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表題作Re:dial

秦 眞澄
元トラックドライバー,43歳
榛名 寿朗
宅配弁当屋の経営者,35歳

あらすじ

宅配弁当の店を経営している寿朗は、10年前に行方不明になった恋人の電話番号をいまだ携帯電話から消せずにいる。
ちょうど10年目のその日、寝ぼけた寿朗はうっかりその番号に電話をかけてしまった。微かな波の音と、記憶にあるものより少し掠れた声……。
それから数日、海にいると答えた男が寿朗を訪ねてきてきた。
いなくなった恋人の名前が、寿朗の通話履歴にいくつも並んでいく。その電話番号の相手は、もう違う人だとわかっているのに――。

「はるさんが好きだよ」

偶然が重なり、止まったままだった寿朗の時間が動き始めた。

傷心の元トラックドライバー × 恋愛に臆病な宅配弁当屋

作品情報

作品名
Re:dial
著者
二一 
イラスト
伊藤モネ 
媒体
小説
出版社
電書バト
電子発売日
4

(11)

(5)

萌々

(2)

(4)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
6
得点
45
評価数
11
平均
4 / 5
神率
45.5%

レビュー投稿数6

デモデモダッテとぐるぐる

主人公が終わらせなければいけない恋に決着をつけ、新たに歩き始めるお話。相互救済でもあるかも。中盤からずっとデモデモダッテとぐるぐるし続ける心理描写に疲れる。こんな受けを根気強く開いていく攻めがただただすごいと思った。

いなくなった昔の恋人を忘れられず、携帯に番号を残し続ける寿朗。その相手は、山に入って7年経っても見つからないことから死亡届が出されたらしく、もしかしたら……と希望を持ってしまうのも仕方ないと思える状況。

そんな寿朗と偶然知り合うことになったのが秦。初対面での寿朗の非常識な提案は渡りに船だったので了承も分かるが、それにしても許容範囲が広いというか。全てを受け入れる人間力がすごい。
こういう完璧キャラは、傷を持つキャラが相手だと、上から一方的に引き上げる構図になるので苦手。

秦に告白されてからの寿朗は、ネガティブ思考で無意味な問いを延々ループ。自分に言い訳ばかりして、殻に閉じこもる素振りを見せながら、構って欲しそうにちらちらしているのが見える。

自分に対しても素直になれないのかと思わせる心理描写は、時に自己満足を追い求めているようでもあり、秦の気持ちが置いてけぼりに感じる。
最後にやっと自分から言葉にして伝えられたことは良かった。

ただ、秦は喚かれて叩かれて八つ当たりされても変わらず優しくて、寿朗に都合が良すぎる。少しくらい寿朗にやり返しても良かったんじゃないかな。自分ばかりが辛いかのように振る舞う寿朗は見ててキツかった。

気になったのは、たまに口が悪くなるところ。客を“年寄り連中”と言ったり、“聞きとめる”で良いところを“聞きとがめる”と言ったり。間違ってはいないけど、良い人設定の寿朗視点で出てくるとちょっと驚く。

合わないところも多かったが、電話番号に絡めたストーリーは面白かった。

0

安く買ってごめんなさい

なんとなく電書サイトを見ていて「やっす!」とあまり期待せずに購入しました。
がしかし、ページ数も少ないのにとっても読後感が良いお話でした。

ひとりでいることの寂しさに絡め取られている心に、お互いがぬくもりを与え合えるそんな大切な存在に出会えた奇跡。
ずっと穏やかにこれからの人生を過ごすのだろうなと幸せな気持ちで読み終わりました。
ほかの作品も読んでみようと思います。

2

薄暗い先に見える小さい灯みたいな展開

10年、消せずにいた忘れられない人の電話番号に、誤って発信をしてしまう。
それは、違う人の番号になっていた。
その人は、偶然かかってきた見知らぬ人の電話で、生き直す切っ掛けを得る。

・・この作品を読んで思いだしたのは、
ウォン・カーウァイ監督の映画『欲望の翼(1990)』で、
そのエンディング曲 アニタ・ムイの「是這樣的(ungle Drums)」
あの映画も、マギーチャンがずっと忘れられない人の電話番号に、雨が降るとかけていた。



2

そんなに量がない割にドーンとストーリー!

二一先生の作品、他のでいいのがあって、それをきっかけにこれも読んでみました。
そんなに長くなさそうなので、さっくり系かなと思っていたら、読み応えすごくてびっくり。

ストーリーは、受け・榛名さんが10年前に失踪してしまった恋人の電話番号に酔って電話したら、誰か男性が出て夢うつつのまま話してしまうところから始まります。
出てくれた人が攻め・秦さんなのですが、電話をきっかけに秦さんは榛名さんがやってる弁当屋に訪ねてくるのです。
元トラックドライバーの秦さんは、欠員が出た榛名さんの弁当屋を手伝うことになり……というお話です。

受け攻めともに(秦さんのほうは定かではないですが)、もう何年も“情愛”に触れていなかったんでしょうね。もっと軽度な人とのふれあいレベルすらなかったのかな。
おかげで秦さんが弁当屋を手伝う二週間、忘れていた人との交流を思い出すがごとく過ごしてるように思います。
こういう、ただただ相手を大事にしながら関わる展開、心に染み入るようですごく好きです。
また途中で明かされますが、秦さんもゲイで、お弁当屋さんに来たのは下心もあったと。
それを隠しながら大事に榛名さんの助けになろうとするの、ホントに大事にしてたんだ!って伝わってきました……。
しかし、恋人がいなくなってしまった経験から榛名さんは最初、その想いに乗ることができなかったんですね。
振られたでも死別でもなく、失踪。
急にいなくなってしまって、昇華もできない想いだけが残されて、榛名さんは動けなくなってしまっていたんじゃないかと。
こちらも胸が痛くなるようでした。

秦さんにはいい攻めになっていただいて、榛名さんの心を解いていってくれることを願います……。

読書時間はそんなに長くなかったのですが、得られた楽しみは大きく、すごく良かったです。
秦さん下心あったんだという認識をいれた状態で再読いきたいと思います笑

5

神様が誂えてくれた恋

kindle unlimitedで読める、
小説だが101ページなので手軽に楽しめる作品です。

秦×寿朗
行方不明になった寿朗の恋人:路也

宅配弁当の店を経営している寿朗は、
10年前に行方不明になった恋人の路也をずっと忘れられない。
ある日、恋人の電話番号にうっかりと電話をかけてしまった。
電話に出てきたのは恋人ではなく海にいると答えた男だった。
それから数日、海にいると答えた男・秦が寿朗を訪ねてきてきた。
秦が寿朗の店を2週間手伝こととなり、
共同生活ともした。
その2週間、寂しい2人は惹かれあって、
恋人となったというお話です。

10年前に行方不明になった恋人の電話番号を消せずにいる寿朗は、
電話番号を消したら路也が自分の中から消してしまうことを恐れている。
付き合って5年目、突然行方不明となったからきっと悔や未練も残りましたでしょう。
10年も1人で生きて、
持ちきれないほど寂しい気持ちを感じているでしょう。
路也の電話番号で繋がってきた電話に
「帰ってきてくれよ……なぁ……みちや…… 俺、すげぇ寂しい……」
心の中に嵐がきたような感情が溢れてきた寿朗に
心を痛めました。

10年間も新しい恋人ができかった寿朗
路也の電話番号で秦と偶然出会い、
秦も同性愛者で、
しかも両思い。
ただの2週間で恋に落ちた。
きっと偶然ではなく、
忘れられないほど大切にしてきた路也から寿朗が幸せになって欲しくて、
くれた奇跡だと思います。
神様が誂えてくれた恋です。
思わず感動してしまいました。

最後、
電話番号は秦のを知っていても、
ずっと上書できなかった携帯に登録されした「路也」を
「秦さん」に上書したのは、
秦を受け入れることできない自分から解放し、
止まったままだった時間から歩き出して、
路也がくれた奇跡を信じることができたからです。
臆病で意地っ張りでずっと孤独だった寿朗が、
やっと秦に癒されて安堵しました。

「  幸せだった思い出を消すことは、とても難しい。
 だけど、思い出が消えてしまうかも知れないという恐怖もうない。
 秦に混ぜて、路也もまた存在し続けている。
 幸せだった記憶も、喪失の辛さも、秦がいる限り消えることはないのだろ。忘れないという確信に、寿朗はやっと安心することができた。」
逝った人のことは、無理に忘れないでいい、
忘れることではなく、乗り越えて、
幸せを掴むことが大事ということでしょう。

神様が誂えてくれた奇跡の恋
男たちが孤独から抜け出す
胸を揺さぶられる作品でした。

2

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