切ない、痛い、しんどい…と、とにかく抉られっぱなしでした。
夜職のオーナーの春夜は友人の葬儀に出席するため、
8年間帰っていなかった地元を訪れます。
そこでかつて捨てた“バカ犬”こと後輩のアオイと再会し…。
元気いっぱいで素直で従順なアオイ。
だけど、彼はいわゆる境界知能というやつなのかもしれない。
発言や態度も幼く、中身は子供のまま体だけ成長したような印象で。
無垢ゆえにその一途さや健気さも一層際立って感じられてしまうのだ。
そんなアオイにとって春夜は子供の頃から絶対的存在だ。
利用されるだけされて何も告げずに自分の元から去って
8年間も音沙汰なしだったというのに再会した瞬間から
アオイの世界は再び春夜一色になった。
突然現れた春夜から東京へ連れられて
デリヘルで働かされても文句ひとつ言わず、
春夜から命じられた仕事をまっとうしようとするアオイ。
たとえ縛られて痛めつけられて貶められてどんなひどい顧客でも、
自分自身に「へーき」と言い聞かせるアオイに胸が苦しくなる…。
春夜はきっとアオイを救いたかったのだと思う。
高校時代に軽い小遣い稼ぎの感覚で
アオイに女装させておっさん相手にパンツを売らせた春夜。
けれど、事態は次第に彼の思惑からかけ離れてゆき、
アオイは男たちの欲望に汚されてしまうように。
アオイ自身の気持ちなんてこれっぽっちも考えずに
小遣い稼ぎする男たちも、欲望の捌け口にする男たちも
みんなみんなキモチワルイ。
それなのに、当のアオイは自分が頑張れば春夜が喜ぶと思っていて、
褒められたくて喜ばせたくて、汚されても笑顔で一生懸命で、
なんかもうやるせなかった…。
ぜんぶ自分のせい。こんなつもりではなかったのに。
そんな後悔と嫌悪感からアオイを捨てて東京へ逃げた春夜。
だからこそ、再会したアオイが未だにパパ活をしていることを知り、
どうしようもない罪悪感と独占欲に駆られて彼を地元から連れ出した。
つまるところ、自分のものに他人に手を出されて嫉妬して、
もう誰にも触れさせたくなくて自分の手元に置くことにしたわけで、
春夜自身は自分がアオイに抱く苛立ちの正体に全く気付いてないけれど、
これってただの執着で、ただの愛なんだよな、と読み進めてゆくうちに
確信に変わってゆきます。
ただ、独占欲はあるくせにデリヘルで働かせるのはいいのか、
春夜の嫉妬ポイントがちょっとわからないのだけど。
アオイを失いかけてようやく自分の感情の正体に気付く春夜ですが、
ここまで長かった…。
上巻では野良センチネルの青年・イツキとガイドのアルバとの出会い、
一緒に過ごすうちに少しずつ心を通じ合わせてゆく二人が描かれました。
まっすぐに自分を慕ってくるイツキに情が芽生え始めるアルバでしたが、
近づけば近づくほどにイツキを遠ざけようとするアルバ。
下巻ではそんなアルバの抱えたトラウマが明かされます。
そこには過去に出会った一人のセンチネルの存在が関係していました。
戦場で周囲を圧倒する程の異能力をもった一人の男。
周囲を、彼自身を救いたい一心で彼に寄り添ったアルバでしたが、
そのことがある悲劇を生んでしまうのでした。
アルバの皮膚を覆う火傷痕もその出来事によって生じたものでした。
そんな過去のトラウマから逃げ続け、
誰にも心開くことなく生きてきたアルバ。
それでもアルバ以外のガイディングを受けたくないと
まっすぐアルバに向き合い、彼に認められようと
必死に努力するイツキの健気さがいじらしくて愛おしすぎました。
そして、最後はアルバも敢え無く陥落。
ずっと自分の気持ちを抑え込んでイツキに対しても
塩対応を決め込んできたアルバでしたが、
好きと開き直ってしまえば予想外にあまあまでした。
イツキを溺愛するアルバが最高すぎて、
もう少しその後の二人を見たかったです…!
まだあまり馴染みがなくてよくわかっていないセンチネルバース。
センチネル=五感が驚異的に優れていて、
ガイド=センチネルのメンタル・体調管理役
程度の知識しかなかったのですが、
本作はさらにそこに第六感(異能力)を備えたセンチネルも存在する
という初めて知る設定もあって面白かったです。
ギャングの下っ端で路上生活を送っていたセンチネルの青年・イツキは
ある日、FBIに検挙され、そこでガイドのアルバと出会います。
はじめは野良猫ばりの警戒心でアルバに抗っていたイツキですが、
アルバの強引ながらも大きな手で癒されてゆくうちに心を開いてゆきます。
アルバの言葉通り、野良ワンコが警戒しつつもじわじわと懐いてゆくような
イツキの変化が可愛いのなんのって。
育った環境が恵まれていなかっただけで、本来の彼は人懐こくて努力家で、
いい子なんだろな、と。
表面上はぶっきらぼうなアルバですが、イツキへの態度の端々に
情が湧きまくっちゃっている感じがじわじわと滲み出てしまっていて
ニヤけてしまいました。
けれど、せっかく二人の距離が近づいたと思っていたのに、
なぜかイツキと距離を置き始めるアルバ。
イツキの専属バディになることも頑なに拒むアルバにもどかしさが募ります。
そんなアルバから避けられてしまうストレスから
遂にはイツキがケガをしてしまい…ヒヤヒヤしながら下巻へ続きます!
あらすじを読まずに読み始めたものだから、
めちゃくちゃびっくりしました。
なんだこの設定、なんだこの世界観。
裏社会を牛耳る秘書会なる存在。
そして、そこで行われる“秘書”を手駒として行われる
会社の命運を懸けたセックスバトル。
ある目的のために秘書会に参加した若き社長の鬼塚は
秘書ランキング1位の竜冴を雇うことになるが…。
とにかく初っ端からセックス尽くし。
モブとの絡みもありますので、苦手な方はご注意を。
最悪な出会いから反発し合う鬼塚と竜冴でしたが、
社長とその秘書として、共に戦ううちに絆が芽生えてゆき…。
設定が設定なだけにピュアとは言い難いし、
愛のないエッチもあったりするけれど、
二人の間に芽生えつつある感情の先を見届けたい…!
今のところ糖分は控えめですが、今後の展開に期待をしつつ下巻へ!
俺様α、女王Ωに陥落し、番犬に降る。
誰もが羨む裕福な家庭に生まれたαの御園はある日、
同じクラスの優等生・藤波の突発的なヒートに巻き込まれ、
本能に抗えずに襲ってしまいます。
正気に戻った御園は藤波に謝罪するも、
藤波から“秘密”を逆手にとられ、
卒業まで恋人のフリをして自分の“番犬”を務めるよう
命じられてしまうのでした。
第一印象は世間知らずの坊ちゃんで俺様な御園でしたが、
藤波から主導権を握られて「わん」と応えてしまうくらいには
チョロくて素直な子でした。
それまでは男女問わず食い散らかしていたようですが、
藤波と関係をもって以降は藤波の番犬として忠実に彼氏役をこなし、
強気な見かけとは違って努力家で健気な藤波にずぶずぶと嵌ってゆく御園。
藤波からそっけない態度を取られながらもめげずに声をかけたり、
彼の窮地には彼氏面で駆けつけたりと意外にも一途なワンコギャップに
萌えてしまいました。
そんな御園に内心では絆されつつも
なかなか素直になれない藤波のツンデレっぷりよ…!
普段は真面目なのにヒート状態に突入すると自分から
御園を煽ってしまう無自覚エロっぷりも罪深すぎました///
散々藤波に振り回されてしまう御園でしたが、
ラストでは藤波に置いて行かれないよう自らも進む道を見つけて、
藤波を見守りつつ彼と一緒に歩んでいこうとする姿が男前でした。
ヤリチンと思いきや、恋を知った後は超絶一途攻めに豹変ぶりが最高すぎました。
小石川先生の作品は毎度号泣させられてしまうのだけれど、
今作も例に漏れずエンディングではボロ泣きでした。
本作は魔王と勇者の愛の物語。
魔王・Qに求婚するために彼の望むレアアイテムを集めては
せっせと通い詰める勇者・ガラテア。
それは試練を課してその愛の重みを確かめる、さながらかぐや姫の如く。
いや、敵対する二人の恋なのでロミジュリか?
それでもQに求められれば嬉しそうに旅へ出てボロボロになりながら
帰ってくるガラテアの健気さに胸がぎゅうううっと締め付けられます。
けれど、どんなに強くとも彼は人間。
そして、対するQは魔王。
二人の生きる時間はあまりにも違いすぎました。
本当は彼のことを想いながらも素直になれないQ。
次こそは次こそはと想いを告げるのを先延ばしにしていたら、
気が付いたときにはかつて精悍な青年だったガラテアは
老いてしまっていました。
ようやく自分の過ちに気付いたQでしたが、時すでに遅し。
ある日、弱い魔物を庇ったガラテアは凶刃の元に倒れてしまいます。
昔の彼ならば颯爽と撃退してのけただろうけれど、
彼はあまりにも年を重ねてしまっていました。
血を流すガラテアの元に駆けつけるQ。
やっと自分も彼のことが好きだと伝えられるのに、
けれど、老いてしまったガラテアはもはや目を開けることはありませんでした。
なんという悲恋…。
今回はあまり悲しくないお話なのかな?なんて思って油断していたら、
まんまと号泣させられちゃいました。
けれど、物語は単なる悲恋で終えることなく、その後の展開に救われます。
幸せそうな笑顔に包まれた二人に、さらに感動の涙が…。
たくさん回り道をしたけれど、全てはこの結末のためだったのだな、と
涙と鼻水に塗れながらそっと読み終えました。
二人の恋を見守る魔物たちもユニークで愛嬌があって可愛らしかったです♪
前作からのまさかの続編の報を知った時から
この1冊が刊行されるまで楽しみで仕方なかったけれど、
こんなにも素晴らしいエンディングが用意されているとは思わなくて、
とにかく感無量の一言に尽きました。
天野と彩輝、大竹と大地、利人とミハイル、前作同様に
3組のカップルが登場し、それぞれの後日談が描かれています。
『ふたりのアトリエ』天野×彩輝
活動の場を海外に移し、アメリカと日本で遠距離恋愛の天野と彩輝。
ある日、彩輝の元に天野の個人展のデザイン依頼がきて…。
前作では恋は成就したもののその遠距離恋愛となってしまい、
少々物足りなさが残った二人のその後が読めて嬉しかったです!
二人の結婚式まで見届けることができてまさしく大団円でした♪
『花束のある風景』大地×大竹
大学を卒業後、友人と一緒にゲーム会社を設立した大地。
大竹とも同棲を始め、仕事もプライベートも順風満帆、のはずでしたが…。
もはや熟年夫婦の如く安定感のある二人でした。
大竹の表情が前作に比べると柔らかくなっていました。
そして、こんなに若く見えるのにまさかの還暦目前とは…それにもびっくり!
それなりの年の差のある二人なので、この先のことを思うと切なさもありますが、
少しでも長く二人で添い遂げられるといいな…。
『エラン・ヴィタール』高木×ミハイル
大学卒業後、大竹の助手をしながら創作活動を継続している高木。
ミハイルという恋人に刺激を受けつつ、創作もはじめこそ賞を
受賞するなど順調にいっていたけれど、徐々にスランプに陥ってゆき…。
先の2組に比べると、二人の気持ちがすれ違ってしまったりと
ちょっとドキドキさせられてしまった二人。
だけど、どれだけ離れていても最後はお互いしかいない!と思えた二人。
困難を乗り越えて結ばれたからこそその絆の強さを噛みしめられました。
高木のために一度は諦めたミハイルの跳ぶ姿にぐっときました…!
『Le bonheur de vivre-生きる歓び-』3組全カプ集合
3組のカプが全員集合!
友人たちのサプライズで天野と彩輝の結婚式が計画され、
みんなに祝福されながら締め括られる素晴らしいラストに
多幸感でいっぱいでした!
厳格な家系に生まれ、ゲイであることを隠して生きてきた遥貴。
唯一、自分に正直になれるのは近所の神社で神様にお願いするときだけ。
ある日、いつものように神社に立ち寄ると、倒れている青年を発見し
介抱するために連れ帰るもその青年・徒和は自分が“神様”だと言い出して…。
その上、毎日神社で遥貴の溢れんばかりの願い事を聞かされていた徒和に
願いを叶えてあげると抱かれてしまうことに!
徒和の神様とは思えないマイペースさに振り回される遥貴ですが、
一緒に暮らすうち彼の人(神)柄に惹かれてゆきます。
人間であれば間違いなくヒモ男な徒和ですが、
神様なのにこんなにもダメンズ…と思うと
なぜかそのギャップが愛おしく見えてきちゃうんです。不思議…。
徒和も徐々に遥貴に絆されてゆき、念願の両想い!というところで、
人間と神様の恋に立ち塞がる障壁が…。
遥貴に恋をするという禁忌を犯したことで消滅してしまう徒和。
やっと恋が実ったのにこんなの辛すぎる…。
一体この障壁をどう乗り越えるんだろうと思っていたら、予想外の抜け道が!
少々ご都合主義的な感は否めないけれど、最後の最後までゆるくて明るい
徒和に癒されっぱなしでした♪
孤独だった遥貴も、初めて恋を知った徒和も、幸せそうでよかった!