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表題作奴隷船

下級船員、浅黒い肌、黒髪トーマス・マクルーア
貴族で少尉エリック・モートン

同時収録作品魔周郎

暴漢たち、兄・巌
魔周郎

同時収録作品緑の瞳の

ビル、不良グループ
エディ、教師

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

兄だけを見ていた。いつの頃からか、それが単なる肉親の親しみの域を越えているのに気づきはじめた…。女とも男とも知れぬ、凄まじい美貌を持つ少年・魔周郎の実の兄への道ならぬ恋は、押入強盗に、よってたかって汚されたことによりもろくも崩れさる!美少年の魔性の目覚めを描く『魔周郎』他、SM問題作『奴隷船』等を収録。

作品情報

作品名
奴隷船
著者
矢萩貴子 
媒体
小説
出版社
日本文芸社
レーベル
Karen文庫
発売日
ISBN
9784537141078
3

(5)

(1)

萌々

(1)

(1)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
4
得点
13
評価数
5
平均
3 / 5
神率
20%

レビュー投稿数4

ちょっとアラブの香り、奴隷船!

中身は、短編三作品がはいっていまして・・
「魔周郎」ちょっとかわいい系の少年が、強盗にレイプされて一皮むける伝奇譚です。
ちょいかわいいが、むちゃ妖艶に変化してお兄ちゃんを喰いにいきます。
喰いにいくで、お話はおわっちゃうのでむさぼるシーンはないですが・・残年o(>ω<)o!!。
次の「緑の瞳の」これは、よかったです。これで是非長編を書いて欲しいと思える作品。
高校教師が、素行の悪い生徒にレイプされ正気を無くし、「窮鼠猫を噛む」で生徒を射殺してしまうのですが、精神を崩壊させた主人公は、恋人(警察官)に介護されているところで終わります。
教員としてのモラル、暴力をふるう生徒への畏怖、隠した性癖、そんな揺れる高校教師の心が痛くて、好きな作品です。
そして本のタイトルになっている「奴隷船」怖そうなタイトルですが、こわくないです。
貴族の青年が、下級船員の性の奴隷になるという話です。荒々しく犯されたいとちょっと誘い受け?(笑) だもんで、奴隷になっても全然痛くない!
そのままスペインにさらわれても、楽しいセックスライフが待っていると想像されて、アラブの富豪にもらわれていくっぽい楽しさがあります。
いろいろなSMの形を提供してくださった矢萩先生、痛いとうわさの同人作品も読んでみたくなりました!

3

リアルJUNE掲載作あり。

中編3編収録。
主従、美少年、輪姦…これらがキーワードの作品たちです。

「魔周郎」
この「魔周郎」という名付けのセンス、横溝正史みたい。「真珠郎」とか。
本作は構成が変わっていて、まず厳(いわお)という逞しい少年の見る妄想夢から始まり、次に巨漢男が乱暴な酔漢(ヤクザ)を簡単に伸す場面。
その男・有栖川英明が厳の父親であり、彼の美しい妻が厳の弟を産む話に移り…
次はこれから強盗に入る車内で暴力性に歓喜する男が出てくる。
強盗たちが押し入る邸宅は有栖川邸。邸内にいたのは老人と家政婦、看護婦、そして女よりも綺麗な少年。強盗たちは縛り上げた家人の前でその少年・魔周郎を嬲る!
延々と犯されて弱り切った魔周郎が庭で殺された愛犬を見つけた時、何かが彼の中で目覚める!
事件の後、ある真夜中。兄・厳の部屋に魔周郎が忍んできて………
そして冒頭の厳の淫夢とループしていくような構成です。
儚げな美少年が暴漢に犯される場面や、この暴漢の暴力に憑かれた人間性の描写は耽美というより徹底的なリアリズムで迫ってきます。

「緑の瞳の」
ざっくり言えば。
ゲイの高校教師が、学内でのさばる不良グループの少年たちに犯されて犯されて犯されて犯されて、遂に主要な2人を撃ち殺し。
しかし、恋人の献身的な愛情を受けながらもPTSDから逃れられない。
超暗い話、と片付けるのにも躊躇する怖い話。

「奴隷船」
インドへ向かう武器調達船の青年士官・エリック。
同じく士官のジョンと時々積荷部屋で隠れてキスする仲だが、浅黒い肌の水夫・マクルーアに目撃され、脅されて抱かれる。
一度男の味を知ったエリックはマクルーアに溺れきって。彼らの関係は下剋上でSMの香りもある。
マクルーアの許可を得た他の水夫にも抱かれ、その後ひどく打ちつけられるエリック。殴られ犯される事にエリックはマクルーアの愛を感じるわけです。
ラスト、船上でクーデターが起きます。マクルーアの正体はなんだったのか。エリックは奴隷?それともさらわれた姫?

3作品ともひどいレイプ、それも衆人環視の輪姦描写の残酷さ。読者に対してのSな物語でした。そこに作者様ご本人のイラスト。これが圧倒的に耽美でした。

2

JUNEというより、内面に潜む欲望をむき出しにしたエロスのポルノなのですが・・・

これを読んだら、もう"ウノウコウイチロウ”や"団鬼六"なんてかわいいものです。
全編にわたって、内に潜む欲望がSMの形に変化して姿を現し、見事におどろおどろしい、BLとは呼びがたい淫靡で醜悪なエロスに堕ちてゆきます。
「エロスの異世界空間へようこそ」
そんな作品郡です。

表題作、恋人の士官とのつかの間の逢瀬に物足りなさを感じる主人公が、その目をひく容貌の黒髪の男に支配されることに欲望を満たされ、奴隷となる話。
どんなになぶりものにされても輪姦されても、彼から与えられる快楽と嗜虐の快感にあらがえず、どんどん堕ちていく主人公は、もはやその人格さえも性奴として成り下がりますが、ある意味欲望を昇華させた形の結末とよべるのではないでしょうか。

また「魔周郎」では内に潜む夜叉が、残虐なSの男の出現により表面化し、自分の内なる欲望をあらわにして、兄と契る凄惨な関係を表現しているようです。
冒頭、兄が見る夢が最後の弟との交わりとリンクしているところが印象的です。
凄まじい暴力に快感を得る男の行為に、少し苦手な人はいるかもしれません。

「緑の瞳の」これは、JUNEってつくづくチャレンジャーだと思わす作品。
耽美を飛び越えて暴力とSEXで主人公が壊れていく話ですよ。
一人の綺麗な少年が、その内に秘めた暴力で教師を犯し、その教師は残虐さにマゾヒズムを目覚めさせるも、血を見ることで理性が戻り、その結末は悲惨なものです。

自分が心の底に眠らせて表に出さない願望を、他者により目覚めさせられ覚醒し、壊れていく・・・
実にエロティックな作りであり、後読感から考えるとやはり耽美なのか、と思わざるを得ません。

4

耽美小説は文章の上手さが大きいなー

矢萩さんは初読み作家さんなんですが、どうやら小説ではなく商業ではレディースマンガで活躍されていた方の様です。

うん、確かに文章は下手ではないんだけれど、普段マンガを描いてる人が小説を書くとこういう風になるんだよなーって感じです。
マンガで基本は出来てるので、分かりにくくは無いし文体滅茶苦茶とかそういう訳じゃないんだけど、何というのかな、えーとともかくマンガを描いている人の小説だなあとしか、まあどこがそうなんだと上手く言えないんですけど。
マンガでなら大コマを取る部分を繰り返しで表現したりとかあえて言うならその編かな、やっぱ上手く言えないなあ。

短~中編集です。
まさにかつてのJUNEが彷彿される耽美っぷり。
しかし自分は元々耽美がそんなに好きではなくて、ただその卓越した文章力や作家の耽美に込める情熱みたい勢いに押されている部分が大きいのですな。
矢萩さんは耽美への情熱は凄く感じるのですが、圧倒するには文章力が足りない。
決して下手ではないんですが、耽美に引きずる程の上手さが文章に無いんですよ。
それなので自分は今ひとつ乗り切れなかった。
耽美が好きな方なら楽しめると思いますです、はい。
矢萩さん自らの挿絵もまさに耽美ーー!!

ちなみに矢萩さんは1949年生まれだそうです、著者紹介欄見てちょっと驚きました。

3

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