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表題作君は優しく僕を裏切る

澄田正嗣,エリートサラリーマン,27歳
会沢優美(少年B),謎の少年,15歳

同時収録作品愛は優しく復讐する

穂村昌樹,刑事,28歳
四郎,路上販売をする少年,18歳

あらすじ

澄田正嗣は将来を嘱望されるエリート商社マン。
だれもが羨む正嗣の秘密―それはゲイであること。
ある夜、正嗣は一人の少年を拾う。
痩せた体に整った顔立ちの少年はBと名乗るだけ。
「あんた…優しい?」自ら誘いながら、愛撫には不慣れなB。
正嗣はやがて昼間の現実より、素性の知れない少年Bとの生活に溺れていくが…。
愛が罪にすり替わる瞬間を鮮烈な筆致で描く、傑作問題短編集。

作品情報

作品名
君は優しく僕を裏切る
著者
剛しいら 
イラスト
新藤まゆり 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199004384
3.6

(3)

(0)

萌々

(2)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
11
評価数
3
平均
3.6 / 5
神率
0%

レビュー投稿数3

まるでドラマのような

大きく2作品収録。

「君は優しく僕を裏切る」
実家は裕福で、親に東京でのマンションを買ってもらい商社に勤務する27才。
両親は結婚を催促するが、彼は公園やそういう店で好みの男を誘って家に引っ張り込むゲイだ。
その日も彼は自宅そばのハッテン公園で寂しげな少年を拾って部屋に上げたのだが…
…と物語は進みます。
彼・澄田正嗣(まさつぐ)は育ちがいいのか、警戒心が弱いのか、相手の素性など何も気にせず行きずりの関係を繰り返していたが、その日拾った少年「ビー」に懐かれ、初めて恋のような温もりを感じ始める。しかし。
正嗣は未成年への監禁/恐喝/強制わいせつで逮捕されてしまう…
正嗣が全てを失っていくさま、それでも被害者意識を持たないさま、逮捕劇の真相などが淡々と記されます。
人を愛したことで裁かれるのは理不尽だ、だから恐れなくていい。ただ、自分がもっと大人だったらビーを苦しめなかったのに…
そんな考え方をする正嗣に驚くような、感心するような。
ひとの心持ちの不思議を見せられるような、そんな物語です。

「君は優しく愛を欲しがる」
その後の日常で、再び会うようになった正嗣とビー。
愛を裁くのは誰なのか。裏切りは誰に対して?正嗣を選んで母を裏切るビーはまだ若く、2人の未来はまだ不透明…

「愛は優しく復讐する」
違う設定での中編。
私はこちらの物語が断然面白かった。
主人公は神奈川県警の刑事。
あるホームレス殺人の現場で同じく刑事だった兄の不審死現場と同じ状況を見つけ、手がかりを追っていく…という物語。
関係者を追う中で出会うアクセサリー作りの青年とのつながり、その刹那な感覚。
ホームレス殺人の進展はあるが、それが兄の死とつながるかはまだ不明。殺人事件の解決はまだこれからだし、青年の正体、兄と会っていた男、それらの解明は無いままで物語は終わってしまうけれど、まるでドラマや映画を見ているような臨場感がサスペンスを煽ってくる。
BLというより映像作品の原作、といった趣き。

1

愛が節目になった、二話。

二話とも、推理というか人情しんみりのサスペンス。

▶君は優しく僕を裏切る
 正嗣とビー。ビーの母が、息子を取られまいとして嘘の罪状で訴訟を起こす。正嗣の冤罪をビーが証言。
 
▶君は優しく愛を欲しがる
 二人で会えるようになった正嗣とビー。 ビーは、正嗣との愛を選んだ為に、母を裏切っていることに気づいて居ない。・・というオチ。

▶君は優しく復習する:別の話。穂村昌樹 刑事 謎の彫金師の四朗 
四朗は、復讐を遂げたらしい。その後、約束の指輪を残して、消えてしまった。

▶あとがき
どういう縁で知り合い、どんな思いを相手に抱いていくのか、がテーマ/成就しない恋愛でも、誰かを愛したという経験は、その後に何かを残す筈

まさしく、後がきの通りの二話でした。剛さんの本を読むときは、あとがきから読むようにしています。結論が書かれているから、先に読むと読んで居て楽。

0

不思議な味わいがある作品

昔出版された作品の再録って言うんですか?これ……。なんかこう…今までよんだ剛さんの作品の中で一番しっくり自分の中に嵌った作品のような気がしています。

普通の家庭で親にも愛されて育ってエリート街道まっしぐらの二十代後半、特定の相手も持たずその日自分の寂しさと欲望を紛らわせてくれる相手がいればそれで良かった。
いいんだか悪いんだか良くわからないような人生をそれなりに楽しんでいた男が、ある日何時も相手を見つける公園で一人の少年を拾ってから今まで思いどうりだったシナリオが次第に狂い始めるというお話。

本当の恋を知らなかった大人が始めて感じた人を愛しいという気持ち、すごくすごく幸せなはずだったのに、そこにはいろんな嘘もまた隠されていたのですね。

思いもよらぬことで今まで歩んできたエリート街道からいきなり転落してしまう正嗣ですが、でも最終的に一番手に入れたいものはちゃんと手に入れることが出来たんだからやっぱり彼は幸せ者だというべきなのだと思います。

後半に収録されている「君は優しく復讐する」はまた別のキャラたちのお話。

10年前刑事だった兄が謎の死を遂げた事でその真相を知るために自分も刑事になった穂村昌樹(ほむら まさき)と言う男が、あと少しで事件の核心に近づいたという所まで来て最終的にその相手を取り逃がしちゃうのです。

こちらの方は事件も結局闇の中で、唯一真実を知っていそうな男は忽然と穂村の前から姿を消してしまったので何も判らずじまいで終わっていてハッピーエンドとはちょっと違いますが、不思議な余韻の残る作品でした。

本当の愛って幸せって一体なんだろう?

とか、妙に色々な事を考えさせてくれるそんなお話たちです。

挿絵の刺し違いさえ無かったらもっと良かったんだけれどもな……

2

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