特典付
はじめに余談ですが、表紙のカラー絵が線の滲みまで見て取れる、手塗り感溢れる仕上がりで、手描き大好き人間はテンションが爆上がりしました。それとも最近のデジタルは、そこまで再現できるようになってたりする……?
さて、本題。先行レビュアーさんもおっしゃっているように、表紙とタイトルと帯がある意味でミスリードをしています。なので、表紙で妄想を膨らませすぎないほうが良いかもしれません(主にエロ的な意味で)。
国の守護役を降りようとしている龍と、国のために、龍の要求に従ってその伴侶となることを決めた王弟(軍人)の物語。帯には龍×王弟と書いてありますけど、実質受け攻めなしです。
読後の感想は、あー、なるほどーー、こうきたかーーー、という感じでした。事前にエロなしとの情報はつかんでいましたが、お相手がそもそも、三大欲求すら存在していない生物だったとは。というわけで、異種婚姻譚と言いつつ、性愛的な要素はほぼ皆無。ブロマンスではなくBLを標榜する作品で、それはかなり珍しいのでは、と思ってしまいましたが、私はこの作品、ちゃんとBLだと思いました。が、ここが受け入れられないという方も、きっといらっしゃるでしょう。
そんなわけで、そもそも生物としての折り合いを付けるところから始まる二人のお話です。この辺がヌルくない。そこらの異種婚姻譚でうやむやにされがちなところを、キッチリ描いてくれています。
表紙が詐欺でなくミスリードと言ったのは、実際にこういうシーンがあるからですが、それはエロいというよりむしろ痛いシーン。主人公が龍の眷属として体を作り変えられるに当たり、鱗を体内に埋め込まれる。麻酔無しで腹を割かれて異物を埋め込まれるわけですよ。そして、馴染ませるために龍になめられて大量の唾液を浴びせられる。主人公が感じているので、この辺りがエロ的な萌えどころと言えば萌えどころですが、ビジュアル的には完全に食べ物的意味で喰われているので、あんまり萌える余地はないかも。
主人公や読み手からすると、主人公が龍の伴侶になると決めた直後にこの展開が来てえええええ、となるのですが、のちのちこのシーンの裏事情が、龍視点で語られます。
最初は、人間とは考え方も在りようも全く違い、理解し難く恐ろしいばかりだった龍の側の事情と気持ちが徐々に明かされてゆく。このあたりが物語のキモになります。
主人公は途中、国の守り神であるはずの龍が、何かを守るという発想を持たないのではないかと疑い、その振る舞いに疑問を持つのですが、これは正解。
「天災が人に興味を持つなど、哀れなことだ」
これは物語のキーパーソンとなる「姫」(王弟の遠い祖先で、龍が人間に興味を持つきっかけになった人)の独白ですが、この台詞が龍の本質を言い当てている。龍が憧れを抱くのも宜なるかな。
龍という種族にとっての人は、人にとっての虫なんかと同じような存在なのでしょう。基本的に意思の疎通もできないし、共に生きるには儚すぎる存在で、殺してもなんとも思わない。そんな龍という種族の中で、それでも人という生き物と、人が人を守ることに興味を抱いたこの龍が、変わりダネだというオチなんですね。
そして変わりダネ故にそれを共有できる相手がおらず、孤独を抱えているわけなのですが、そんな龍の心情に思いを馳せたのが、少年期の王弟。龍はそんな彼ならば自分の孤独を埋めてくれるのでは、と期待し、ひっそり執着していたわけですが、敵国の神から受けた呪いで王弟が歳を取るようになり、焦りを覚えてなんとか自分のものにしようと行動に出た結果が、伴侶として自分のそばにいろ、という要求+前述の人体改造だったわけです。
しかもこの人体改造、「逆鱗」を使ってるんだとか。それ、一枚しかない上、普通、触っただけでやばいヤツですよね……?それ引っぺがすとか、どんだけ……?そして、改造中も失敗したらどうしようと手が震えてるとか。必死か!……やべえ。こいつ思ったより可愛いぞ。最初の頃の威圧感はどこへやら、この龍、後半、完全にワンコと化します。
王弟の側も、長命の呪いの効果は薄れたとは言え、それでも通常の人の法則からは外れた存在で、はみ出し者の孤独を感じる身。描かれる周囲は彼に十分好意的ではあるのですが、誰とも番うことのできない孤独は抜き難くあったわけで、龍の存在は図らずも、その孤独を埋めてくれるものだった。お互いの孤独をお互いの努力と思いやりによって埋め合うこの関係は、十分に愛の名に値するのではないか?
そもそも、生き物としてのあり方が違う存在同士が、互いのあり方を理解して、歩み寄って共にいようと努力する。これって、愛の本質なんだと思うわけですよ。それがちゃんと描けているので、この作品は十分いい作品だと思いますし、BLと呼んで全く差し支えないと思うのです。が、それ以上に、異種婚姻譚として思ったより深く踏み込んでいてくれたところが物語として面白かったので、若干甘いかなあ、と思いつつ、神評価で行かせていただきます。
しかし、読み終わってもサブタイトルの意味がよくわからない……。どこが亡国?
表紙だけ見て おっ、触手モノかな??と思ったのですが違いました。
スライム触手かと思ったら龍の爪でした。
和モノファンタジーで人外攻め、いいですね。
無性の攻めって初めてだったのですが、好きです!
挿入こそないものの、性行為の真似?みたいなことがあって、ちょっとエロかったです。
最初は、龍のことを不気味で怖い存在だなと思っていたのですが、受けと出会ってから表情がコロコロ変わっていくところが可愛い!!と思いました。人間の姿になった方が気安く接してくれると気づいたときのニカーって笑顔が、良い…。
人々と接することができない孤独な龍と、王家の血筋だから歳をとるのが遅い孤独な受け(250歳)。どちらも同じような寂しさを感じてる似たもの同士の話です。夫婦になれて本当に良かったね…。お互いの救済って感じです。
陛下であるお兄さんも良いキャラしていて好きです。あんなに小さな容姿をしていたのに、最後は年老いて…。何百年たったのだろう。
書き下ろしが特に好きで、夫婦感が増してました♡
一言でいうと、仲間や家族などの「絆」の本。
BLという枠に収まらないような大作で、素敵でした。
表紙が、堅物軍人が触手責めを受けるみたいなエロ系かな〜と思い買いました。
読み進めていくうちに、どうやら本編よりも表紙がエロい系か…?と不安がでてしまったのですが、結果的には大満足しました。
表紙のは触手ではなく、龍の爪だったようで、コミックの帯によって触手に見える仕様です。
本編について、はじめは簡単に人と龍の違いから進め、お互いを理解し合える中になっていったが、実は真に理解できていなかった…。という感じでした。
普通の人外BLなら、お互いの違いを認め、分かり合える中になってエンド!ですが、この作品はまだ相手のことを知っているようでまだ知らなかった…と、異種間との交流を掘り下げて描かれていました。
また、その知らなかったことが、王族出身で軍隊長(軍のトップ)の主人公が今まで守ろうとしていたこととも深く関わっていたことで、彼は悩みます。
守るべきものが何なのか…と国を守る立場として、揺れます。
その悩み苦しんだ先に出した、責任ある答え、言葉に震えました。1番の山場です。カッコよかった!
設定やストーリーがよく練られていて、一味違う、大人な人外BLものです。
人物のタッチは青年誌に近いです。好きです。
自分の中のエンディング主題歌は「浪漫と算◯ LDN ver.」です。
2019年刊。
このコミックに興味を持ったのは、ちるちるの作家インタビューの記事内で、ヒト形の龍が主人公と添い寝するシーンの幸せそうな笑顔に惹かれたのがきっかけだった。
いつ頃の時代かどこの国(大陸)か、登場人物の名前もないのに、一つの物語としてまとまっている。
しかもエッチシーン無し!!
これをデビュー作として引っ提げてくるとは、何だか作者が只者ではない予感がする。
唯一肌を見せるシーンといえば龍が主人公の体内に鱗を埋め込むシーンのみだが、些細な一コマでも萌えを感じるBL脳があれば問題ないのだ。
個人的には龍の爪に身体を掴まれている主人公ってアングルの表紙が好きだな。
主人公に頭からかぶり付いたり、着衣のまま湖?に落として熱を冷まさせるってヘビーな愛情表現だねぇ。
龍がヒト形になっても根本の体格差とは異なる大きさの違いもいい。
ただ、最初に龍が主人公の事をお前、貴方と定着していない点には引っ掛かったかな。
しかし、肝心の話については一読だけで理解するのは難しかった。
子孫を残す目的もなく三大欲求とも無縁だと龍に言い切られると、じゃあ何の為に伴侶を欲するんだ!!となってしまう。
何度か読んでいると、主人公と兄の間にある"かけがえのない人に先立たれる不安を感じる"という心境に切ないものを感じる。
自分の場合、そこから人が人生の中で欲するものの本質ってのは、じっと誰かに寄り添いたい、寄り添って欲しいって願望だと行き着いたがどうだろうか?
性欲とは違う愛。
それが龍の欲したものなのだろうか?
と、見当違いな解釈でなければいいのだが。
ちなみに龍が初めて"人"を意識したのは主人公の先祖に当たる姫となるが、彼女にはフラれているんだね…(^_^;)
そんな龍にとって幼かった主人公を見つけ出し見守る中で、人には死が直面すると知ると急いで眷属にしたいと焦ったり、力加減を知らずに躊躇したりと何て情の深い龍なんだ。
そんな龍の一挙一動には可愛げが増してくる。
龍の伴侶になると腹を括った主人公にもそんな姫の誇りを受け継いでいて、そんな彼を選んだ龍の審美眼には恐れ入った。
読めば読むほど深いものを感じ取れる一冊だった。
(評価は神寄りです)
世界観も展開も練られていてぐいぐい引き込まれます。
ホントにデビュー作なんでしょうか…?
一般紙で活躍している作家さんと言われたら納得するレベル。
物語としてとても面白かったです!!!
描かれているのは恋愛感情とは少し違うかな?と思いました。
性交渉シーンもありませんし、
そもそも龍が人知を越えた存在なので感情の概念そのものが違うのですね。
がっつり恋愛!って感じではなかったですが、
龍と軍隊長との心の交わりは非常に良き…!
兄弟の絆を感じられるところもかなりグッときました。
※ちなみに一応攻め受けがあるようですがエロ自体も性的欲求もなしです。
さてさて。
お話は龍を守護神と崇めるとある国が舞台となっています。
というのも何代も昔の先祖が龍と話すことが出来て、
龍の加護により王族のみ長寿(250歳ぐらい)の家系になっているのですね。
国王の見た目はまだまだ少年の姿をしていました。
表紙の彼は国王の双子の弟です。青年です。
本来なら国王と同じ年の取り方をするはずが、争い時の因果で成長するようになってしまった。
今は王族を離れ、軍隊長として兵の先頭に立ち国を守っています。
そんなある日、龍神が「もう国を守らない」と伝えてきました。
国王の説得は一蹴され、代わりに軍隊長を寄越せと…。
軍隊長が龍神に話をつけにいくと龍神から伴侶になるよう求められました。
これが国を守る条件だとつきつけられ軍隊長は覚悟を決めます。
軍隊長は龍神の側で生活を始めました。
しかし龍神の話を聞けば聞くほど、崇められてきた言い伝えとのギャップが増すばかり…。
本当に龍神が国を守ってきたのか?
龍神が軍隊長を伴侶に選んだ理由は?
この国の未来は?
ーーーと展開していきます。
私の語彙では上手くまとめられないので興味ある方は読んで下さい!!!
夫夫生活を始めても最初は概念そのものが違いすぎてすれ違いばかり。
けれど一緒に生活すると見えてくるモノがある。心に触れる瞬間がある。
間にある微妙な空気が段々暖かいものに変化するのがすごく良きなのですよ…!
龍神は人型になる時もあるのですが、
最初は姿形を整えても禍々しいオーラで"人"になりきれず。
けれど軍隊長と生活を共にして徐々に人と変わらない笑顔になるのがグッときます(;///;)
で。龍神が軍隊長に拘った理由。
龍は本来なら破壊のみを楽しんでいたのですね。
けれど偶然龍と話せる人間に出会い
人と人が愛を紡いでいるのを知ってしまった。
そして同じような愛を求めてしまった。
欲しくても手に入らないことで孤独も覚えてしまった。
人との関わりに飢えていた龍神は、
軍隊長の何気ない一言に可能性を求めてしまったのですね。
龍神のモノローグには涙腺が緩みました。
また軍隊長も心のどこかに孤独を抱えていたんでしょうね。
兄である国王も、兵達も、皆軍隊長を慕っている。
けれど沢山の人に囲まれているのに置いて行かれてような感覚を抱えていて。
だからこそ龍神の孤独さに共鳴した…というのかな。
上手く言えないんですけど孤独が精神的な繋がりを強くしたように思えました。
それが恋愛感情かどうかまでは読み取れませんでしたが、愛情を感じます。
また兄弟の絆も良かったです!
というか国王ですよ。愛弟が龍神の伴侶になる前も後もずっと気に掛けていて…(;///;)
龍神へ敬意と畏怖を抱いているのに、弟を守る為なら刃向かう気があるとこが良き…////
1読目より2読目3読目…と重ねると更に面白かったです。