表題作not made of sugar

あらすじ

イエスノーシリーズ設楽と栄、
イエスノーシリーズ竜起となっちゃん(と設楽と栄)、
イエスノーシリーズ潮と計(と潮と設楽)、
イエスノーシリーズ竜起の家族の話(となっちゃん)、
の甘ーいお菓子にまつわるショートストーリー4編

作品情報

作品名
not made of sugar
著者
一穂ミチ 
イラスト
竹美家らら 
媒体
小説
サークル
MICHI HOUSE〈サークル〉
ジャンル
オリジナル
発売日
5

(3)

(3)

萌々

(0)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
1
得点
15
評価数
3
平均
5 / 5
神率
100%

レビュー投稿数1

スイーツまみれのイエスノー

イエスノーシリーズの面々の連作短編集。
それぞれ甘ーいお菓子が鍵になっています。


a cloud in the far distance 11p
設楽&栄の熱海ドライブデート。
同人誌「誘惑してくれ」のあと、春先の休日を描いた一編。
奥さまの奥様のための安産お守りを手に入れ届けるという口実での熱海デートです。
お菓子とは縁がなさそうな2人にどんなスイーツを?と興味津々だったのですが、なるほど!というチョイスでした。
春先の熱海日帰りデートコースガイドかと思うくらい設楽のエスコートぶりがスマートで、お仕事だけで身につけたとは思えません。
空白の11年間が気になるところです。
本編、栄が初めて設楽の瞳の色に気がつくシーンが印象的でした。
というのも他のBLと比べて容姿の描写が少ない一穂作品の中でもこの2人の物語は特にその傾向が強いから。
設楽なんて外見についての言及がほとんどありません。
それは多分、栄の興味が設楽の容姿より考え方ややり方に興味があったからだと思うのです。
そんな栄が相手の瞳の色に気づくくらい設楽を見つめているのかと思うともう…。
春ですね、という感じ。

いつもは飄々とした設楽の折れない強さ、意地みたいなものもさらっと描かれていて、戦う男の格好良さが滲み出ていました。
この短編、好きだなあ。

マチネのぼうけん p14
こちらはスイーツてんこもり。
時間軸としては上記作品後、栄が設楽の番組に異動になる直前の3月。「ふさいで」と「つないで」の間の話です。

まず登場するのは竜起となっちゃん。
設楽が仕事場に連れてきた奥さま家の長男の世話を2人が引き受け、3人で奥さま家のためのVTRを作ることになります。
ちょっとした社会科見学みたいなノリで楽しそう。計もちょっとだけゲスト出演しています。
弟ができることでナーバスになっている小さな男の子の気持ちをさらっと引き揚げてあげる2人の姿は読んでて気持ち良いです。
この2人のスイーツは、長男くんからのプレゼント。
無事に長男くんのぼうけん@TV局が終わり、おうちに帰るべくことになるタイミングでお世話係は設楽にバトンタッチ。帰路でばったりあった栄と長男くんも面識があることが判明するのですが、詳しいことははぐらかされます。
その時のなっちゃんの距離の取り方が、働く大人の気遣いに溢れていて、とても素敵でした。
無理に暴こうとしない、お互いの境界を踏み越えないデリカシー。
とはいえ竜起は興味津々のようなので、今後彼らから見た設楽&栄がどんなふうになるのか、気になるところです。

さて子供は帰り、奥さま夫婦が甘い子供のお菓子で色んな気持ちを噛み締めているころ、若い大人2人は、プレゼントされた子供のお菓子で、若い大人の甘い時間を過ごします。

締めは一番アダルトな設楽と栄。
甘いお菓子はお預けですが、お菓子より甘ーい大人時間。
あとほんの少しで栄と一緒に働けるようになることに浮かれている、子供みたいな設楽か新鮮で可愛い!
ただ、栄は設楽の番組だからこそ、失敗したくなくてちょっと不安にもなっているところがちらりと出ていて、それが、「つないで」に繋がります。

デイ・ホワイト
時間軸は、「おうちのありか」での一大事件が終わり、潮が新居に引っ越す前あたりのホワイトデー前後。
こちらはそんな時期の潮と計の話…なのですが、前半部分は潮と設楽の話でもあります。

計のお使いでホワイトデーのお返しの品を買いに行った潮が、同じくお返しを買いに来た設楽とばったりあって雑談するシーンがあるのですが、短いながらもそこでの会話がとても印象的で。
考えてみればこの2人、実はお互い計より長いお付き合いなのですよね。そういえば、設楽と潮の出会いってチラッと経緯は説明されていたものの、まだ詳しくは描かれていないし。
設楽の過去も気になっていたところで、この短編を読んで、設楽と潮の関係性も興味深いなあと思いました。もっと二人の会話が読みたい。
それはそれとして、あの計ですら掌で転がす、包容力抜群のスパダリ潮から見ると、設楽の本命になるのもされるのも両方大変そう、らしいです。
そう思うと、一見設楽じゃないと手に負えない栄を設楽が支えて甘やかしているように見えて、案外栄じゃないと手に負えない設楽を、栄が受け止めてあげているのかもしれません。

さてそんな事が起きている裏で(?)、計はホワイトデー前夜もお仕事です。
とある甘酸っぱいお菓子をお料理番組で作りながら、いつも通りの鉄壁の国江田さんをやっている計。
でもそんな国江田さんの姿で、計として本音で語っていそうなところを潮はTVを通じて観て、それを自分へのメッセージとして受け止め、いろいろあった中で変わっていく自分と計のことに思いをはせます。

番組では完璧にお菓子を作った国江田さんですが、ホワイトデー本番は結局計ではなく潮作の同じお菓子で迎えます。潮のこのスパダリぶりよ。
なんなら潮はその手作りの品をもって祖母を訪問し、代わりにとある銘菓をもらって帰ります。
そんな甘いものを口にしつつも、一番甘くて美味しいのはお互いの存在なんだろな、というところでの幕引きです。

ぼくの兄を紹介します
最後は軽やかに竜起メイン。
竜起の弟視点で、子供の頃の竜起とその母親のエピソードが語られます。
弟の目から見ても神さまに愛された男竜起の竜起らしい姿が生き生きと描かれています。
兄がそんなだからこその弟の今、を味わえるスイーツをお土産に最後は竜起となっちゃんで締め。
最後、なっちゃんの兄弟構成が明かされるのですが、何やら色々ありそうで、いつかそのあたりのお話が読めそうな感じです。

2

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