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今作の前に読んだ木原先生の「薔薇色の人生」がとっても面白かったので、同じく人気のある本書を手に取りました。結果めちゃくちゃ面白かったです。文句なしの神評価!
あと、茶屋町勝呂さんのイラストがまた素晴らしい。インパクトのあるタッチが秀逸です!
充(攻め)の膝に跨るように座る啓太(受け)のイラストや、報われない恋に涙する充(攻め)を宥める従兄弟=榎本のイラストが、特に好き。
●「秘密」:杉浦充(受け)視点
まあ、ホントに度肝を抜かれました。だってBLなのに主人公の一人である啓太(受け)が「殺人」て。ええっ!マジ?重い、重すぎる!と。ですが、読みながらふと分かってしまいました。これはきっと主人公の「妄想」に違いないと。そう信じたら安心して読めました、途中までは。
ところが終盤に差し掛かったころ、私は自分の認識が誤っていたかもしれないと思い始めました。それは、啓太(受け)が殺した男の入っている冷凍庫を海に沈めようと運ぶシーンを読んだあたりのこと。とっても重量がありそうなのです。やはり死体が入っているから?
加えて、その冷凍庫の中身を確認したと思われる充(攻め)が、急きょ啓太(受け)を手伝い海に投げ入れるシーンを読んだため。また、その翌日にとった充(攻め)の行動のため。充(攻め)は、愛する人のために他の何もかもを捨て、自らが出頭するのです。
私は泣きました。充(攻め)の無償の愛を感じたからです。なかなか出来ることではありません。こんな場合、啓太(受け)に自首を勧めるのが普通でしょう。あるいは関わり合いになりたくないと逃げるか、通報するか。こんな充(攻め)を、誰だって愛さずにはいられませんよね。
「無償の愛」ということで内容は全く違うにもかかわらず、私は「容疑者Xの献身」を思い出してしまいました。この「容疑者Xの献身」は東野圭吾著の推理小説で、映画化もされております。BLではないため、ここで取り上げるのは間違っているかもしれません。ですが、犯人が生まれて初めて愛を知り(正に純愛!)、その愛のために殺人を犯します。殺人は憎むべき犯罪であり同情は禁物と知りつつも、ラストは嗚咽がこみ上げるのを止めることが出来ませんでした。
無償の愛とか、献身愛はまさしく私のツボ。「秘密」では、啓太(受け)はこんなにも充(攻め)に愛されています。幸せなことです。何はともあれ、大どんでん返しありのハッピーエンドという、ホントに素晴らしい恋愛小説でした。
●「秘密2」榎本孝則(攻めの従兄弟)視点
「秘密」の5年後のお話です。恋人同士が、今も仲良く暮らしている風景が描かれており、ほのぼのします。また5年後の設定ではありますが、ずっと過去に遡り、充(攻め)がいかにして家出をし、自立するに至ったかが描かれています。
それとディスレクシアについても多くのページが割かれ、うんうん、なるほど、と納得させられました。充(攻め)は、字の読み書きが出来ないため、頭が悪いと思い込んでいました。でも違っていたのですね。私自身も興味を持ち、ググってみました。
まず、ディスレクシアとはギリシア語の「困難(ディス=dys)」と「読む(レクシア=lexia)」に由来しています。つまり知的に問題はないものの、読み書きの能力が困難な症状ということです。文中にもその症状の一つとして、「波の上に書いているみたいに、字が歪む」とありますが、想像するのが難しいです。一目瞭然と思いまして、参考までにとあるサイトのURLを張り付けておきます、ご参考まで。
http://childs-disability.academy.jp/ld/post-838.html
●「秘密3」杉浦樹(攻めの弟)視点
「秘密2」と同じ時期の設定です。充(攻め)は、啓太(受け)の助力を受け通信制の高校を卒業できました。二人ともちゃんとラブしているし、良かったなと思える書き下ろし。実は私は本編よりもこちらの作品の方が好き。などと言うと語弊があるかもしれませんが、とにかく泣きました。
充(攻め)を捨てた父親は今も変わりなく傲岸不遜の嫌な奴です。でも、それ以外の家族(母親、姉、弟、故祖母)が優しくて、優しくて。彼らの事情や心情が伝わってきて、目頭が熱くなりました。BLというよりはヒューマンドラマに近いかもしれません。だから好き嫌いが分かれるかもしれません。
充(攻め)が、樹に託したプレゼントに「ほんとうに、ばいばい」の言葉が添えられていて、これには涙腺が崩壊しました。ラストは母と姉が訪ねて来てくれるところで終了。余韻がたまりませんでした。弟の樹が父親に似ているため、ちと心配ではありますが…まあ、大丈夫でしょう。今後は兄の影響を受け、人の心が分かる優しい人間になることを祈らずにはいられません。
とにもかくにも啓太(受け)が充(攻め)を支えているのが嬉しかったです。心の琴線に触れるBL、最高でした。未読の方には是非、お勧めです。
じつは木原作品の中で別格に好きなお話。
いやまあ、正確に言うと、【秘密】と【COLDシリーズ】と【箱&檻】が同列で別格なんですが(笑)
私は木原さんの作品を知らない人に何かをオススメしようとするなら、一番にこのお話を薦めます。
木原さん独特の、痛さ、苦しさ、ズルさ、醜さ、人の欠けた部分、それでも生きなければいけない葛藤と矛盾、そういうのが全部ぎっしりつまっていると思います。
(そして痛さ具合が木原作品初心者に優しい/笑)
読んでいても苦しくて、切なくて、怖くて。
啓太を求める杉浦は、とても無邪気です。
本当に、子供が欲しいものを欲しいと言うようにまっすぐ手を伸ばしてくるから、啓太のずるさを知っている私はすごく切なくなります。
まっすぐな杉浦はとても気持ちが綺麗で素直なんですが、小説だからそう思うのであって、実際いきなり目の前に現れた人がこうだったら、きっと少し怖い。
その辺を「BLフィルター」にかけることなく、ちゃんと「不気味な男だ」と感じさせるリアルが、木原作品の良さであって、深さでもあると思います。
ディスレクシアという障害がもしなかったら……。
代わりにこの綺麗な心を持ち続けることは出来なかったかもしれない、と思うのはきっと私がこのお話にドラマを求めているからこそ考える、自分の都合です。
だって杉浦がまっすぐなのは、なにも障害のせいじゃないもの。
字が読めないというだけで、人としての情緒とかが欠けているわけではないんだから、逆にディスレクシアなのにこの心を持ち続けていられたことのほうが、ずっと奇跡だと思うんです。
そのことに、続編を読んで気付きました。
本当に本当に、嬉しかった。
家族を思う姿も、しっかり自立の道を歩んでいる姿も、その傍らに並々ならぬ啓太の努力があることも、本当に嬉しかった。
託したプレゼントに添えた、不器用な文字の手紙の、最後の一文にぶわ~~~っと涙が出ました。
これから読む方が知ってしまうともったいないので、ここでは書きません。
とにかく読んで欲しい、大好きな作品です。
50歳のすすけたオッサンとかイヤミなデブとかを萌え対象に変えてしまう偉大な木原音瀬さん。
今回もパッとしない男が主人公の相手役です。でもやっぱり萌えた。
この作品はネタバレしたくないです。
あらすじにサクッと触れると、人を殺して冷凍庫に詰め込んでアパートに帰りたくない主人公の啓太が、セックスを条件にバーで知り合った杉浦の家に泊まることになる。愚鈍な杉浦に、少しずつ惹かれていく啓太。
一人の人間のなかに存在する恐怖と安らぎ、光と闇、愛と憎しみ、醜さと優しさ、正常と狂気、相反する二つのいろんな概念が、木原さんの緊張感あふれる文章力で矛盾なく描き出されていた。
崩壊の予感に胸を痛めながら読み、最後はホロリとさせられました。
主人公・啓太は自分の家に帰りたくなかった。何故ならそこには死体があるから。自分が殺した元恋人の柳沢が…
そんな風に始まるこの物語。啓太は家に帰りたくない一心で街をさまよう。誰でもいいから今夜泊めて欲しい。セックス込みで構わない。そんな時に出会ったのが杉浦充と言う男だった。子供のように喋る、少し間の抜けた不器用な男。最初は都合のいい相手だと思った啓太だったが次第に純粋で真っ直ぐ気持ちを伝えて来る充が心地いいと感じるようになって…
最後の方にどんでん返しが来ます。それを書いちゃうと面白くないかもなので書かないけど。でも、私は何となく予感はしてました。きっと、そうなんだろーなーと。それでも、ぐいぐいお話の中に引き込まれて行くんですよね~。さすがは木原音瀬さんです。
で、最後は無事ハッピーエンドで終了☆書き下ろしも二作ありますが、これは、啓太と出会う前の充の話と本編のその後の話になっています。どちらも読みごたえ十分に楽しませて貰いました♪読後、心が暖かくなるようなストーリーです。
3部に分かれてます。
「秘密」→啓太目線
「秘密2」→充の従兄弟の榎元目線
「秘密3」→充の弟樹目線
あらすじの「大きな冷凍庫が唸る部屋で、独り夢を見たくなかったから」から始まるミステリーのようなホラーのような話かと思いきや、このような“ジャンル”という一言ではくくれない物語です。この作品を読んだあとの感想としては、作品としての萌度はほとんどありません。
杉浦充というキャラクターの魅力。
実際こんな人いたら萌えるー!絶対惚れる!!
とか全くないのに、私はこの充のキャラとしての魅力がこの作品の良さの一つだと思います。
彼の抱える「秘密」。これを知り、過去を知り、彼自身を見直すと萌えどころではありませんでした。
充の発する言葉は全くオブラートに包まれていません。
人を傷つける危うさはあるが、そこには充の本心しかない。
ストレートで一つ一つが本当に心に響くんです。
1部の「秘密」が陰鬱な文学青年、啓太目線で進み、彼の「秘密」が非常に背徳的で倫理に反する事なので、何をしてもどんな喜ばしい場面でも灰色の背景のようにしか映りませんでした。
充の過去を描いているのが「秘密2」です。
あえて触れずに。
「秘密3」では充の家族が総出演し、家族愛に涙しました。
樹は、充とその周りの人物全てを見下し父親の血を受け継ぐ嫌な性格な人物です。
しかしそれは、誰しも持ち得る考えや感情の寄せ集めであり、単に「こいつほんと性格悪いな」では済まされませんでした。自分もこういう一面は絶対あるし、寧ろ胸が痛くなりました。
木原作品を読んだ人なら少なからず抱いてしまうだろう、「後味の悪さ」に不安があるとしたら安心して下さい。
落ちるとこはありますがちゃんとハッピーエンドです。