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解説も含めて「神」

講談社文庫版では、伏見憲明の解説がついている。
それがまた素晴らしい。
買うときは、講談社文庫版をオススメします。

終わり方が素晴らしい

この作品がBLレーベルから出ている世界に、感謝している。
とてもオススメである。

【以下ネタバレ】

主人公は物語の終盤で、ずーっと好きだった先輩とセックスする寸前になる。
しかし加賀谷(当て馬)が部屋のドアを叩いて乱入してきたので、結局セックスしなかった。
かなり想いが通じ合ったところまでいったが、セックスはしないまま先輩は転勤で去っていく。
そこからのモノローグがとても素晴らしい。

「国富さんと俺は そういう関係にはならなかった」「あの時もしあのまま寝ていたら もし国富さんの転勤がなかったら」「俺たちに時間があったら 何か一つでも違っていたら 今頃 何か違った関係になっていたかもしれない」

「でも加賀谷が来た時 国富さんはほっとしたと思う」「そして 俺も確かに ほっとしたのだ」

主人公は先輩(国富さん)のことがずっと好きだった。性愛込みで好きだった。
ただ、その「好き」は、実際に先輩とお付きあい・セックスをしたいと渇望する類いのものではなかった。大切な唯一無二の後輩として扱われるだけで主人公は満足していたのだ。ひたむきな敬愛と片想いを向けていただけなのだ。
そして先輩は、可愛い後輩として主人公のことが好きだった。セックスしても構わないと思えるほどには好きだった。
もし何かが一つでも違っていれば、お付きあいしていただろう。

しかし結局、二人はセックスしないまま離れる。
そのとき二人は、ほっとしたのだ。
ほっとしたまま新しい日常が続いていく。

互いに好きなのは確かでも、本当にセックスしていいのか?という逡巡が発生することもあるだろう。それは主人公の語りからもわかる。
「ずっと好きでそばにいたくて」「でも」「本当に こんな風になりたいと思ってたわけじゃなくて 本当に」「ただ 好きだっただけなのに」

大本命の先輩とセックスしないまま離れたことに、ほっとする……ほっとしてしまうリアリティが絶妙に描かれている。読者はこの「ほっとしてしまう」心情を追体験できるだろう。どこか、よしもとばななの小説に通じるようなリアリティだ。
BL作品として、このリアリティが描かれたことに感動した。もっともっと広く読まれてほしいし、本作が長く愛されることを願っている。
(もし似たようなBL作品があれば教えてください。読みたいので)

天国の底 電子 コミック

山田袋 

天使らしくない天使

天使らしくない天使が殺し屋につきまとっている話である。
人が死んでるときもサラッとしてる天使は、かわいい顔をしている。
簡略化するところは簡略化して描いてあり、絵と話に緩急がついてて良い。会話における無言の具合も、良い。
飄々とした天使が血まみれの殺し屋を抱いているシーンは、あのコマ割りに余韻を感じる。
終わらせ方も好きだ。

上手いマンガなのに、調べても作者の情報が一切でてこなくて困惑した。