私のBL論!


「リバーシブル」を考える ~その1~ 体の形で考える
評者:眠れる森さん
BLの数ある「萌え要素」の中のひとつ「リバーシブル」。
お互い棒も穴もあるんだから、平等に「受」「攻」の役割を果たしてもいいんじゃない!? それに一粒で2度おいしい!
とはいうものの、なぜか評価が真っ二つにわかれて、気軽に触れない分野なのです?
が、しかし、あえてこのこの問題に挑戦しようという論客が現れました。

恐らく男女恋愛ものにはほとんどなく、BLにしかない愛し方の概念に「リバーシブル」(通称リバ)というものがあります。
「リバは好物です!いや、むしろなぜそこでリバらなかった」
「やめてください、リバは地雷です!」
評価は真っ二つに分かれがちなものかと思います。

というわけでこのもっともBLらしい要素の一つ「リバーシブル」について体の形と心の動き2通りの切り口で改めて分類し、どうしてこういうことができて、こいつらはどういう心理なのだろうか?ってことを考え直してみたいと思います。
なお、この文章内で生々しい事がたまにさらっと出てくるのは筆者の私が実際にリバ体験者だからです(わーさらっと言っちゃったぞこいつ…)


心理状態は次に譲るとしてまずは体の形から。なぜリバーシブルが成り立つのかを考えてみましょう・・・といっても非常に単純なことです。
「攻めも受けも体の形には違いがないから」
BLを読み続けるとうっかり忘れそうになりますが、攻めも受けも性別は同じ男です。
チンコもついてりゃ尻の穴も開いてるし、前立腺だってあるわけです。
ということは受けが感じる場所で攻めが感じる可能性、またその逆は本来あるわけです。結局BLにおいて「俺が攻める」「僕が受ける」というのは生理的に決定されてるのじゃなく、心理的なものなんですね。
だからいつ下で「あぁん☆」と喘いでる受けが「俺も男だから入れたい!」と攻めに急変しても、攻めが「気持ちよさそうだな」と受けに好奇心持っても不思議はないし物理的には何の問題もなくできるわけです。

その上で一般的にリバーシブルと認識されてる物を体のつながりを元に分けてみましょう。
大雑把に3つあります。

1:完全にリバーシブル
アルファベットで「A×B×A」とも書かれるパターンで、カップルは1組。A君はB君に対して攻めもやるんですが受けもやるわけです。
攻め同士がお互いを犯しあう笹村剛「まずは奪いあい!」と受け同士がお互いを受け入れあう村上左知「ルールそのいち」を例として挙げておこうと思います。お互いが攻めになり、受けになります。リバーシブル、と聞いて一番連想しやすい形です。
また「お互いが反対の立場であった場合どうなのか」という事を一応知っているので立場反転した時にあまり無茶なエッチがないのが完全リバーシブルの特徴とも言えるでしょう。

2:片方がリバーシブル
アルファベットで「A×Bだが、昔はB×Cだった」のパターンというべきでしょうか。カップルは2組。B君はA君に対しては受けですが、Cさんに対しては攻め。「今は受けですが過去の相手に対しては攻めでした」という事になります。B君一人で攻めの役割も受けの役割もしますが、カップル内での逆転はしないわけです。
元々攻めだった男がさらに攻めとして上の男に抱かれて受けに開眼する神室晶「イケナイ男」、元々ネコだった男が守ってあげたい子ネコを見つけて攻めに転ずる村上左知「非常階段であいましょう」がこのパターンになります。どちらも攻めが受けに、受けが攻めにとクラスチェンジします。

3:真ん中がリバーシブル
アルファベットでいうならまさに「A×B×C」のこと。カップル・・・というよりトリオが1組。真ん中に挟まるB君が前からも後ろからも愛されるという形です。入れられながら入れているという二重の快感(?)を攻めであり受けである真ん中さんが味わうことになります。
一人のヤンキーをアイドル二人が愛しまくる安南友香子「美味しく、いただきます!」、お互い仲良し同士の3Pである和田繭子「ケダモノ発情期」がこのパターンで、絡みの形がなかなか複雑になったりします。
とはいえ、複雑と言っても3Pで「(A+B)×C」のパターンは受けのC君への負担が非常に大きいので、リバと意識されることなく登場している可能性があります。

というわけで、このどれかのパターンで攻めも受けもやる人が最低一人誕生するのですが、できるのとやろうとするのはやっぱり違う問題なわけです。
次の章では心の動きで考えて分類していくのですが、その前に一つ定義を追加させてください。
なぜなら「体と心の姿勢はけっこう違う」からです。そう「体は受けてるけど心はむしろ攻めてる」事が結構あるのですね。
分かりやすい例でいうと受けが攻めの上にのしかかって自由を奪ったり、攻めがリードできずに感じまくったり。この場合エッチの主導権を完全に握ってるのは受けの方であって、攻めは喘ぐしかないわけです。実際に突っ込んでいる方と攻めている意識のある方が違うわけです。
そこで次回の分類では精神的に攻めな方を【攻め】と表記することにして行きます。勿論対応するのは【受け】です。
攻めと受け、【攻め】と【受け】はお互いどう絡むのか?そしてどうしてリバになるのか。
次回はこの心に絞ってもっと細かく追いかけていきますが、その前に体の形編の最後として受け側の【攻め】【受け】がもっともはっきり露呈する体位を紹介して終わりましょう。

「「リバーシブル」を考える ~その1~ 体の形で考える」

【攻め】る受けの体位…それは「騎乗位」
相当な体格差がある場合を除き、騎乗位の場合は受け側が攻め側の腰の動きを体重で奪ってしまい、自由度を奪います。唯一動かせるといっていいのは手ですが、受けに確実に届くのはチンコだけ。受け側の手は頭から足先までいじり放題です。当然リードできる範囲は圧倒的に受けが優位ですよね?
逆に【受け】る受けの体位は「バック」。
ほとんど体位が攻めやすい体位ですが、バックは特に受けの自由度を縛ります。上から攻めにのしかかられては自らどこかに触る事は困難。攻めは背面全面、上下と受けの全身を愛撫する余地を残します。こうなると「殆ど拘束しているのと同じ」、流れに任せるままと言えるでしょう。


以上、「リバーシブル」を考える前編。「体から考える」でした。いよいよ次は心に迫っていきます。

紹介者プロフィール
眠れる森
立ち読みしたパタリロからはじまった腐男子歴も気が付けばもう20年。
本の気まぐれから始まったBL読書だったはずがBL曲を作ってしまったり、BL企画で絵を書いたり本当に彼氏(!)を作ってしまったり…と気が付きゃ腐った世界の影響で人生歪みっぱなしです。
ストライクゾーンは広いですが、愛がないのに痛いのとありえないエッチだけは苦手。勿論、リバを筆頭にエロエロなBLは大好き!

ちなみに身長は「ちょうどリバ位」…もうちょっと欲しかったな(苦笑)

BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第七回「やってはいけないBL」 (01/28)
BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第六回「腐女子の住み分け」 (01/21)
BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第五回「BL編集者になるには」 (01/15)
BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第四回「BL作家になるには」 (01/07)
BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第三回「BL業界のスケジュール合戦」 (12/24)
BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第二回「BL書籍出版の骨組み」 (12/17)
BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第一回「作家と編集の関係」 (12/10)
私のBL論!
愛する男たちの背丈の話 (04/25)
私のBL論!
お宝小冊子をゲットする4つの方法 (02/28)
私のBL論!
「リバーシブル」を考える ~その2~ 心の動きで考える (10/14)
私のBL論!
「リバーシブル」を考える ~その1~ 体の形で考える (10/11)
このBLだけは読んでおけ!
王道を確信犯で! (12/22)
このBLだけは読んでおけ!
榎田作品に漂う「死」の香り (12/17)
このBLだけは読んでおけ!
『交渉人は諦めない』
事実が真実とは限らない (12/10)
このBLだけは読んでおけ!
榎田尤利は、私の人生に対する責任を取りなさい! (12/07)
このBLだけは読んでおけ!
人生を変えたBL第三回「窮鼠はチーズの夢を見る」 (10/27)
このBLだけは読んでおけ!
人生を変えたBL第一回「そして春風にささやいて」 (10/15)
このBLだけは読んでおけ!
『音無き世界』
何回も読み返してしまう私の愛蔵BL「音無き世界」 (07/31)
このBLだけは読んでおけ!
伝説のフジミシリーズ外伝CD 「じゃりん子チエ」のパロジャケットに萌え!? (06/30)
このBLだけは読んでおけ!
『ねじれたEDGE』
これだけは聴いておけ! 崎谷フリークなら絶対に聴くべきだ!  (06/07)
このBLだけは読んでおけ!
癖があるのがクセになる「麻生ミツ晃」 (05/30)
このBLだけは読んでおけ!
遥かなる影(CLOSE TO YOU)~平喜多ゆやさん~ (05/12)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 2月22日発売、Daria 2010年4月号 (03/08)
私のBL論!
崎谷作品のカタルシスとは? (03/03)
このBLだけは読んでおけ!
「濃い味のものはクセになる」んです<崎谷はるひ特集3> (02/23)
私のBL論!
すべてヘンだよボーイズラブ (01/13)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 12月22日発売、Daria 2010年2月号 (01/06)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 12月7日発売、GUSH1月号 (12/25)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 12月3日発売、GUSH 1月号増刊 GUSH moetto (12/15)
私のBL論!
遅咲きの初心者腐女子、リアルゲイの世界をリサーチしにいく (12/04)
このBLだけは読んでおけ!
すれ違い胸キュンLOVE! じらしプレイで萌えさせて! (11/30)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 11月7日発売、GUSH12月号 (11/16)
このBLだけは読んでおけ!
『キミログ』
新しくて懐かしい……恋のブログはいつもハイテンション! (11/10)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 10月22日発売、Daria12月号 (10/29)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 9月30日発売、drap11月号 (10/19)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 10月7日発売、GUSH11月号 (10/14)
このBLだけは読んでおけ!
『FLESH&BLOOD1』
大航海時代へタイムスリップ!冒険活劇BLファンタジー (10/08)
このBLだけは読んでおけ!
『FLESH&BLOOD1』
男たちの熱い生き様に惚れて下さい。 (10/07)
このBLだけは読んでおけ!
『トラブル・フィッシュ 潮&俊シリーズ』
異類婚姻譚?深海魚と人間の恋 (09/29)
このBLだけは読んでおけ!
『王子隷属』
魔物陵辱ファンは必読の異種姦ファンタジー (09/25)
BL未満ボーイズラブ以上
『南総里見八犬伝』
BLの先駆けは江戸ファンタジー文学にあり! (09/22)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 9月7日発売、GUSH10月号 (09/14)
このBLだけは読んでおけ!
『目を閉じないで』
嫌いな上司には総受けを! (09/01)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 8月22日発売、Daria10月号 (08/28)
このBLだけは読んでおけ!
『不運な不破氏の愛人契約』
ヘタレオヤジに妙な親近感 (08/21)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 8月7日発売、GUSH9月号 (08/17)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 8月3日発売、GUSH増刊 GUSH moetto (08/10)
このBLだけは読んでおけ!
『見つめていたい』
不倫オヤジの悲哀 あなたはわかってあげられますか? (08/07)
このBLだけは読んでおけ!
『ストレイ・リング』
マイベストオヤジ!右城操 (07/29)
私のBL論!
におってるオヤジが好きだ、ついリピートしたくなる…… (07/24)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 6月22日発売、Daria8月号 (07/09)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 7月7日発売、GUSH8月号 (07/08)
このBLだけは読んでおけ!
BLの本質は、ラブよりも涙なのだ! 号泣特集8 (06/16)
このBLだけは読んでおけ!
『夏の塩―魚住くんシリーズ 号泣特集7』
今も昔もやっぱり泣いた 榎田尤利 魚住くんシリーズ 号泣特集7 (06/12)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 6月7日発売、GUSH7月号 (06/08)
このBLだけは読んでおけ!
『ゴールデン・デイズ 号泣特集5』
時を超えた絆に涙。匂い系マンガの傑作 (06/05)
このBLだけは読んでおけ!
『永遠の昨日 号泣特集4』
号泣の作家といえば、榎田尤利をはずすことはできません! (05/29)
このBLだけは読んでおけ!
『スティール・マイ・ハート 号泣特集3』
あぁ、もどかしいーー!いじらしい愛の奴隷?状態に、涙が頬を伝う (05/19)
このBLだけは読んでおけ!
『窮鼠はチーズの夢を見る 号泣特集2』
水城せとなさんで号泣して放心して立ち直るまで (05/15)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 5月7日発売、GUSH6月号 (05/12)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 4月7日発売、GUSH5月号 (04/13)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 4月3日発売、GUSH増刊 GUSH moetto (04/09)
このBLだけは読んでおけ!
『是 1』
志水ゆきの絶妙な世界観に誰もが吸い込まれる! (03/31)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 3月7日発売、GUSH4月号 (03/10)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 2月7日発売、GUSH3月号 (02/17)
私のBL論!
「年の差」ゆえの「すれ違い」が…、それがたまらない!! (12/24)
私のBL論!
「小姓」と聞くだけで胸キュンが止まりません (11/29)
私のBL論!
非オタクとオタクの境界線は!? (11/26)
私のBL論!
男からの素朴な疑問「BLってポルノグラフティなの?」 (11/11)
私のBL論!
現実では癒すことができなかった魂の浄化をBLに求めるのだ! (10/11)

特集トップへ

特別企画
BLアワード2010
榎田尤利特集
BLアワード2009
崎谷はるひがエロい!
ここがヘンだよボーイズラブ
初心者特集
BLはファンタジーの王様です
オヤジ大解剖
号泣BL特集
2008年度ランキング特集
年の差特集
ヤクザ特集
木原音瀬特集

おすすめの記事
私のBL論!
BLファンタジーが成立する土台を検証する
BL未満ボーイズラブ以上
『南総里見八犬伝』
BLの先駆けは江戸ファンタジー文学にあり!
私のBL論!
におってるオヤジが好きだ、ついリピートしたくなる……
このBLだけは読んでおけ!
『石黒和臣氏の、ささやかな愉しみ』
世界のセレブ、犬の飼い方躾け方 私の選んだ愛ある鬼畜♪
私のBL論!
堺市の図書館BL騒動 禁書になった作品はコレ?