勢いである。一番人気なのは、俺様暴君な言霊使いの玄間と控えめで健気な紙様・氷見の関係だ。

家庭を顧みなかった父を憎んでいた玄間は、父の死後、かれのお気に入りの紙様だった氷見の主になった。最初から自分を手荒に扱う玄間に戸惑う氷見だったけれど、乱暴な態度と心ない言葉の裏にあるかれの孤独を知るにつれ、少しずつ心を開くようになる。このままいけばいつかは分かり合って穏やかな関係を築けるようになるのではないかと思えた矢先、ひとつの大きな事件が起こる。非常に衝撃的かつ残酷な展開に、必死に立ち向かう二人の姿は哀しくて切なくてとても良い。

それ以外にも、餌付けされた言霊使いと母親のように世話を焼く紙様、男装の麗人と美少女、二人で一人の双子声優とショタ顔の紙様など、個性豊かな面々が話を盛り上げる。その謎ばかりが匂わされて、未だ過去が語られていない登場人物もいるので、今からでも遅くない、ぜひ手に取ってみて頂きたい。

個人的には最初っからずっと、似非関西弁を使う紙様・阿沙利と、不器用で堅物の言霊使い・彰伊に萌えっぱなしなので、そこを気持ち強めにお奨めしておく。

ファンタジーにはいまひとつ手をのばしきれないという方にも、「是-ZE-」、おすすめです。

参照
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%83%BC

作品データ
作 品 名 : クリムゾン・スペル
著者 : やまねあやの :
媒   体 : コミック シリーズ : Charaコミックス
出 版 社 : 徳間書店 ISBN : 9784199602924
出 版 日 : 2005/07/25 価   格 : ¥560
紹介者プロフィール
まゆみ
音楽とか舞台とか洋服とか、とにかく好きな人や物が多過ぎて見放されてしまいそうな月に負け犬的おたく。本を売って稼いだお金で、本を買って生きています。つまり本屋で働いています。誘惑にはすぐ負けます。
物心ついたらおたくで、気がついたら人生の半分以上腐っていました。節操も地雷もありませんが、歴史物・宗教物・主従物・中学生攻・親の愛を知らないまま大人になった子供、みたいなシチュエーションが好物です。おやじとアンドロイドも大好きです。

その他、本の感想と日常の出来事を書いているブログはこちら。
http://defeated.jugem.jp/

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