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この作品に出会えてよかった

2冊目のコミックス、とても楽しみにしていました。
前作の「半壊の花」は短編集で、それもとても読み応えがありましたが、今回は1冊同じお話ということで、期待半分(不安半分)という気持ちで手に取りました。
一冊で「転生」というものが描ききれるのだろうか…?という思いもあり…。

しかし、読み終わったあと、本当にこのお話と出会えてよかったと心から思いました…!

今作の「転じて恋と生き」はタイトルにも入ってるように「転生」のお話です。
以下、ネタバレがあります。



私は今まで、転生ものというと、前世の想いを抱えたまま、現在のふたりが幸せになるというものだとなんとなく思っていましたが、今回のこのお話は少し違いました。
もちろん過去のふたりの恋愛感情も引き継いでいるし、攻めの八尋が一時的に前世の人格にとってかわられるシーンもあります。けれど、最終的に現在のふたりが、自分達は自分達で、過去のふたりとは違うんだ、それぞれの人生があるんだ、と決別を選んだことに、驚き、そして感動しました。
過去のふたりも、長い時間を経て、現在のふたりの身体を介し再会したのち、彼らは彼らで手を取り合い、去っていくんです。
前世のふたりは、幸せな結末をむかえたわけではなかったですが、それを受け入れ「もう一度会えてよかった」とふたりで一緒に去っていくーーこのシーンに自然と涙が出ました。

現在のふたりも、とても好感が持てるふたりでした。
攻めである八尋が、受けの吉武を好きになったきっかけが「自分が弱っているときにアイロンをかけてくれたから」というのがなんともかわいらしかったです。相手からすると些細な事でも、本人にとってはとてつもなく大きなことで、感情を揺すぶられることがある、というのがうまく表現されていました。現代のふたりが惹かれあうのもとても納得できました。

一冊を読み終わるのがあっという間で、世界観に引きずり込まれていました。
最後のほうはページをめくるのがもったいないと思えたほど。


早寝先生は、人の「ひたむきさ」や、ひたむきさがあるからこその「不器用さ」を描くのが本当に上手い方だなと思います。人を好きになることって素敵なことだなぁと思わせてくれるといいますか…。
登場人物がみんな、ちゃんと「生きている」という感じがするので、悩んでいる彼らのそれぞれの選択や、人生に感動するだろうな、と。


本当に、本当に素敵なお話でした。
(言葉にすると弱くなってしまうのが悔しい…!)
いろんな人に読んで欲しいです!
転生ものだからわかりにくいのかなとか思われるかもしれないですが、
全然そんなことはないと思います。
(最初、名前がどっちだったかな…?とは思いましたが、わかってしまえば混乱することはなかったです)


卒業式の日の青空に、桜の花びらが散っているような、爽やかな読後感のある作品でした。
(読み終わったあと、カバーをはずしてカバーの下を見たとき、私はもう一度泣いてしまいました…)

きっと何度も、今後読み返す作品になると思います。

半壊の花 コミック

早寝電灯 

繊細で美しい言葉たちが綴るあたたかな短編集

短編集ですが、どの作品も読みごたえがあり、まるで良質な短編映画を観ているような気持ちになりました。短編なのに、そう思わせない濃密な時間が詰まっている、という感じで…。

繊細で美しいモノローグやセリフの数々、丁寧なストーリー展開、登場人物たちの人間らしい不器用さ…。派手な作品ではありませんが、読み終わったあと心がじんわりとあたかかくなり、優しい気持ちになれます。

特に私は、最後の「稲穂に帰る道」「稲穂につづく道」のお話が好きでした。
「稲穂に帰る道」では田舎の高校生の健気な恋が描かれています。噂になるのことへの恐れや、親への罪悪感から恋人らしいことはできなかったけれど、秋になると稲穂とススキに隠れてこっそり手をつなげるのが嬉しかった、という幼くもまっすぐで純粋な恋心に胸が締め付けられました。

そのふたりは一度別れてしまうのですが、大人になり再会するまでを描いたお話が「稲穂につづく道」です。
バラバラに東京に出てきていたふたりが、とあることをきっかけにメールでやり取りするようになり…という、一途な恋心が再び実を結ぶ様子は、一度別れを見ている分、よかったね…!と心から思える展開で、最後のシーンでは涙してしまいました。本当にいいラストでした…!
描きおろしのその後も、とてもよかった。

モノローグやセリフの言葉が、胸に響く美しさで、絵はまだ少し粗削りな感じもありますが、雰囲気に合っていると思いました。

一話一話が丁寧に作られていて、何度も読み返したくなる(実際に何度も読み返している)作品です。