私のBL論!


「年の差」ゆえの「すれ違い」が…、それがたまらない!!
評者:あけみさん
年の差といってもシチュエーションはさまざま。
ご主人さま×従順な召使といった定番から、いい年したオヤジが子供にオヤジが攻められちゃう年下攻めと、そのレンジはとっても広~いんです。
今回は、特集コラム初登場のあけみさんに「年の差」とは何ぞや!を語ってもらいましたよ。

 “年の差”カップルと聞いて、まず思い浮かぶお話と言えば『禁じられた愛のことば』(作・柊平ハルモ イラスト・佐々成美)です。私を“切ない健気受け”好きにさせたのが、このお話ではないかと思っています。


「「年の差」ゆえの「すれ違い」が…、それがたまらない!!」 料理人の父と共に鷹来家に仕える高校生・三郷浅黄(みさとあさぎ)は、16歳の誕生日の夜、鷹来家次男・鷹来洋嗣(たかぎひるつぐ)から真摯な愛を告げられます。突然の告白に、自分の気持ちがはっきりしないながらも流されるように抱かれてしまうんです。

 いろんな意味で大人である洋嗣は、自分の想いを周りに隠そうとしないため、弟の雅水に即ばれてしまい、浅黄は暗に別れるよう迫られます。

「洋嗣は次男なのに?」とお思いでしょうが、長男はすでに浅黄の姉と駆け落ちをしており(だから余計に引け目を感じている)、実質的に洋嗣が鷹来家の跡取りだったんです。だから、雅水は兄と浅黄が付き合うことを嫌っていました。

 こうなると、使用人である浅黄の立場は弱く、家を出て行ったらうまく行くんだと短絡的に考え(この辺はまだまだ高校生なんですね)、それを実行するわけですが……。

 とこのように、受けの方が年下となる年の差カップルだと、健気受けになる傾向が強いような気がします。しかも、弱いように見えながらも、芯はとても強い。自分で何とかしようとがんばっちゃう。なのに、攻めの方は結構鈍感だったりするわけです。受けが「攻めのために、自分はどうしたらいいのか?」って考えていることに気が付かず、ようやく気が付いたときには行動を起こした後だった……って後悔したって遅いわけです。だから年下の年の差カップルって“健気受け”なんですよねぇ。

でも、ハッピーエンドを迎えたら大人な攻めだけに、幸せな将来が待っていることが想像出来るので安心して読めるし、こういうお約束な展開だとわかっていても、ついつい手に取ってしまうわけです。



 逆に、攻めが年下の年の差カップルとなると、攻めの年齢が高校生あたりになっちゃうので、あまり読んだことがないかも……と思い出してみれば、ありましたよ。

「「年の差」ゆえの「すれ違い」が…、それがたまらない!!」『NOW HERE』(作・木原音瀬 イラスト・鈴木ツタ)は、攻めが30歳の働き盛りで、受けがくたびれかけた50歳のオッサン。30歳なんて、世間だとおじさんに片足突っ込んでいるはずなのに、まだまだワカゾーに見えちゃいましたよ。



 遊び半分でちょっかいをかけたのが運の尽き。すっかりオッサンにすっかりはまったワカゾーでしたが、最初は自分が主導権を握ってるって思いこんでるわけです。オッサンは50歳になっても童貞で、恋愛経験などないに等しい男でしたから。なのに、こんなオッサンに手酷い目に遭わされちゃうワカゾー。

そりゃ、20年も生きてきた時間が違うし、酸いも甘いも噛み分けて生きてきていますからね、オッサンは。いつしか主導権を握られていて、思いっきり振り回されてました、ワカゾーが。

上手く弱点をついてくるんですね、オッサンの小狡さで。痛い目にあっても、なぜか諦めきれないワカゾーの方が健気でした。「捨てないで」って泣いて縋るほど惚れてたんです。

恋愛は「惚れた方の負け」ってよく言いますが、まさしくそれでした。



 受けが年下だと健気になっちゃうのに、年上になると、こうも立場が逆転するのかとびっくりしました。どっちかっていえば、攻めの方が一途に受けを愛しちゃってて。受けはそれをわかってて、利用してるって言うか。年齢が変わると、健気から強かに変わっちゃうんですねぇ。



 年の差カップルの面白いところと言うのは、いろんな意味でのふたりの立ち位置の違いでしょうか。年齢はもちろんのこと、そこから来るジェネレーションギャップだとか考え方の違い、職業とか役職とか。いろんな差の出てくるところが、醍醐味ではないかと思います。そして、そこから生まれるすれ違いが切ない方向に向かったりしたら、私の妄想は大爆発しちゃいます。



 王道だ、お約束だ、と言われようとも、それだからこそ楽しめる部分をたくさん持っている“年の差カップル” これからも、どんどん読んじゃいます。

紹介者プロフィール
あけみ
周りには腐女子だとカミングアウトしていませんが、
そろそろ家族にはばれているんじゃないか?と、
戦々恐々とした毎日を送っています。
それでも、BL中心の生活から逃れられるのは
まだまだ先のようです。

BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第七回「やってはいけないBL」 (01/28)
BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第六回「腐女子の住み分け」 (01/21)
BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第五回「BL編集者になるには」 (01/15)
BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第四回「BL作家になるには」 (01/07)
BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第三回「BL業界のスケジュール合戦」 (12/24)
BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第二回「BL書籍出版の骨組み」 (12/17)
BL業界がそんなに 楽しいわけがないっ!?
元編集関係者が語るBL業界事情 第一回「作家と編集の関係」 (12/10)
私のBL論!
愛する男たちの背丈の話 (04/25)
私のBL論!
お宝小冊子をゲットする4つの方法 (02/28)
私のBL論!
「リバーシブル」を考える ~その2~ 心の動きで考える (10/14)
私のBL論!
「リバーシブル」を考える ~その1~ 体の形で考える (10/11)
このBLだけは読んでおけ!
王道を確信犯で! (12/22)
このBLだけは読んでおけ!
榎田作品に漂う「死」の香り (12/17)
このBLだけは読んでおけ!
『交渉人は諦めない』
事実が真実とは限らない (12/10)
このBLだけは読んでおけ!
榎田尤利は、私の人生に対する責任を取りなさい! (12/07)
このBLだけは読んでおけ!
人生を変えたBL第三回「窮鼠はチーズの夢を見る」 (10/27)
このBLだけは読んでおけ!
人生を変えたBL第一回「そして春風にささやいて」 (10/15)
このBLだけは読んでおけ!
『音無き世界』
何回も読み返してしまう私の愛蔵BL「音無き世界」 (07/31)
このBLだけは読んでおけ!
伝説のフジミシリーズ外伝CD 「じゃりん子チエ」のパロジャケットに萌え!? (06/30)
このBLだけは読んでおけ!
『ねじれたEDGE』
これだけは聴いておけ! 崎谷フリークなら絶対に聴くべきだ!  (06/07)
このBLだけは読んでおけ!
癖があるのがクセになる「麻生ミツ晃」 (05/30)
このBLだけは読んでおけ!
遥かなる影(CLOSE TO YOU)~平喜多ゆやさん~ (05/12)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 2月22日発売、Daria 2010年4月号 (03/08)
私のBL論!
崎谷作品のカタルシスとは? (03/03)
このBLだけは読んでおけ!
「濃い味のものはクセになる」んです<崎谷はるひ特集3> (02/23)
私のBL論!
すべてヘンだよボーイズラブ (01/13)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 12月22日発売、Daria 2010年2月号 (01/06)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 12月7日発売、GUSH1月号 (12/25)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 12月3日発売、GUSH 1月号増刊 GUSH moetto (12/15)
私のBL論!
遅咲きの初心者腐女子、リアルゲイの世界をリサーチしにいく (12/04)
このBLだけは読んでおけ!
すれ違い胸キュンLOVE! じらしプレイで萌えさせて! (11/30)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 11月7日発売、GUSH12月号 (11/16)
このBLだけは読んでおけ!
『キミログ』
新しくて懐かしい……恋のブログはいつもハイテンション! (11/10)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 10月22日発売、Daria12月号 (10/29)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 9月30日発売、drap11月号 (10/19)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 10月7日発売、GUSH11月号 (10/14)
このBLだけは読んでおけ!
『FLESH&BLOOD1』
大航海時代へタイムスリップ!冒険活劇BLファンタジー (10/08)
このBLだけは読んでおけ!
『FLESH&BLOOD1』
男たちの熱い生き様に惚れて下さい。 (10/07)
このBLだけは読んでおけ!
『トラブル・フィッシュ 潮&俊シリーズ』
異類婚姻譚?深海魚と人間の恋 (09/29)
このBLだけは読んでおけ!
『王子隷属』
魔物陵辱ファンは必読の異種姦ファンタジー (09/25)
BL未満ボーイズラブ以上
『南総里見八犬伝』
BLの先駆けは江戸ファンタジー文学にあり! (09/22)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 9月7日発売、GUSH10月号 (09/14)
このBLだけは読んでおけ!
『目を閉じないで』
嫌いな上司には総受けを! (09/01)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 8月22日発売、Daria10月号 (08/28)
このBLだけは読んでおけ!
『不運な不破氏の愛人契約』
ヘタレオヤジに妙な親近感 (08/21)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 8月7日発売、GUSH9月号 (08/17)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 8月3日発売、GUSH増刊 GUSH moetto (08/10)
このBLだけは読んでおけ!
『見つめていたい』
不倫オヤジの悲哀 あなたはわかってあげられますか? (08/07)
このBLだけは読んでおけ!
『ストレイ・リング』
マイベストオヤジ!右城操 (07/29)
私のBL論!
におってるオヤジが好きだ、ついリピートしたくなる…… (07/24)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 6月22日発売、Daria8月号 (07/09)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 7月7日発売、GUSH8月号 (07/08)
このBLだけは読んでおけ!
BLの本質は、ラブよりも涙なのだ! 号泣特集8 (06/16)
このBLだけは読んでおけ!
『夏の塩―魚住くんシリーズ 号泣特集7』
今も昔もやっぱり泣いた 榎田尤利 魚住くんシリーズ 号泣特集7 (06/12)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 6月7日発売、GUSH7月号 (06/08)
このBLだけは読んでおけ!
『ゴールデン・デイズ 号泣特集5』
時を超えた絆に涙。匂い系マンガの傑作 (06/05)
このBLだけは読んでおけ!
『永遠の昨日 号泣特集4』
号泣の作家といえば、榎田尤利をはずすことはできません! (05/29)
このBLだけは読んでおけ!
『スティール・マイ・ハート 号泣特集3』
あぁ、もどかしいーー!いじらしい愛の奴隷?状態に、涙が頬を伝う (05/19)
このBLだけは読んでおけ!
『窮鼠はチーズの夢を見る 号泣特集2』
水城せとなさんで号泣して放心して立ち直るまで (05/15)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 5月7日発売、GUSH6月号 (05/12)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 4月7日発売、GUSH5月号 (04/13)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 4月3日発売、GUSH増刊 GUSH moetto (04/09)
このBLだけは読んでおけ!
『是 1』
志水ゆきの絶妙な世界観に誰もが吸い込まれる! (03/31)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 3月7日発売、GUSH4月号 (03/10)
この雑誌だけは読んでおけ!
雑誌レビュー 2月7日発売、GUSH3月号 (02/17)
私のBL論!
「年の差」ゆえの「すれ違い」が…、それがたまらない!! (12/24)
私のBL論!
「小姓」と聞くだけで胸キュンが止まりません (11/29)
私のBL論!
非オタクとオタクの境界線は!? (11/26)
私のBL論!
男からの素朴な疑問「BLってポルノグラフティなの?」 (11/11)
私のBL論!
現実では癒すことができなかった魂の浄化をBLに求めるのだ! (10/11)

特集トップへ

特別企画
BLアワード2010
榎田尤利特集
BLアワード2009
崎谷はるひがエロい!
ここがヘンだよボーイズラブ
初心者特集
BLはファンタジーの王様です
オヤジ大解剖
号泣BL特集
2008年度ランキング特集
年の差特集
ヤクザ特集
木原音瀬特集

おすすめの記事
私のBL論!
BLファンタジーが成立する土台を検証する
BL未満ボーイズラブ以上
『南総里見八犬伝』
BLの先駆けは江戸ファンタジー文学にあり!
私のBL論!
におってるオヤジが好きだ、ついリピートしたくなる……
このBLだけは読んでおけ!
『石黒和臣氏の、ささやかな愉しみ』
世界のセレブ、犬の飼い方躾け方 私の選んだ愛ある鬼畜♪
私のBL論!
堺市の図書館BL騒動 禁書になった作品はコレ?