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八十禍の王子と最後の魔女

yasomaga no ouji to saigo no majo

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表題作八十禍の王子と最後の魔女

リカルド,ヴィエント王国第二王子
シオン,最後の魔女と呼ばれる魔女の末裔,19歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

「ともに国を奪うか、ともに国を滅ぼすか。選べ」災厄をもたらす“八十禍の王子”と呼ばれるリカルドに、百年の眠りから目覚めさせられた魔女の末裔シオン。魔女狩りで喪った同胞の無念を晴らすべく、シオンは憎むべき男の手をとった。シオンの身には五人の魔女の力が封じられており、解放するには人間の体液を得なければならない。王位継承のため魔女の力を利用したいリカルドは、シオンの身体に精を注ぐ。復讐を誓うシオンは男でありながら同性の精を受ける屈辱に耐えるが、果てはリカルドの妃として娶られることに――!?せめぎ合う野心と復讐心、愛と憎しみに翻弄される淫靡なBLファンタジー。

作品情報

作品名
八十禍の王子と最後の魔女
著者
沙野風結子 
イラスト
Ciel 
媒体
小説
出版社
一迅社
レーベル
一迅社ノベルス
発売日
電子発売日
ISBN
9784758094610
4.3

(70)

(39)

萌々

(21)

(7)

中立

(3)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
16
得点
303
評価数
70
平均
4.3 / 5
神率
55.7%

レビュー投稿数16

お値段も高いが、満足度も高い。

作家買い。
さらにCielさんが挿絵を描かれているということであらすじも確認せずに早々に予約していました。予約していましたけれども。

お値段、なんと1200円+税。ちょっとお高いよね…。
が、このお値段に見合った分厚さ。自立します。そして分厚さを裏切らないストーリー展開をみせる1冊でした。沙野さん作品はファンタジーものが多いイメージがありますが、今作品もファンタジーものです。





ヴィエント王国の第二王子のリカルドは、とある古城に配下たちと踏み込んだ。そこにいると言われている「最後の魔女」を見つけ出し、そして目覚めさせるために。多くの犠牲を払い、けれどリカルドは「最後の魔女」を見つけることに成功。そして、はたしてその封印された魔女を見つけたとき、彼(リカルドは魔女は女性だと思っていたが男性だった)には口と下半身に蔦が入り込んでいた。その蔦で生命を維持しているようだったが、その姿は淫靡で―。

という出だしでストーリーは始まります。

リカルドが見つけた「最後の魔女」と呼ばれる魔女の末裔の名はシオン。美しい美貌を持つシオンは己の野望を果たすために、とある思惑をもったリカルドのもとに身を寄せることにするが…。

魔女と人間の関係。
シオンが「最後の魔女」と呼ばれる理由。そして、シオンが封印された理由と過去。
リカルドが、最後の魔女を探していた、その理由。

そういったものが少しずつ見えてきますが、このストーリー展開の仕方が実に秀逸です。リカルドとシオン、の二人のような関係のCP(いわゆる対立している関係)は沙野作品ではたびたびお目にかかる気がしますが、甘々でほのぼのな温かいお話ではないので苦手な方は注意が必要かもです。

今作品の大きなポイントの一つは、シオンの身体につけられた装飾品の類、かと思われます。5か所につけられていますが、その場所がとっても淫靡です。その外れ方もエロスに満ちています。さらに言うと、彼らが初めて出会ったとき、シオンの口と下半身に入り込んでいた蔦の描写もエロかったですし。が、それが単なるエロスではないところはさすが。その一連のすべてに、理由がきちんと存在しています。

「魔女」という存在はBL作品ではそう珍しい存在ではありませんが、作品によって細かい設定は様々です。今作品の魔女さんは、「人間の体液がごちそう」という感じ。血液でも、もちろん精液でも良し。はじめリカルドは血液をシオンに与えようとしますが、ええ、今作品はBLですので、もちろんシオンが摂取するのは精液なんですね。なので、二人の関係は身体先行です。濡れ場はそこそこあります。が、序盤全然エッチくないの。まるで闘いのような、と言えば良いでしょうか。

それが、物語が進むごとに、そのシーンの色が変わっていく。エロいことはエロいのですが、彼らの心情とリンクして描かれているので決してエロメインのお話ではない。無いのにエロいという、そのバランスが素晴らしいです。

ネタバレになりすぎてしまうので詳細は書きませんが、シオンが叶えたい希望は「復讐」です。自分の恋心と復讐という相反する感情に翻弄されるシオン、というストーリーを思い描きつつ読み進めましたが。

いやいやいや。
そうきたかー!
さすが沙野さん。
二転三転するストーリー展開に、最後で息つかせぬ怒涛の展開にページを捲る手が止められませんでした。面白かった!今作品は、登場人物はそう多くはありません。ありませんが、彼らの魅せ方がまた良い。全員にそれぞれ過去があり、守りたいものがあり、世界を持っている。すごく短い描写でそれを端的に読ませる。読んでいてブワッとその世界観に包まれるような、そんな圧倒的な質量があります。

あとCielさんの挿絵がまた素晴らしい。
今作品に流れるちょっとダークで淫靡な空気感とか、二人のすれ違う想いとか、恋心とか。Cielさんの絵柄がぴったり合っていて萌えがより一層高まる感じ。

沙野さんの書かれるファンタジーものって最高だな。
と、しみじみ感じ入る、そんな1冊でした。

14

萌えという点で

「沙野さんのお話には評価を高くつけすぎるんじゃないか?今作こそは控えめにしよう」って思っていたんですよ。「ファンタジーはそれほど得意じゃないしね」って。
でも結局、途中で異様に盛り上がってしまった……闘っていたわけじゃないんですけど、敗北感が凄い。

何にそんなに盛り上がっちゃうかと言えば「ダメよダメダメ」なんじゃないかと思うんですね。沙野さんはそういう状況を作り出すのがとても上手い。
それはいわゆる『禁忌もの』や『NTR』なんかの場合もあるんだけれど、今作は『大義』と『思慕の念』が対立しちゃった時の心の揺らぎが丁寧に描かれていて、私はそれに激しく萌え上がっちまいました。

古今東西、敵を好きになってしまう話は多々あると思うのですけれど、なんたってBLですからね。体を触れ合わせなければならない理由があるので、シオンも(クッキリは書かれていないけれどたぶん)リカルドも「好きだからやるのではない」という言い訳を延々と繰り返しながら、互いに関りを深めていくことになっちゃってるんですよ。

これが切ないのなんの!
萌えツボ、ど真ん中だわっ。

そして、決定的だったのは臍ピですよ。
なんてエロいのでしょう……沙野さんは天才だと思う。

13

少年と燕

タイトルのカップリング、王子×魔女はもちろんメインですから、敵対関係が結託して心や体の距離が近づく感じなんかめちゃくちゃ萌えるんですが、終盤の少年と燕にひっそりと萌えてしまいました…。マルコとアメデオ、ナウシカとテトが原風景なのかも(そして古い)。

今回も先が読めないストーリー展開、かつ、それほど不穏さを感じさせない安心仕様で一気読みでした。タイトルつきのチャプター分けも親切設計です。

ファンタジーって、終盤の畳み掛けが定石というか、いきなり飛び道具が出現したりしてページ残数にハラハラさせられてしまいがちなんですけれど、本作はそれほど不安なく読み終えました。しかしながら、個人的に第四の魔法については瞬時の解読が難しかったかな。お話のキモなのに…。

冒頭、魔女の登場シーンからして鼻血が出ますよね。

魔法によって100年眠り続けていた魔女のシオンは魔女狩り最後の生き残り。魔女狩りによって大切な家族も同胞も全滅させられたヴィエント王国への報復のため、同国の「八十禍」第二王子リカルドに目覚めさせられ、彼と結託します。リカルドもまた異母兄サンスとの王位継承争いにあり、自国を奪おうとしていました。

シオンの体には五人の魔女から託された五つの魔法が封印されていて、一つずつ封印を解いていくには人間の血液や種液で魔力を高めねばなりません。相性の良さからリカルドが体液を提供していましたが、摂取レベルが徐々に上がっていき、リカルドとシオンが正式に体を繋げるために二人は婚姻関係を結ぶにまで至ります。そこで誓いの口づけはしないようにとリカルド大好きラモン(五卿士の一人でリカルドの幼馴染み)が進言するエピソードには何かありそう、とニヨニヨ。

封印された魔法には、それぞれの能力託した魔女たち個々の思いも封じ込められていて、シオンの夢を通して彼らの最期が語られます。ここが一番泣けました…。

そしてやはり。沙野作品には兄弟萌えが必至ですね。ファンタジーらしい着地として、自己犠牲による制裁を受け入れたパターンは新鮮でした。シオンも淫らな処女といったラッピングながら、使命を受け入れ、遂行するために体を開く葛藤がね…、乙女の言い訳なのかリカルドに惹かれているのか…。でもあんまりエロスみが強くないのでストーリーに集中できたかもしれないです。

エゴやパワーに駆られた人間がどんなに醜悪で悲惨な状況を生み出しても、必ずどこかに希望や慈悲を忘れないお約束に平伏です。おかげで盛り盛りファンタジーならではのカタルシスを得られて、ほぅっと一息つくことができました。レネと燕に癒されたのもありますが、エピローグ最後の情景描写が美しくて。頭の中でイメージをめいっぱい膨らませて、世界観の総まとめに酔いしれました。

電子版にはあとがきの後に特典SS、「レネのお小言」が。第三の魔法が近未来メルヘンで絵面的にもほんわかするのですが、レネと燕さん贔屓にはたまらない、コミカルなひとこまでした。

9

いやぁ流石でした

実は「なれの果ての、その先に」を積んでるんですが、タイトルとあらすじに惹かれてこちらを先に読んでしまいました。

いやぁ流石でした。「最後までどうなるの?」ってページを捲る手が止まりませんでした。
でも四六判って立派なだけに握力が必要だし、ノンストップで読んでると腕が痺れてきて辛いんです。


リカルドもシオンも真面目で他者を思いやる事が出来る人物で、とてもお似合いだと思いました。
だからこそ最初の2人の思いの噛み合わなさが悲しかったし、魔法の込められたシオンの装身具が一つひとつ解放される度に、2人の気持ちが近付いて行くのにとても萌えました。エッチなだけじゃないのが流石です。


魔女の呪いは年々弱まるはずだったのに、ある時から強まったのは何故だったのか?
リカルドの異母兄のサンスの本当の狙いは何なのか?とか、最後まで読ませてくれるんです。


装身具が一つ解放される度に、その魔女の思いをシオンが夢として見るのも面白かったです。
人間を憎む魔女がいたり、慈悲を与える魔女がいたりと、彼等の思いはそれぞれなんです。
でも、1番素晴らしかったのがシオンの資質というか心根で、彼の母親が1番の理解者だと思いました。
もちろん、そんなシオンを魔女としてではなく、1人のシオンという人間として認め愛するようになるリカルドも国王となるに相応しい人物でした。


悲劇があったからこそ、100年の時を経て出会った2人が惹かれあって愛し合うようになる過程がとても素敵な作品でした。
そしてリカルドの甥のレネが天使でした。

7

魔女狩り 茨姫 魔具 紫の瞳

★ネタバレを含む「あとがき」を、先に読まないほうがいいです

伏線回収の都度に山場がある、読み応えある読み切りBL御伽噺。
凄く面白かった。 
挿絵も、内容にマッチ、美麗で壮麗。

出だしは、100年間 魔女を眠りから守る「茨の城」。
魔女を眠りから起こすため、騎士達が魔力を持つ茨と格闘。
眠りから起こしたのは、第二王子、“八十禍の王子”と呼ばれるリカルド。

100年前、息子を助けたい王妃が、王に黙って魔女に血を差し出し死亡。
それを嘆いた王は、大規模な魔女狩りを命令する。
仲間と家族を焼かれたシオンは、茨の城で「最後の魔女」に選ばれる。
強い魔力を持つシオンに、魔女の願いと魔力を封印した魔具が仕込まれる。

五つの魔具の力を復活させる為には、人の体液が必要。
シオンは、復讐を果たす為に、リカルドの協力を受け入れる。
「紫の瞳」が物語の鍵。
・・・出だしから、ややこしくて、凄く面白い伏線が仕込まれている。

魔女狩りの火炙りを実行した仇の子孫達を、シオンは救うのか、滅ぼすのか
五つの魔具に込めた魔女たちの最後の想いと、
シオンがリカルドの傍で見る色々で生まれる葛藤は、寓話的。

伏線回収がとても面白いので、是非読んでみて。
急展開の結末が、ちょっと悲しい。
続編出ないかな、期待。


2

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