秘密(文庫)

himitsu

秘密(文庫)
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神26
  • 萌×212
  • 萌2
  • 中立0
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
8
得点
184
評価数
40
平均
4.6 / 5
神率
65%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
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イラスト
たえ 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
講談社文庫
発売日
価格
¥690(税抜)  
ISBN
9784062777100

あらすじ

愛を信じればこそ、分かち合える秘密とは
男の冷凍庫に死体を隠し街を彷徨う。
『箱の中』『美しいこと』を超える衝撃で迫る、恋愛小説の極北。

その夜も啓太は街を徘徊していた。死体が入った冷凍庫のあるアパートに戻り悪夢を見たくないのだ。ゲイバーで出会った男、充は部屋を拝借するにはちょうどいい相手だった。愚鈍だが心優しい充に啓太は徐々に惹かれていく。そして啓太は過去を断ち切るため、充を伴い死体を隠した冷凍庫を海に捨てに行くが……。

※本書は、2007年4月蒼竜社よりノベルス版で刊行された『秘密』に改稿を加えたものです。

表題作秘密(文庫)

失読症 杉浦充
大学生 内海啓太

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数8

物語の構成は素晴らしい

ものすご〜く今更だけどようやく読めた。BL小説というより主人公が同性愛者の小説と言ったほうが適切だと思う。第1章のストーリーの起承転結の連結が驚くほど上手い。読んでいていつも持ってかれてしまう…。
2、3章は第三者目線で描かれていて、これもまた素晴らしい。第1章では啓太目線だったので、杉浦の過去はあまりにも謎めいたものだったが、榎田目線でストーリーを進ませることで、自然に杉浦の過去を遡ることができた。そして樹目線で物語の後片付けをし、終章に句点を綺麗につけた。
本当に完成度の高い小説で、木原先生の文章力と想像力に脱帽。今回も素敵な作品ありがとうございました!

4

解説も含めて「神」

講談社文庫版では、伏見憲明の解説がついている。
それがまた素晴らしい。
買うときは、講談社文庫版をオススメします。

2

妄想と現実の境目でのお話

木原作品は2冊目ですがこの作品も一度開いてしまったら最後、ページをめくる手が止まりませんでした。一読目は先が知りたくて、次は結末を知ってからの登場人物の言動の確認、その次は部屋の間取りなど細かい背景、、と貪るように読みました。内容紹介も読まずまっさらな状態で読み始めましたがとにかく話に引き込む力がとんでもなく強かったです。

 主人公の啓太が冷凍庫を買う場面から始まるのですが既にここから不穏な空気が漂っていて先日読んだばかりの「積み木の恋」を思い出してしまいました。でも早い段階から啓太が死体を自室の冷凍庫に隠しているという状況はたぶん啓太の思い込みだろうなと思わせる表現がチラついていたので殺人という犯罪よりも秘密が登場人物にどんな影響を与えていくのかが気になりました。

 啓太は秘密を抱えて精神的に不安定、ゲイバーで出会った充にしても見た目はまあまあだけど愚鈍でしかも優しくしてくれれば誰でも好きになってしまいそう。そんな充を見下した感じで見ている啓太が徐々に充を求め依存していく過程が薄暗いんだけどなんだかとっても甘いんですよね。

 会ったばかりで警戒しているはずなのに充の部屋でいとも簡単に眠りについたり、翌日には充を慰めながら膝の上で眠ってしまったり、とにかく啓太が無防備に寝てしまう場面になんともいえない心地よさを感じてしまいました。一緒にいる時間が長くなれば純真な充に情がわくのは自然だけど、体も許してしまうのは秘密という重荷から逃れたい気持ちが自分を好きだと言う相手と触れ合う事で得られる安心感で消え、同時に本能的な肉欲がムクムクと湧き上がってくるって感じなのでしょうか。。

 解説で作家の伏見憲明さんのいう、どんなに個と個が純粋に結びつくことが困難でも、その術をみつけられなくても、あきらめない BLのハッピーエンド のためなのだろうか。。。 いや、、違う気がする。。にしても充は本能のおもむくままで啓太とのエッチが好きすぎて萌えます。。

 そのエッチな充を育てた従兄弟の榎本がなんとも魅力的です。充の命の恩人であり自立させてくれたすごい人。なのに自由恋愛主義なので従兄弟の充とも性的な関係を持っちゃうとか。。だけど決してぶっ飛んでいるわけじゃないんですよね。中盤の「秘密Ⅱ」が榎本視点でのお話だったのでうれしかったです。

 興味深かったのは「秘密Ⅲ」の充の弟の樹のお話。ここでようやく充は父親以外の家族と再会できるわけだけど実は母親と妹は充を不憫に思っていたことが嬉しかった。家族みんな冷たいのかと思っていたので。。弟の樹もなかなかの曲者だけど「俺はみんな兄さんのことを忘れたのかと思っていたよ。籍を抜くって言った時もみんな何も言ってなかったから」と心臓をドクドクさせながら言ってるあたりで妙な共感がありました。樹は充と再会した時に放った言葉を母親や姉には秘密にしておくのでしょうかね。。


2

スーパー攻め様志向への挑戦

◆あらすじ◆

劇団員の恋人を殺し、死体を冷凍庫に隠している大学生・啓太(受け)。死体のある部屋に帰りたくなくて、啓太はゲイバーで声をかけてきた充(攻め)のアパートに転がり込みます。
ところが、充もまた秘密を抱えた男。
読み書きができない充は、そのせいで弁護士の父親に全人格を否定されて家出、アルバイトで生計を立てているものの、心の傷は癒えないまま。
そんな、お互いに精神の極限状態にある二人が、傷を舐め合ううちに、お互いが最上のパートナーであることに気づき、愛すること、愛されることに自らの存在意義を見出していきます。
導入部は啓太メインのサスペンス作品に見えますが、物語の軸になっているのは啓太よりむしろ充。
充という重いハンディキャップを負った男をめぐる恋愛や家族関係を通じて、人間の価値・幸せの意味を問いかけた作品です。(あくまで個人的解釈ですが^_^;)

◆レビュー◆

いろんな見方がある作品だと思いますが、BL的な見どころは、攻めの充が、スーパー攻め様志向の王道BLに対するアンチテーゼになっている部分かなと、個人的には思います。
そういう面が、とても木原作品らしいですよね。
ディスレクシアという文字が認識できない学習障害であることを家族に理解されず、優秀な一家の中で唯一出来の悪い人間・家の恥として人格を全面否定され、家族と絶縁状態にある充。
セックスと料理は上手く、ルックスもゲイバーで複数人に声をかけられるレベルなのですが、人に愛される自信がないせいか、キョドりがち。ちょっと鬱陶しい面もあります。
そんな彼と長続きする男は誰もおらず…
死体のある部屋に帰りたくないという事情があった啓太は充から逃げる機を逸しますが、それによって彼だけが、充の魅力に気付くことになります。
一方、生きる理由として誰かを愛することを欲していた充は、啓太を得て、彼のために生きることを決意し…
互いにかけがえのないパートナーを得たことが、二人を大きく変えていきます。

萌え要素は少ない作品ですが、充と啓太が、お互い精神的に追い詰められた状況で、相手に縋るように行為に没頭するセックスは、個人的には萌えました。
ちなみに啓太の殺人に関しては意外な結末が待っています。まあ、これは二人を精神的に逼迫した状態に追い込むための設定ということで、どう顛末を付けるかという部分は、この作品にとって重要ではなかったのかなと。

メインカプ二人のほか、充の従兄弟でゲイバーの雇われマスターの榎本や、充の弟で弁護士の樹も登場。
普通に考えれば彼らのほうが、BLのメインキャラとしてふさわしいスペックの人間ですが、皮肉なことに、彼らは愛情とは無縁です。
計算高い彼らには、充のように捨て身で人を愛することはできないし、そもそも愛に価値を感じていないようにも見えます。
でも、本当にそうなのか?
かつて成り行きで充と寝たこともある榎本が、今は啓太との確かな幸せを掴んだ充と飲みながら、ふと衝動的に充にキスする場面(Ⅱ章ラスト)が好き。
充は怒りますが、「油断しているほうが悪いんだよ」と充の頬をなでる榎本。
以前は自分を好きだと言う充が鬱陶しかったのに、幸せそうな充を見て、ほんの少し彼が惜しくなってしまったのかも?
一瞬のキスにこめられた榎本の微妙な心理が、心地よい余韻として心に残りました。

◆この本の解説について◆

一般書籍扱いで発行されているため、通常BL本にはない解説が付いています。
さて解説者は一般小説としてこの作品のどこを評価するのか?そこも楽しみの一つだったのですが…結局のところ、「あるはずもない展開」「不可能を可能にする」説得力がある、の繰り返し。
あとは「BLという枠組みで発表されてしまったがために、彼女の作品への評価が低く見積もられているとしたら、とても残念」としつつも、ハピエン必須などBLとしての特異性を書いただけ。BLの枠にはめた解説にすぎないようにしか読めませんでした。
もっと読者層を広げられそうなBLはたしかにありますし、この作品もその一つだと思いますが、一般書籍になるとこういう奥歯に物がはさまったような解説が付いてしまうのであれば、あまり喜ばしいことでもないような。
少なくとも自分のような腐という属性の人間は、BLとして発売されている某出版社の新書版を読んだ方が、無駄にモヤモヤせずに済む気がしました。

17

NoTitle

木原さんの描く全然格好良くないのに愛しいと思える人物が今作でも生かされてます。
充のディスレクシアですが今なら適切なサポートが受けられる可能性が高いです、
世の中結構良い方向に変化してます。

今まで読んだ木原さんの作品の中では一番読後感が爽やかで、最初に読む作品としてお勧めです。

冷蔵庫の中身は空で人殺しは妄想だけど根本は解決してないんですね、啓太の妄想は続く可能性が高い。
全て受け入れる充の愛が深過ぎる。

2

攻めに萌えてしまった…


正しい気持ちではないかもしれませんが、あくまでフィクションのキャラということで許してほしいのですが…

充くん(攻め)がとてもとても可愛くて。

見た目は普通の男性なのに、間が悪く要領も悪く人並みに立ち回れずすぐに泣くし重すぎる一途さで一心に好き、嫌いにならないでと伝えてくる。
焦ると舌っ足らずになりまるで子ども。

その様が妙に可愛くて萌えてしまいました。
100円玉を交番に届けるいい子ちゃんなので尚更。

そんな彼ですが、攻めです。身長も高いです。
ザ・受け!みたいな小柄で童顔で可愛い系な人物ではなく…どう見ても普通の男の中身がこれ…っていう奇妙さにゾクゾクきちゃいました。
歪んだ性癖かもしれんけど読んで感じることは自由…ということで許してほしい。

そんな大きな子どもを可愛い…とご都合展開で好きになることはなく、やばっ…とかおかしい…とリアルな内心を書きつつも、結局惹かれていく。
自分でもどうにもままならない…が、好きっていうリアルな人間らしい流れにいつも共感させられます。
序盤、「教えて。教えて!」とねだる充くんに間違った連絡先を伝え一度聞いたにも関わらず名前を覚えてさえいない相手だったのに。


タイトルにもある秘密の部分ですが、なんとなくそんな気がしていました。
ただあからさまに感じたわけでもなく、もしかしたら?実は?感を拭いきれず楽しめました。
この曖昧さ、境界のなさを筋にしたらすっごく怖いお話になりそうですね。


Ⅱの方では元彼との関係が分かります。
榎本ってなんか攻めのイメージあったんですけど、逆なんですよね。
先生の攻め受けはいつも私の逆イメージをぶっ壊していくのですが、すんなり読めるので有難いです。

お話のキャラってよりは現実のどこかにいるかもしれない一人の男…って感覚で見ているからかもしれない。

1

人間とは何かを考えさせられます

だいぶ前に購入していたのですが、ハードそうな内容だったので手を付けてられていませんでした。
しょっぱなからゾゾゾな展開で、最初は攻めも気味が悪くて、どーなってしまうのか、ハラハラさせられました。
ところが、オチは、え?と肩透かしをくらうほどアッサリしたもので、その後、特に語られることもなく、もう少し深掘りしてほしかったです。
攻めに関しては、理解の薄い周囲からの冷たい対応がただただ可哀想で、でもこんなこともなければ受けとも出会わずにいたのかと思うと、出会えて良かったなーと思います。
純粋で真っ直ぐな攻めに受けも救われたと思います。
萌えはほとんどなかったですが、木原先生らしい異色だけど、心打たれる作品でした。

3

秘密にする側/される側が持つ愛

“途中でどんなに辛いことがあってもいいから、最後は二人が幸せになる話にして。死んだり、別れたりするのは絶対にやめて”

読んだのは新書版ですが、文庫のこちらに誘導されてきました。
木原さんの作品は十作品以上読んだところですが、主人公の殺人を扱った本は初めてです。

啓太は悪夢に魘され自分のアパートに帰りたくない。恋人を殺し冷凍庫に詰めたから。バーで出会った杉浦の部屋に運良く泊まり暮らすようになっても、部屋にぽつんと置いた冷凍庫は頭から離れません。
二人とも記憶が不安定で、啓太は自分の現状のいきさつを何度も再確認しなければいけないし、杉浦は方向音痴で名前も直ぐに覚えられない。
現実と夢が混ざりどちらも現実になっている状態で、何度も繰り返される冷凍庫の描写と作動音が映画的で簡単にイメージでき、ゾッとします。

啓太と杉浦はどちらにも重たい秘密(過去)があります。初めは啓太の秘密を中心に、そこから出会った杉浦と秘密を共有し、杉浦に話は移行していきます。

杉浦は言語障害が秘密というよりも、優秀な家族に“秘密にされてきた”というべき存在です。
読者にはその秘密よりも杉浦が抱く愛情表現が重く感じます。しかし彼の純粋な言葉の簡潔さ、ストレートな愛情表現は木原さんの小説の中で言葉の美しさをより際立たせます。それは「箱の中」の喜多川と同じ。
「嬉しくて泣いて、泣けることが嬉しくてまた泣いた」
「生きてるのに、生きてちゃいけないの?」
どんなに頑張っても勉強は出来ないし家族を喜ばせられない、恋をしても重たいと離れていく。秘密の中の純粋でどうにも出来ないやるせない部分が露出し、おしゃべりで子供っぽく叫び成長していく様です。

「秘密にする側」啓太と「秘密にされてきた側」杉浦。最後の数ページにこの作品の一番大事なところがぐっと凝縮されているように感じます。杉浦の弟 樹はずっと知らされていなかったことを母と姉から知らされます。ディスレクシアの事、杉浦を心配し動向を知っていた事、父を批判している事。
そして啓太も殺したはずの恋人を殺していなかった。二人の秘密が跡を残しつつ解け、前を向いて進む様子がうかがえて、読み始めには想像しなかった読後感に驚きました。

そして啓太にお願いをした杉浦の上記の台詞通り、この作品も人が死んだり別れたりせずに締めくくられました。ハッピーエンドや納得のいく終わりよりも、この作品の中で生きている杉浦が幸せである終わりだったのが一番嬉しいです。そんな気持ちで読み終える作品に出会えてそれもまた嬉しく、やはり木原さんの作品は面白いなと思いました。

余談/
従兄弟が「あいつ、セックス上手いだろ」と言うのでてっきりそういう仕事だとか、無理やりさせられていたのかと思いましたが、そういう訳ではなかったようで、自分の予防線の汚さを感じました(笑)
挿絵は独特なタッチでお洒落なのですが、個人的に持ったイメージと違っていたので最後まで違和感がありました。

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