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表題作人魚と紅い薔薇

リカルド(吸血鬼)
翡翠(人魚・17歳)

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

翡翠は一人、山の中で暮らす人魚だ。人魚は基本、女性のみなのだが、翡翠は珍しい「男の人魚」。翡翠の亡き母によると、人魚は性行為をすると年を取るようになる。つまり愛する人と出会うまでは少女(翡翠の場合は少年)の外見のまま、何年でも生きるのだという。母を看取ってからひっそりと暮らす翡翠の前に、ある日、金髪碧眼の美青年・リカルドと、精悍な美貌の若者・宏武の二人が現れる。ヤクザに追われ、逃げてきたという二人だったが、リカルドは怪我をしていたため、翡翠は自宅へと招く。翌日、リカルドの傷はすっかり癒えていた。二人は翡翠に、それぞれ、吸血鬼と狼男なのだ、と告げる。翡翠もまた、自分は人魚だと告げる。しばらくリカルドと宏武は翡翠の家で世話になることに。やがて翡翠はリカルドに恋をするようになり……!?

作品情報

作品名
人魚と紅い薔薇
著者
愁堂れな 
イラスト
サマミヤアカザ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344843660
2.5

(6)

(0)

萌々

(0)

(4)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
3
得点
13
評価数
6
平均
2.5 / 5
神率
0%

レビュー投稿数3

おとぎ話

サマミヤアカザ先生の挿絵見たくて購入。人魚さん、見かけは人間と変わりませんでした。そして吸血鬼と狼男が出てくるという不思議な不思議な設定!ふわふわ霧の中に包まれたような感じのお話、本編210P弱+あとがきです。ようやく愁堂先生の味が分かってきた気がする!

すごい雨の中、洞窟内を近づいてくる足音に気付いた翡翠はびっくり。なぜなら山奥のそして洞窟の奥でひっそり一人で暮らしているためで、こんなところに普通の人間がたどり着けるわけがないからです。ひょっこり顔をのぞかせたのは精悍な若い男。そしてその男は金髪の男を担いでいて・・・とお話は続きます。

攻め受け以外の登場人物は
宏武(ひろむ、狼男)、攻めを追っかけてきたヤ関係?の男たちぐらいで、ほぼほぼ3人でお話は進みます。

**以下、不思議な雰囲気のさわり

人魚さんは綺麗なお水があれば何も食べられなくても平気で、歳をとらないのですが、愛する人と愛し合ったら時が流れ始める・・というファンタジー満点な設定。そしてもちろん良い子です。
リカルドは宏武を拾って育て上げた優しい吸血鬼で、今まで何度かいた恋人たちは全て永遠という時間に耐えきれずリカルドの前を去っているというせつない設定。
宏武はリカルドの事をとても慕っていて大切に思っているのですが、自分は永遠に生きられないので置いていくことになるのは嫌だと考えている忠義わんこという設定。
とそれぞれの特性での設定があって、私はうまく噛み合っていてファンタジー感満点で好きでした。
特に宏武が良かったなあ。一生懸命リカルドのことを考えて援護射撃しようとしているところが良かったー

ただそのような各種設定が、全て夢の中の出来事のようにさくっと出てきて、さくっとそのまま終わる(要は謎解き、説明がない)ので、お?と今までなら思ってました。今回はなぜかそのふわふわんとしたままでも、ううーん、これが愁堂先生の味かも!とあまり気にならなかったです。ということで中立よりではありますが萌。

ふわふわおとぎ話を読んでみたい時にどうぞー。

1

設定は非常に面白いが

愁堂さんの新刊は人外モノ。サマミヤアカザさんの描かれた表紙から、もしかしたらホラー寄りのお話かな、と思いつつ手に取りましたが、もの悲しく、でも家族愛にあふれた作品でした。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。






主人公は翡翠。
彼は深い山奥の洞窟に、一人でひっそりと生きている少年。誰も訪れるはずのない場所だが、ある嵐の夜、二人の男が翡翠の住む洞窟に現れて…。

という出だしで始まります。

見た目は17歳くらいに見える翡翠。
そんな翡翠がなぜそんなところで生活しているのか。
そして、そんな山奥に、なぜ男たちがやってきたのか、そしてその男たちの正体は―。

そんな謎めいた出だしで、一気にストーリーに引き込まれます。

あらすじにも書かれていますし、早々に彼らの正体が分かってしまいますのでネタバレしてしまいますが、





翡翠は男の人魚。
そして翡翠のもとに現れた二人の男の正体は狼男と吸血鬼。

です。

吸血鬼の名はリカルド。
そして狼男のほうは宏武という。

「人外」ゆえに、人の住む世界では正体がばれぬようひっそりと生きてきた二人。
母を亡くし飢えていた宏武を、リカルドが拾い、そして育ててきたという過去が彼ら二人にはある。

不老不死のリカルドに対し、宏武は人と同じように老い、そして寿命がある。自分が亡きあとリカルドを一人にしてしまう恐怖を常に抱いている宏武は、翡翠が人魚であり、そして老いることがないという事実を聞き、リカルドを一人にせずに済むことを喜ぶけれど。

「人外」ゆえに常に孤独を抱えてきた三人。
リカルドは翡翠に惹かれ、翡翠もまたリカルドに惹かれている。
けれど、翡翠はリカルドとともに生きていくことを決断できない理由がある。

その理由は何なのか、を追う形でストーリーは展開していきます。

が、その「理由」も早々に分かってしまう。

設定、そしてストーリー共に斬新で面白いのですが、同じところを堂々巡りしている感が。

リカルドと翡翠は出会った時から惹かれあう。その理由はいくつかあるものの、お互いを知り少しずつ恋心を育てていく、という展開ではなく一気にお互いに惚れてしまうので、個人的に「少しずつ恋心を育てていく」という過程に萌えることもあって急展開過ぎるという感想を持ちました。

このストーリーは、リカルド×翡翠の恋、というところではなく、翡翠が抱える秘密を、彼自身どう乗り越えるか、リカルドがどう受け止めるか、を軸に展開していきます。が、そこに終始しているため話がちっとも進まない、というのか…。

吸血鬼×人魚、というだけではなく、吸血鬼が育ててきた狼男、が混ざることで他とは一線引いた面白いストーリーにはなっているのですが、翡翠がぐるぐる悩むだけの展開で、ストーリーに緩急がないため今一つ盛り上がりに欠ける感じがしました。さらにいうと、「人魚の秘密」は結局明かされることなくストーリーは終わります。男の人魚、という美味しいバックボーンが今一つ生かしきれなかったかな、と。

個人的に、宏武がめちゃめちゃツボキャラでした。
明るく優しいのに、人の心の機微に聡い。
彼ら三人のその後のお話も読んでみたいので、ぜひとも彼メインのスピンオフを描いてほしいなと思います。

サマミヤアカザさんの挿絵はとても素敵でした。
リカルドと宏武のカッコよさと、翡翠の儚げな感じがイメージぴったりでした。

1

人魚というのは、美しいけれど。一体何者なのか。

その名も美しい『翡翠』。彼は世にも珍しい男の人魚なのだという。美しい顔、絹糸のような髪。細っそりとした肢体。17歳になった年から少しも歳を重ねる事なく、60年間生きて来たと云う。
その特異性を隠す為に人里離れた山奥の洞窟にたった独りで住まい、お腹が空く事も無いので、ただ清水を飲んで過ごして来た。
そんな嵐の夜、洞窟に迷い込んで来た者がある。金髪碧眼の美しい吸血鬼、リカルドと狼男だと云う宏武。怪我をしているというリカルドを休ませてやって欲しいと請われ、彼等は共に一夜を過ごす。
共に人外の子、揃い踏みです‼︎ リカルドは600年の孤独を生きて来たと話し、同じく歳を重ねる事のない翡翠に好意を持つ様になる。親を亡くしてから、リカルドに拾われ、育てられて来た狼男の宏武は、人と同様の寿命を持つ。物語は順に、翡翠、リカルド、宏武、の目線から、繰り返し語られ進行して行く。宏武は、親としてのリカルドを慕っている。なので、自分が老いて亡くなった後、リカルドをまた孤独に独り置くのは忍びないと憂い、同じく歳を重ねる事の無い翡翠に出逢えた事を喜ばしく思い、2人の仲が進展すれば良いと願っている。とっても良い子なのだ。成人してるので、子供とは言えないけれど。リカルドはリカルドで、もちろんテンションが上がっている。嬉しさが隠せない。しかも、翡翠はドストライクなルックスなのだ。もちろん600年の間に幾度か恋はしたけれど、いずれも人間で。愛を交わした人に自分の血を与えると、相手も不老不死の命を得るのだが、どうしたものか、不老不死のまま歳月を重ねて行くことを人は恐れ、自害するのだ。なので、恋人に先立たれて行くことが悲しく、傷付き、いつしかリカルドは恋を忘れていた。しかし、翡翠は初めから「不老」なのだ。初めて出逢えた、運命かもしれない人…。
翡翠はリカルドや宏武が嬉しそうにすればするほど、心が曇って行く。「人魚」の「不老」とは条件付なのだ。昔、母に聞かされていた事。それは、人魚は愛する人と出逢い、結ばれれば、その時から止まっていた時は流れ始め、人と同じ歳月を重ねるのだと。だから決して間違えてはいけない、その恋がうたかたのものであってはいけないのだと。母は、愛し合った後にきっと捨てられたのだ。翡翠を育てながら、独り老いて死んでしまった。愛した人は、共に生きてくれる恋人や夫になってはくれなかったのだ。
なので、翡翠は共に過ごすうちにリカルドを想い慕えば慕う程、その事を知られて落胆させてしまうのでは と恐れ、彼等と別れる決意をする。
結局は人里離れた山奥にも人間の手が入り、ここで生きて行く事が難しくなった3人は手に手を取って逃げる様に山を去ることになるのだが…。

うーん…。翡翠が「人魚」という設定が謎です。山だし。死んで泡沫になるらしい、というのがアンデルセンの人魚姫と同様であること以外、特に半身が魚であったり尾びれや鱗があるわけでも無いのだ。
便宜上「人魚」と云うことにしました、みたいな。不思議な人外である。
それよりも、私は人狼の子を育てたというリカルドと宏武の話で良かった様な気がしていて。
この2人の間には親子以上の心情は無いというのだが。しかし。
リカルドに血を吸わせる事を常としていた宏武にとって。それは、あらゆる吸血鬼モノと同様に少なからず官能的なものを伴って感じられるのだ。他者とまだ性行為をした事の無い、もしかしたら精通もしていない宏武にとって、リカルドに血を吸わせる行為は、もう少しで快楽を呼び起こしそうになる寸前で、リカルドは血を吸うのを止めている。リカルドは多分、性的な悦びを与えてしまう事を恐れている。いやー、こっちの方がロマンティックじゃないですか‼︎‼︎
宏武はリカルドと共に生きたいと願い、自分の亡き後リカルドを独り遺す事を恐れている。
リカルドは永遠の命を持つが故の苦悩の末、宏武に「不老不死」の血を与える事無く、寿命を全うさせたいと願っている。それが親子としての愛情だとしても‼︎ とても愛し合っている事には変わらない。
宏武が幼ない子供なら、翡翠の登場も無理無く受け入れられたと思うのですが、何だか諸々蛇足な様な気がして。もしくは人魚と吸血鬼の話なら人狼は要らなかったのでは??などと、どうしても考えてしまう。
3人は九州まで逃れ、宏武が食事に出かけた隙に、ようやく唐突に⁈ リカルドと翡翠はホテルの一室で結ばれる。翡翠が別れる決意をしていたのは、不老不死「じゃないかも」を恐れた事を知って、やっぱり愛おしいと感じたリカルドは嬉しくなって、優しく優しく翡翠を抱く。
そして、愛し合った後も翡翠の躰には変化は無く。男だからかなぁ?みたいなボンヤリとした感じでめでたし!と終わる。えええー⁈
なんだかとってもモンヤリしました。
重ねて言いますが、吸血鬼 × 人狼 で次はお願いしたいです。

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