喪いたくないなら、そう言えばいい

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表題作ホーリー・アップル -ドードー鳥の微笑-

ドイル・アーデン,31歳,刑事
ハリー・ローゼンランド,31歳,制服警官

その他の収録作品

  • Prologue
  • 第一章 You Don't Know Me At All
  • 第二章 I Don't Want To Talk About It
  • 第三章 Can't Stand Losing You
  • Epilogue
  • あとがき

あらすじ

喪いたくないなら、そう言えばいい
大ピンチ転じて2人の愛は!?ハリーとドイル、マンハッタン事件簿

どん族景気のNYで、気弱な巡査ハリーは刑事ドイルとの突然の出会いから、同じアパートで暮らして1ヵ月。
有能だけれど傍若無人な捜査で有名なドイルは、恋も強引だ。甘いアパートでの生活は幸せだが、仕事では失敗つづきのハリーがある日、犯罪多発地域、シン・ストリート(罪の通り)で起きた事件に急行すると……。

作品情報

作品名
ホーリー・アップル -ドードー鳥の微笑-
著者
柏枝真郷 
イラスト
槇えびし 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
X文庫ホワイトハート
シリーズ
ホーリー・アップル -穴だらけの林檎-
発売日
ISBN
9784062866149
4

(13)

(7)

萌々

(3)

(1)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
3
得点
51
評価数
13
平均
4 / 5
神率
53.8%

レビュー投稿数3

2歩進んで1歩下がる

有能だけど不遜な態度で嫌われ者の刑事ドイルと、警官で拳銃を持っているのに治安が悪い地下鉄は怖い臆病者のハリー。

1作目でとりあえずお試しのような形で身体の関係を持った2人。
あれから1ヶ月経ち、ハリーはまだ昔の恋人の影をひきずっていますが、前回ほどではなく、ドイルと出会い、私生活にもそれなりの幸福を感じ始めています。

ですが、ハリーが前の恋人と別れる原因となった人物が姿を現し、せっかくドイルに気持ちが傾いていたのにまた前の恋人のことを思い出し…な展開にじりじり。
2歩すすんで1歩下がるようなこの関係がいい加減じれったくなってきます。それでも「気長に待つ」というドイルの男前なこと…。

1巻をを読んだ後、どうしてもハリーが引きずっている「昔の恋人」というのが気になって、このシリーズのもとととなった同じ作者さんの作品、「イレギュラークリスマス」を読んだのですが、やはりあっちを読んでからの方がこちらのシリーズはよいかもしれません。
ストーリーには問題ないけど、なんでこんなに落ち込んで焦ってるの??…と、ハリーの感情の起伏にやや置いてけぼりな気分になります。
ドイルの手の平に恐る恐る手を重ねるんじゃなくて、いい加減ぎゅっと握ってあげればいいのに!って…

ストーリー事態は警察官として、事件を解決していく流れが主なもので、恋愛部分や甘いシーンは少なめで少し物足りなくも感じます。
ですが時代背景や町の描写、NY警察の実態などとてもリアルに書かれており、かといって小難しくもなく楽しめます。

今回はいくつかの事件が平行でおこり、一つ一つは長引くお話じゃなくても複数が絡み合っているせいで複雑です。
そのうちいくつかは非常に後味の悪い事件です。
事件ものといっても、それそのものに振り回されることを楽しむ探偵風のミステリーでなく、警察のお話だからか、調査も「お仕事」といった風で、割と後味が悪くても、淡々として引きずられないようには書かれているのですが…。

共生関係とかエイズとか。暗くはないけど、重たいです。
エイズはBLとして読んでると内容として扱うにはなんとも言えず…BLというよりこの時代を生きている同性愛者のリアルを追っているのかもしれません。
1980年初めとエイズが蔓延しだしたNYで、正しい知識がなく、パニックになっていたころの設定なので避けて通れなかったのかもしれませんが。

このお話の副題ドードー鳥ですが、「共生関係」の例えとして使われています。可愛いタイトルなのに、すごく深い…。
片方が死ねば片方も必然的に死んでしまう共生の関係。
それを絶滅した鳥と植物の関係に例えていますが、そんな関係ともとれる人間がこのお話には何組も出てきます。

1人を失い、片方も形を保てなくって崩れていく…。そんな2人組みを何人も見て、NYで、警官で、毎日こんな事件ばかりだったら私はやっていけないなあ。
考え出すと読み終わった後もいつまでも考え込んでしまいそうだから、さらっと流すのも大事かもしれません。
事件そのものには腑に落ちない所ももろもろあるんですが、そこまでつきつめていないのはやっぱり探偵ものでなく「逮捕したら終わり」の刑事ものだからでしょうか??

あいかわらずドイルは破天荒な単独プレーで、ハリーは必要以上の追跡には関わりたくない臆病者(仕事がいい加減なわけではないんですが)。
ドイルは内面が外に出ないので何を考えているかわかりにくいですが、男前だし、効率重視で自信満々で決して下を向いたりしなさそう。冷たいと言われてもこんな事件がばかりのニューヨークでハリーにとって、仕事でも恋愛でも救世主のような存在になってほしいなあというか早くなって!て思いました。

3

穴ぼこNYの罪深い領域は…

「ホーリー・アップル」2作目。

登場人物は、前作「穴だらけの林檎」と同じ。主人公は制服警察官・ハリーと、刑事のドイル。
そしてお互いの相棒・ジェフリーとミルズ、そして大学生のルカとアリエルです。

舞台は80年代ニューヨーク、汚くて危なくて、クールだけど泥臭い。そんな街で起きる犯罪を絡めて、ハリーとドイルの恋が描かれます。
と言っても甘い恋愛模様の空気は薄く、隠れゲイ警官が日常の仕事として犯罪に向かい合っている物語、といったほうがいいのかも知れない。
今回の事件はチンピラの異母弟が殺されたのに淡々としている弁護士の兄と隠された真相、アリエルに送りつけられた脅迫状は誰が送っていたのか、といったものが複合的に絡んだものです。
制服警察官のハリーはあまり事件に対しての活躍は無く、ドイルのほうが鋭さを発揮して真相を明らかにしていく感じ。ドイルはハリーに対して仕事への熱意などは求めてなくて、ただ彼の存在そのものを見つめている。一方ハリーはいまだ前の恋人を引きずりつつ、やっとドイルに合鍵を渡すまでになった、という所。だからこれから少しは甘さも増してくるのかな?
タイトルのドードー鳥、というのは作中ではなかなか深い話と繋がっていて、ドードー鳥は絶滅した鳥として有名だけれど、ドードーと一緒に運命共同体的に絶滅への道をたどる樹木があるのだ…という話です。
私はそんな樹木があるとは知らなかった。
ドードー鳥と樹木との共生関係が、彼らの前で起きる事件を象徴するように語られる。そんな文芸的な香りもありつつ、骨太な海外ミステリのようにも読める本作は、翻訳ものが好きな方にも大いにおすすめできる作品です。

1

穴だらけの都市、再見!

 ハリー&ドイルが織り成す、事件解決と愛の物語、第2弾。
 気の弱い警察官・ハリーと、己の勘と行動力を持って目覚しい実績を上げる、頼りがいのあるドイル。
 今回の舞台は同じマンハッタンにして、"ドードー"(絶滅した鳥)という怪しげな店が登場します。前作で出会った大学生のルカというヒスパニック系の青年も再登場しており、その友人・アリエルというモデルに匹敵しそうなほどの金髪サラヘアの美青年が、ドードーに、何の事情なのかナイフを調達しようとして、(そりゃ一筋縄ではいかないであろう)ナイフ屋の店員に絡まれているところにハリーとドイルが遭遇。
 事件は、一方向で起こるのではなく、さまざまな出来事が妙に符合しあって、表層に浮かんでくるのです。今回も二人は、事件の顛末を探るため、穴だらけの林檎(をほうふつとさせる)年中、工事によって穴開く道路もなんのその、走ります。(単に走るというわけじゃないですよ)
 愛のほうも、まだまだぎこちない雰囲気が流れがちですが、ドイルの以外にも寛容な姿勢に、ハリーも以前の恋人を忘れられないということに罪悪を感じることが重荷ではないと思えるようになれるのではないでしょうか。ドイルの包容力に乾杯。
 読んでいると、話の中に引き込まれて、二人の住むアパートの生活臭がしてきそうです。
 最近、ホーリー・アップルシリーズ第3弾も発売されました。二人の関係がどうなっているのか、また毎度起こる事件も楽しみに、今作もしっくりと、ヒストリカルな気持ちになれました。
 

0

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