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第1回 BL小説アワード

俺がアンドロイドをオークションに出品した件

エロなし/あまあま

あー、長文メールありがとう、母さん。それとさ。男性体のアンドロイドに走りそうな息子に、そいつとのデートのセッティングもありがとな。

ponnyan
6
グッジョブ

「本気なん?お前さぁ」
「あぁん?」
「見たよー俺、和希。お前、オークションサイトにユキちんのこと出品したっしょ?」
同クラの元山にいきなり問いかけられて俺は、昼飯のメロンパンをポロポロとこぼしてしまう羽目になった。
「本気で?頭沸いたの?和」
前の席の佐伯までが振り返り、珍獣でも見るかのような視線を向けてきた。
「悪ィかよ」
机の上のパンくずを払いのけながら、仏頂面で答える俺を元山は冷ややかに見下ろす。
「俺らがさぁ、ランドセルしょってた頃に、お前を迎えに来たユキちんを初めて見た時の衝撃を、俺は忘れないよ」
元山は眼鏡を直しつつ、記憶の中から当時の映像を再生していやがる。
「そうそう、あんな綺麗なアンドロイドそれまで見たこと無かったもんな。透き通るみてーな白い肌で、カレイドスコープアイで、銀色のサラっサラの髪でさ」
(それが問題なんだよ!佐伯。)俺は心の中で叫ぶ。
「まぁ、オクの出品キャンセルで、雨マーク付けられる和の姿が見れるワケだ」
眼鏡の奥でニヤニヤ笑いの止まらない元山を俺は睨みつける。
「ほっとけ!」
「だってよ。佐伯」
元山は俺から佐伯に視線を移すと、佐伯の肩に手を置いて
「和が次にオクサイト使いたい時に、評価ワリーって拒否られて、アカ貸してくれとか泣きついてきたら、お前、断われよ」
「オッケー。だって俺、ユキちゃんのファンだもーん」
元山を見上げる佐伯は、口元に余裕の笑みを浮かべている。
まったく幼馴染なんてヤツらは、俺の言動なんざお見通しってか!出品キャンセルするの前提で話を進めやがって。

「おーい、そこの3馬鹿。授業始めっぞー、席戻れー」
教壇から数学の清水の声が飛んでくる。いつの間にか昼休みは終了していたらしい。
元山はクルリと背を向け自分の席へと戻って行く。肩口でヒラヒラと手を振りながら。

ふてくされて机に突っ伏した俺の頭上に、トドメを刺すように佐伯の声が降ってきた。
「馬っ鹿だなー。ユキちゃんラブのクセに」
妙に優しさを含んだ声に顔を上げると、佐伯はとっくに前を向いて、授業用のタブレットPCに目を落としていた。

そうだよ!俺はユキが好きで好きで好き過ぎて、彼女も出来ない、童貞も捨てられない。とうとう最近じゃ、オナる時もオカズはユキという有様だ。
(どうすりゃいいんだよ?教えろよ!)
佐伯のやや華奢な背中に心の声をぶつけると、俺はもう一度机に突っ伏した。
(はあ〜ぁ、ユキぃ。)
目を閉じれば
「どうしたの?和希?」と優しく問うユキの心配そうな顔や、髪を撫でてくれる優しい手の感触が蘇る。
ヤバいんだって俺、それだけでもう、ムラムラしてくる。授業中だっつーの!

ポコン。

授業に集中する事も出来ないままのタブレットPCの、緊急用プライベートエリアにメール受信のアイコンが現れた。
ったく、授業中に誰だよ?

【あんた何やってんの?この阿呆!オクサイト見たわよ。ふざけんな!!
罰として今日の帰り、食糧の買い出しに行ってるユキの荷物持ちに行く事。それから途中でユキの好きなケーキ屋寄ってユキに奢る事。もちろん和希の小遣いでね。
オクは親権限でキャンセルしておきました。武士の情けでユキには黙っとく。反省しろ馬鹿息子】
あー、長文メールありがとう、母さん。
それとさ。男性体のアンドロイドに走りそうな息子に、そいつとのデートのセッティングもありがとな。

元々、たかが家事用アンドロイドに自分の美意識をぶっこんできたのは、この母親だ。
「だって、綺麗なものに囲まれて生活したいじゃない?」
俺らが小学生だった頃は、家庭用の人型アンドロイドの導入期で、彼らの外見をカスタムメイドするのは、例外的だったに違いない。
それをシレっと実行したこの母親が何者なのか、たまに身内の俺ですら疑問に思うが、子供の頃の俺にとっては、誰に見せても称賛の眼でみられるユキが、嬉しくて自慢で仕方がなかったのだ。

昔の俺のユキへの気持ちは純粋だったよな…微妙な気分でメールを閉じた俺は、ふいに気付いてしまった。
(授業、早く終わんねーかな)とそればかりを、心の底から願っている高校生の自分に。
早くユキを目にしたくて、触れたくて、ユキの万華鏡のような瞳に自分だけを映したい。
(病気だな、俺)

深くため息をついて屋外に目を向けると、窓から差し込んでくる陽射しは、ようやく秋めいて柔らかくなっていた。
そうだ、ユキは栗を使ったケーキが好きだったよな。男性体のくせに甘党なんて、これも母さんの好みの設定か?
モンブランの美味しい店って、どこだっけ?
どうせ、ユキにどの店に行きたい?と問いかけたところで「和希にお任せしますよ」と答えが返ってくるに違いない。デートにリサーチは必須項目だ。たとえユキがネギの入った袋をぶら下げていたとしても。

こうして午後の2限をデートコースの選定のために費やした。

「何、赤い顔してんだよ、和。いまさら日焼け?」
「ちげーよっ」
昼休みの続きで俺をイジりにやってきた元山を尻目に、大急ぎで帰り支度をする。
「あれっ?今日いそぐんだっけ?和」
「悪ぃ佐伯。急用できた」
「おお、気をつけてな」


「なぁ、もっちん」
「なんだい、サエちゃん」
「サエちゃん言うな。アレはさ、和は多分さ、さっき光の速さで帰って行ったのは、ユキちゃん絡みだと思うワケよ、俺は」
「だろうなぁ、サエちゃん」
「だからサエちゃん言うなって。まぁユキちゃんへの気持ちを持て余して、オークションにかけちゃうっつーのも、如何なものかと思うけどな」
「あり得ないくらい極端だよな、和らしいけど」
元山は、帰宅部にしておくには惜しい程の、がっしりとした肩をすくめてみせる。
軽く胸の前で腕組みをした佐伯は、思案気につぶやく。
「今みたく犬ころみたく飛んでくのも、それはそれで心配なワケよ、俺としては」

和希が走り去った道のりをたどる様に、元山と佐伯のふたりはダラダラと帰途についた。3人揃って帰宅部の幼馴染たちは、普段から学校でつるみ、学外でもつるむ。だから2人にとってもユキは、旧知の友人のようなものだ。

ややあって元山が、いつになく真剣な面差しで口を開く。
「佐伯、お前、誰かがお前の側にずっと、10年近くも一緒に居てくれて、お前の全てを肯定して、受け止めてくれて、ただひたすら、お前だけを見守ってくれてたら、そいつを好きにならずにいられる自信あるか?」
「あー、まぁ無理だよね」
「まして、そいつは誰もが振り返る超絶美形だぜ?」
「ユキちゃん男だけどね、一応」
(というか、その前に人間じゃないけど…)
「さらにはだ。自分がヤラして!ってお願いしたら、たぶん絶対に拒否らない。どうよ?」
(こいつの言いようは身もふたもないな…)

佐伯は思わず立ち止まり、空を見上げる。秋の夕暮れは思いのほか早く、青空に程よく混じり合った雲が、黄金を含んだ赤に輝いている。
佐伯はふと記憶の奥底から、中坊の頃みんなで行ったキャンプの夜の光景が蘇ってきた。焚き火を写したユキちゃんの瞳もあんな感じで、自分ですら見惚れてしまったのだ。あの頃は俺ら、ユキちゃんの肩っくらいまでしか身長なかったよな。
足元に目を落として、改めてつぶやく。

「そういうコトだよな…」

「サエちゃん、なに深刻な顔してんの?そういう事ってどゆこと?」
元山は少し屈んだ姿勢で、佐伯の俯いた視界に割り込んできた。
(コイツなんざ、今ではユキちゃんよりデカくなりやがって。サエちゃん言うなよ。ムカつく)

「なあ、俺らがぐるぐる考えたところで、あの和とユキちんの問に干渉できると思うか?」
「思わないけど」
「和のは、イロイロわかった上でのアレだと思うぞ」
(ユキちゃんはアンドロイドで、AIで、男性体で。それを1番理解してるのは、他ならぬ和なのだ。)

「それでも、俺が心配しちゃダメかよ」
「うんにゃ、ダメじゃねーよ」
元山は佐伯の背中をポンポンと軽く叩くと
「そういうトコ、サエちゃんらしいよね」
「だから、サエちゃん言うな」
肩から下げていたカバンを軽く振り回し、佐伯は元山に逆襲を試みる。が、いつものニヤニヤ顔に戻った元山はヒラリと身を翻し、軽くかわされてしまった。

待ち合わせたスーパーの出入り口で佇むユキは、毎度のことながら行き交う人々の関心を集めていた。
端正な顔立ち、しなやかな肢体。おだやかなユキの性格が端々にも見てとれる立ち居振る舞い。
その言動や行動は、俺の想定をはるかに超えていく母親の、審美眼は俺のどストライクなのだ。

「ユキ!」

手首のウェアラブル端末から視線を上げて俺の姿を認識したユキは、花がほころぶ様な笑顔を浮かべた。
手にしたエコバッグからは予想通りネギが見え隠れしている。
「今日の夕飯なに?」
「スキヤキですよ。だいぶ涼しくなってきたから」
「やりぃ!肉!肉」
「野菜も食べてくださいよ、和希」

我が家の家族にバランスのとれた食生活を提供する、それはユキにとって最優先事項のひとつだ。
「果南さんから、買い物の後は和希にスィーツでも奢ってもらってきなさい、という確定事項メールが来ましたが、どのような理由が?」
「んー何だろうな?いつもの思いつき?ま、いいじゃん。俺、たまにはユキとお茶したいし」
少々ひきつった笑顔を浮かべながら、午後の授業中、作戦を練って選りすぐったカフェへと、ユキを連れて向かうことにした。

「こんなところにケーキショップがオープンしていたのですね」
明るい店内を見渡しながら、ユキは楽しげに笑う。女子客が高比率のこの店で、俺が非難がましい視線を浴びずにすむのは、ユキと一緒にいるおかげだ。
女性陣の興味津々の熱い視線は、子供時代の、周囲の羨望の眼差しにすぐテンションの上がった自分を思い出して面はゆい。

予想通りにユキがチョイスしたモンブランは、俺にとっては甘すぎ、かつ大きすぎて3分の1を残したところでギブアップとあいなったが、ユキは
「残りは私がいただきますね」とにっこりと微笑んだかと思うと、あっという間に完食してしまった。

銀色のフォークを器用に操る指の動きをたどり、クリームのついた唇を軽く舐める仕草を眺めているうちに、ユキの細い身体を抱きしめたい欲求が頭をもたげてくる。
世の男どもは、彼女とお茶したり食事を共にしたりすると、こんな気分になるんだろうな、間違いなく。

悶々と思いを巡らす俺にユキが声をかける。
「和希、夕飯の支度をするのにタイムリミットです。さあ、家に帰りましょうか」
席を立とうとするユキに先んじて、飛び上がるように椅子を蹴ると、重そうなエコバックに手をやる。
「俺、持つし」
「どうしたんです?和希。スキヤキ、嬉しい?」
「そういう訳じゃ…」

元山や佐伯をはじめとした男友達と過ごすことが優先で、女子と話す機会もそう多くはない俺は、男同志じゃれ合うような、お互い『対等』な距離を保った関係が楽しい。
ぶっちゃけ、彼女をつくるよりも男どもとつるんでいる方が楽なのだ。もちろん健全な肉体を持った高校男子としては、ヤリたい気持ちは募るけど。

でも、久しぶりにふたりきりでユキと外出した今日、
身体の、心の奥底からユキに優しくしたいと思った。ユキへの想いをこじらせ、勢いでユキをオークションに出してしまった負い目を差し引いてもだ。

自分のウェアラブル端末で会計をするために、レジ前で立ち止まった俺の横で、ユキはショーケースに並んだケーキを愛おしげに眺めている。そんなユキを目にして俺の頬も緩みっぱなしだ。
「ユキ、母さんにケーキ選んでくれる?」
ぱあっと明るさを増した笑顔でユキは
「果南さんにお土産ですか?私が選んでも?」
「もちろん。だって俺、母さんのケーキの好みなんて知らないし」
「果南さんはクリームチーズベースのがお好きですよ。あっでも、シーズン的にはショコラ系の方が良いのかな?ショコラもお好きだし、ハロウィン仕様、可愛いですよね」
「あー、くちびるの端っこにチョコ付けてる姿は良く見るかもだな。口紅、直すのめんどう!とか無駄に騒いでるよな」
「お母さまに対して暴言ですよ、和希」
俺を軽く睨んでユキは、再度ショーケースの品定めに余念がない。
(あーもうっ、ユキ以上の嫁なんて絶対いない。無理!)
会計の準備をするフリをして俺は、端末でこっそりユキの姿を写メる。きっと明日には、待受けにしたこの写メをネタに、元山に散々イジられる事になるのだろう。

しゃーないじゃん。俺の世界はユキ無しでは廻らない。アンドロイド上等だ。



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【追記;裏設定など?】

この物語は途中です。
5000文字にてんで入りませんでした(笑)

和希が不用意にオークションサイトにユキの写真をさらしたため、その容姿からセクサロイドと勘違いをされたユキは、アンドロイドの窃盗犯に狙われたり?

実は母[果南さん]は、ユキの開発者だったり?

できれば終盤、ふたりにエロい事をさせたかったり?

ついでに元山は佐伯が好きだったり?

一応、5000文字では思春期ぐるぐるの和希が、開き直るところまでとさせていただきました。
ので、幾分、唐突に終わっていますが、よろしくおねがいします。

ponnyan
6
グッジョブ
7
itoko 15/11/06 21:10

続き気になる(´`)和希がユキちゃんにどうやってアタックしようか悩んでるのが可愛かったです

itoko 15/11/06 21:42

続き気になる(´`)和希がユキちゃんにどうやってアタックしようか悩んでるのが可愛かったです

ponnyan 15/11/06 23:08

うあああああっ!投稿したものです。
【追記】はちるちる編集部さま宛に書いたつもりでしたのに、一緒に掲載されてしまった(汗)
恥ずか死ぬ、、、スイマセンすいません。初めて小説書いたので、ぬるい目で見てやってください。

ふうちゃん 15/11/07 11:05

読みやすいし、とてもおもしろかったです!続きが読んでみたくなりました。タイトルもいいなって思いました。

hanaママ 15/11/09 09:55

タイトルに惹かれて読みました。面白いです。続きが読みたい‼

ponnyan 15/11/10 23:49

ふうちゃんさま、hanaママさま、続きが読みたいとおっしゃっていただき感激です!
文章書いてみたら、意外と楽しくてww
どこかで続きを上げれるといいな・・・と野望がっ(笑)
ブログとかも作ってないし、作ってもすぐ更新しなくなりそうです。無精者なの、私。

恥の上塗りついでに、続きは

「俺のアンドロイドが強奪されかかった件」
「俺がアンドロイドに翻弄されまくった件」
「俺の幼馴染たちがとうとう出来上がった件」

です。思い浮かんだシーンを適当に文章にしているだけなので、全部が全部途中という
体たらくです(^_^;)

ponnyan 15/11/11 00:09

itokoさま、最初にコメいただき有り難うございます。
和希は猪突猛進型vsユキは天然(んっ?アンドロイドに天然ってヘン?)です。

高校生のあわあわした感じを出したかったので、可愛いと思っていただければ本望です。
「翻弄」では和希が少し大人になってる予定です。

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