私のBL論!


ニューヨーク、ボーイズラブ事情
アメリカでも「純情ロマンチカ」最強か!?
評者:桃園あかりさん
日本発の魅惑のカルチャー「ボーイズラブ」は現在、世界各国で人気を呼んでいます。
特にアメリカ合衆国では「Yaoi」「 Hentai」というネーミングでファンから熱烈な支持を受け、書店にもボーイズラブ書籍がところ狭しと並べられています。
今回はアカデミックにアメリカのボーイズラブ事情をご紹介いたします。

 今回、アメリカ出張のついでにニューヨークに立ち寄って、ボーイズラブ事情をちょっとばかり調べてきました。久しぶりのニューヨーク。チャイナタウンでの飲茶やノリータカフェでの一服も、もちろん楽しみですが、ボーイズラブ調査に、高鳴る胸を押さえきれません。
 まずはニューヨーク市立大学大学院で勉強している友人と、アメリカの一大チェーンブックストアBarnes&Nobleの5番街店へ。まず店では、広大な売り場の2階の片隅に、3棹のマンガコーナーを発見しました。「ニューヨーク、ボーイズラブ事情」
 マンガはもうこちらで、Mangaと表記されていて、すでに英語になっています。マンガコーナーにあるのは、当然、ほとんどすべてが日本のマンガの翻訳。アメリカオリジナルのマンガは一応あるのですが、ほとんど置いていないも同然なので、3棹もの棚を日本のマンガが占領しているのは、なかなか壮観です。そのなかで、ボーイズラブ・コミックスもちゃんと、置いてありました。Barnes & Nobleのほかの店でも、Manga充実度はかなりのもので、あちらこちらの店のMangaコーナーをチェックしまくる謎のひとと化した結果、アメリカで一番棚が多かったBarnes&Nobleには、なんと10棹ありました。Mangaではなく、Graphic Novelsと表記されているお店も数軒あって、そういうところでは、古いタイプの大判のアメリカのマンガ(あんまり面白くない…)が、多めに置いてあったりします。「ニューヨーク、ボーイズラブ事情」
 Barnes & Nobleは、ネット書店ももっていて、マンハッタン内なら24時間以内に配達してくれるサービスもあります。Yaoi(こちらでは、BLよりYaoiのほうが通りがいい)で検索すると、出てくるのは331アイテム。当日買いができるので、ネットユーザーも結構いるのでしょう。現在一番売れているのは、『Junjo Romantica』第6巻(中村春菊さんの『純情ロマンティカ』。純情は日本語のままですね)、2位は『Love Is Like a Hurricane』第5巻(島崎刻也さんの『恋はいつも嵐のように』)、3位は『Love Pistols』第5巻(寿たらこさんの『SEX PISTOLS』。セックスが悪いのか、セックス・ピストルズの音楽ファンが間違って買ってしまうからか、題名変更されてます)。あとは広河ゆんさんの『Loveless』が何巻分も上位に食い込んでいました。「ニューヨーク、ボーイズラブ事情」
 日本のBLは、1冊で完結する単行本作りがされていて、巻数を重ねていても単発の単行本のような体裁をとったり(一冊ずつ題名を変えるなどして)、実質的に1巻であっても、「1巻」と数字をいれずに、2巻から番号をふったりなどして、どちらかというとシリーズ化を嫌う傾向があると思います。2巻や3巻は、1巻を購入したひとにしか、売れませんものね。
 がしかし、アメリカのYaoiはむしろシリーズものがメインです。何巻も巻数を重ねていくことで、読者を引っ張っていきたい、開発した新規読者は逃がさない、という気迫が感じられます。少数精鋭のオタクファンが対象だからでしょうか? 志水ゆきさんの『LOVEMODE』は10巻が出ていました。あちらこちらをみた感じでは、『SEX PISTOLS』、『LOVEMODE』、『純情ロマンティカ』が人気を独占しているようです。
 島崎刻也さんの『恋はいつも嵐のように』は、わたしは知らなかったです。どうも、ちょっと過激なエッチシーンが売りのようですね。日本で人気のあるマンガと、翻訳されているマンガが、微妙にずれているのも興味深いです。かなり古めのマンガ(評価が定まっているから?)と、最近人気の新しいマンガとが混在して出版されています。
 ほんの少しであるけれど、日本以外のYaoi商業誌もあります。アメリカの腐女子も創作しているものね。ただ、題名が『Yaoi Hentai』って…。Hentaiって、編隊でも変体でもなく、変態ですよね(笑)。英語になっているとは知っていましたが、Yaoiとくっついていると、ものすごいインパクトです。商品の説明文を読んでみると、「超人気、変態でセックス満載のYaoi Hentai第3巻(Volume 3 of the ultra popular, kinky, sex-full Yaoi Hentai)」。うーん、素敵すぎる…。

紹介者プロフィール
桃園あかり
腐っていることを周囲に隠していないカミングアウト済み貴腐人。しかし流石に、子どもからはBLをどう隠すかが最近の懸念。職業は、意外にまじめなプロフェッサ~。思うより職場のスーツ率が、低くて悲しい。
このコラムに寄せられた感想
2009年08月05日 葡萄瓜
等級であるかと
レス返しになり失礼致します。
『YAOI HENTAI』楽しんで戴けて嬉しいです。

この場合の『HENTAI』は恐らく『BEST』に近い
用法ではないかと思われます。
恐らく『HENTAI』がマンガに対する褒め言葉としても
転用される様になり、そこから更に転用されたの
ではあるまいかと。

因みに申し上げますと。
海外の同人サイト上ではかつてYAOIの等級として
『LEMON』『LIME』『CITRUS』と言う言葉が
用いられていました。
LEMONが18禁以上、LIMEが15禁相当、CITRUSは
15歳以下は見ない様に(LEMONとCITRUS混在)と
言う区分であったかと。


2009年06月17日 ももぞの
HENTAI
葡萄瓜さん

『Yaoi Hentai』、わたしも早速注文してみました。
濃厚な味わいですよね。
「Hentai」っていうのは、男性向けのエロのことらしいのですが、その女性版っていう意味なのかしら?
いずれにせよ、日本のBLとの違いが、メチャクチャ面白かったです。


2008年10月09日 葡萄瓜
褒め言葉としての『HENTAI』
『Yaoi Hentai』はAmazon経由でVol.1からVol.3まで
入手して居りますが、中々に濃厚な味わいです。
物語の展開としては王道に近い感覚でしょうか。
只、解釈の違いによるギャップは若干感じられるかも
知れません。



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