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表題作うそつき

長距離トラック運転手 定岡輝夫
天津甘栗販売員 相原誠

その他の収録作品

  • ひみつ
  • わがまま

あらすじ

夜逃げした両親に置き去りにされ、叔母に育てられた誠。高校を中退し、高速道路のサービスエリアで天津甘栗の販売員として勤める彼に声をかけてきたのは、若干二十三歳で運送業を営む輝夫だった。休憩時間のトラックキャビンでの短い逢瀬。輝夫はためらいなく誠を求め、誠は戸惑いながらそれに応えようとするが、ある出来事がきっかけで輝夫の態度がよそよそしくなって…。サービスエリアの常連でバイク便を営む修平とその恋人・克美の物語「ひみつ」と、2カップルの書き下ろし後日談「わがまま」を収録した三本立て!
出版社より

作品情報

作品名
うそつき
著者
烏城あきら 
イラスト
桃月はるか 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
発売日
ISBN
9784576081380
3.3

(15)

(1)

萌々

(5)

(7)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
6
得点
48
評価数
15
平均
3.3 / 5
神率
6.7%

レビュー投稿数6

躍動する関西弁!高まる萌え

主人公の仕事が天津甘栗の販売員、というblにしてはなかなかにシブい(失礼!)もので、興味があったこの小説、あらすじを見ますと、「夜逃げした両親に置き去りにされ、高校を中退して甘栗を売る〜」な感じでしたので、シリアスなお話なのかと思いきや、とっても萌えに溢れた良作でした。
まず、主人公は相原誠。十七歳、高速道路のサービスエリアの天津甘栗の販売員です。彼の両親はテキ屋さんでしたが借金を作り、幼い誠を叔母に託して夜逃げしています。
これだけみるとヘビーな境遇ですが、叔母一家にちゃんと大事に育てられました。高校中退、甘栗売りも誠の意思です。
この誠がサービスエリア内で、輝ちゃんと出会い、いい感じになってます。輝ちゃんは二十三歳、個人で運送屋を営むトラックドライバーです。
サービスエリアは兵庫県にありまして、誠と輝ちゃんは関西弁です。これが本当にいいのですよ。誠は自分を僕といいます。「輝ちゃん、時間ある?僕、ちょっとなら大丈夫やから」、こんな感じの会話で繰り広げられる二人のお話が、表題作「うそつき」。
さて、誠の甘栗屋さんの常連客にはバイク便の兄さん木村修平という男がいます。修平は東京から山口までも行く、超長距離バイク野郎。二十代後半で、十年来ついたり離れたりの「俺の可愛い奴」、黒川克美がいます。
この二人の物語が「ひみつ」。萌え萌えに私にはヒットしました。
最後が書き下ろしの「わがまま」。誠と輝ちゃん、修平と克美の締め括りです。
読みやすい文章、冴える会話。やたら上手い作家さんだと思いましたら、烏城あきら先生、許可証シリーズの作者さんなのですね。
納得のハイレベルな萌えだと思いました。
因みに、私に一番ヒットしたキャラは黒川克美です。こういうツンデレ美人さんというのかな堪らん魅力がありました。
紙では絶版らしいですが、電子では大丈夫なようです。小説初心者さん、関西弁blをお探しの方にオススメです。

3

最初のエッチの大失敗は…萌えです!

烏丸あきらさん私好みだわー。
表題作カップルは、庶民を通り越して、明らかに貧乏な二人のささやかな恋のお話なんですが、そこがツボでした。しかも、なんかこのまま一生お金に苦労しそうな感じ。
ブルジョワの多いBLにおいては特殊です。でもそこが好き。
受けはサービスエリアで甘栗を売っている。両親は借金作って夜逃げして、叔母のもとで暮らしてたんだけど、高校中退して働いている。
攻めはトラック乗り。トラックを購入して一人立ちしており、大借金を抱えている。
ささやかな出会いが恋にかわって初エッチするんだけど、まったく上手くいかなかったんですねぇ。新鮮!そしてリアル!初エッチからイキまくりでアンアンいうエッチの百倍萌える!しかも、我慢して痛い思いしただけの受けを置き去りにして、攻めは仕事に行ってしまう。そこから二人はギクシャクしはじめる。
二人とも相手を責めないんですよ。自分が悪いと思っている。
互いにいろんな誤解を積み重ねたままですれ違い、時間だけがたっていくのが切なかったです。
それだけに、誤解がとけるときは爽快でした。(さすがに高速道路での危険運転だけは面白くないからやめてくれぇと思いましたが)
受けの抱えていた寂しさとか、攻めが受けにはじめて声をかけるまでの葛藤とか、オッと思うような会話もたくさんあって。
この二人、べつに金持ちにならなくていいから、せめて庶民レベルになってくれ~!と応援せずにはいられません。

『ひみつ』
表題作とほぼ同じ時間軸のなかで語られる、もう一つの恋の物語です。
こっちがまた良かったー!
付き合って10年になるのに、いまだ不器用な二人です。
出会った暴走族時代の話はオイオイと思いつつ、でも青春の痛い一ページって感じで良かったな。
受けが10年間も抱えてた思い、攻めの愚かさや言い争う中で見えてきた本当の気持ち。
キュンキュンしました。
表題作とのリンク具合いも絶妙でした。同じシーンなのに、視点が違うだけでぜんぜん違うものが見えてくる。

『わがまま』
二組のカップルが交差するお話。
関西弁カップルと関東弁カップルの組み合わせが良かったなァ。
距離感がわかりやすい。
一期一会と言いたくなるような対面だったのもよい。
なにより、ユーモアがいい。

大好きです。

2

生活臭むせかえる。

長距離トラックの運転手とサービスエリアの甘栗売りのお話なんですよ。
しっかりと地に足のついた職業のふたり。
逢瀬のためにかかるお金を百円単位で描くBLは異色だなぁと思いました。
受けが逢いたいって言えば、仕事を投げ捨てて飛んでくる
ロマンチックな攻めは存在せず、仕事に穴をあけないように
きちきちとした生活をやりくりしシビアに恋をしている。
恋愛至上主義ではなく、あくまで生活の次に恋愛があるんですよね。
本当に男の人の恋愛観ぽい。

はじめてのセックスにおいても、なまなましい。
なまなましくて萌えるのではなく
なまなましくて萎える・・・
ほぐす時間もままならず痛いだけのセックスの後のギクシャクとか
実際はそんなもんなのかなって思うけど・・・
なんか借金抱えて自分本位ながさつな攻めって感じで嫌だったな。

主人公の甘栗売りは、両親が夜逃げしていてひとりで置いていかれた過去があり
現在はサービスエリアで、お客を甘栗ブースで待ち続ける
お客を待ち続けるだけだった生活が、トラック野郎を待ち続けることになる
いつもぽつんと黙って待ち続けているけど
王子様がやってきてかっさらってくれて幸せになりましたではないんだよね。
トラック野郎も借金を返し、今じゃ高給取りになりましたではないんだよね。
どこまでも生活臭が漂い、貧乏から抜け出せないBLって珍しいよね。

もうひとCPは、バイク便の話が入ってまして
最初のCPとリンクしてるんですよね。
こちらのCPも、地道な人生が基盤にあり恋愛のことで頭がお花畑な
キャラは一人もいなかったな。

おもしろくて、するする読めた。
読んでる間は、夢中で読んだけど読んだあと現実逃避できないんだよな。
ああ、貧乏って嫌だな。お金貯めておこっ!と、しみじみ思ってしまった。

3

これは珍しい職業を持ってきたなぁ

今回も働く青年たちのお話。
『うそつき』『ひみつ』『わがまま』の3編から成っており、それぞれ二組のカップルが登場し、書き下ろしの『わがまま』ではその2組がご対面!となっております。

サービスエリアの天津甘栗販売員とか、長距離専門バイク便だとか、いやはやこんな職業まで登場しちゃいましたねぇ。どちらも初読みの職業です。
高速道路を利用するときに、サービスエリアでは天津甘栗を始め、いろんな販売を見てますけど、BLに出てくるとは予想外。
でも、誠の両親がテキ屋をしてて、何とか自分の本当の店が持ちたいと借金をした先が闇金で騙されちゃって、幼い誠を置き去りにして夜逃げしたって言う過去があったから、誠の仕事も両親を思い出すような仕事を選んじゃったって事なんでしょうねぇ。

誠本人は全く無自覚で、両親に置いてきぼりを食らったことさえ「寂しくない」って言う位なのに。
本当は寂しく寂しくて、気が付いたら号泣してたくせに……。
これが題名となっている『うそつき』なところです。輝夫も木村も、誠が嘘をついているとわかっているのに、誠本人だけが気が付いてない。そこが切なかったですねぇ。
初めて誠を見たとき、寂しそうに立っていて、お客さんが来たとたん嬉しそうな顔になるのを見て、「寂しがりやな」と思ったわけですが、そんな事さえ誠自身は知らなくて。そんな誠が切なかったです。

誠にちょっかいをかけていた脩平ですが、バイク便の事務所兼自宅には恋人・黒川克美(くろかわかつみ)が待っているんです。
二人は元暴走族仲間で、もう10年もの長い付き合いとなっているんです。その間、脩平に女性の恋人が出来たら離れ、その恋人と脩平が別れたらまた同棲する。その繰り返し。
ずっと脩平が好きだったけれど、ノンケだから好きだとは言えず。また脩平も克美を好きなんだけど、一番最初のときに「もう帰りな脩平」と言われたことが心に引っかかっていたんです。あのときに追い出されたことで、傷ついてたんですよ。だから、本気になれないというか、本気だけどそれを言葉に出来ないというか。

あ~も~焦れったい!

こんな4人が、サービスエリアに大集合。
温泉地へ向かう脩平と克美がサービスエリアに寄り、そこへ輝夫がやって来る……と。
ケンカ腰の言葉の応酬ですが、ちゃんとわかってて言ってるから安心です。
あと誠ですが、あなたは全然わがままなんて言ってません。可愛いおねだりですよ、輝夫にとっては。だから、もっともっとおねだりしちゃいなさい。きっと喜んでくれるはずだから。

5

もうちょっと

烏城さん初読みでした。
若手トラック運転手×甘栗販売の兄ちゃん
ブルジョワジーあふれるBL界で、密会の時間を稼ぐために必死になる攻は新鮮かもしれない。
なんかこのお金と時間の壁が妙に現実的で、なんかBLを読んでいるのに普通の男女モノを読んでいるような感覚におちいりました。あれれ。
色々あって自分を避けていると思った攻にぶちきれる受はかわいかった。
この二人のお話はとにかく若いなあの一言につきる気がする。
おもしろかったけどそれほど萌えなかったのは単純に好みの問題でしょうか。

どちらかというともう一組の年長組の方が好きでした。
表題作にアドバイザー的ポジションで出てきたバイク便のにいちゃん修平と、その十年来の恋人(というには激しく微妙な関係)の克美の話。
十年来関係があって、でも修平に女が出来る度に身を引いていたって克美どんだけ健気なんですか。
しかも美人系で意外と意地っ張りです。ときめく。
そうかー、若い頃修平は克美にくわれちゃったのかあ。

時系列的には二つのお話は重なっていて、作中に同じシーンが何カ所か出てくるんですが……それがまるっとそのまま繰り返されているのがちょっと気になりました。
結構長いシーンもそのままなので、読んでいてあれって思ってしまった。
もう少しはしょってもいいんじゃないかと。

あとどちらのカップルにも言えることですが、個人的には精神的にもう一個追い込まれて欲しかったです。
なんか雨が降りきる前に地が固まってしまったというか、なんかあと一押しという印象でした。
なんかちょっともったいない記がする。これも好みの問題なのかな。

2

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